日本GI(性別不合)学会のトランス医療についての再度の質問状

 性同一性障害特例法を守る会は、日本GI(性別不合)学会へ理事長宛てで再度、質問状を送付しましたことを以下にご報告します。
 今回は、理事長以外の学会の責任あるお立場であり、かつGI医療を担う医師である先生方にも送付させていただきました。
 これまで私たちが旧GID(性同一性障害)学会へ送付した1/19要望書3/16回答願いも同封しております。


2024年(令和6年)6月9日

日本GI(性別不合)学会
  理事長 中塚幹也   殿

性同一性障害特例法を守る会
代表 美山 みどり

 1月19日付での貴学会に対する要望書と、3月15日付での貴学会からの回答をお願いする手紙をお送りましたが、いまだにご回答を頂いておりません。

 私たちは性別移行医療の恩恵を受ける立場ではありますが、貴学会とも利害を共有し、それゆえにこの医療が歪んだものにならないようにするために、貴学会の姿勢に強い関心を抱いております。この理由から貴学会に率直な意見を届けたのですが、それは真剣なクライアントとしての立場であると自ら考えるものです。

 理事長である中塚先生のご意見でも構わないとお伝えしたのですが、それでもご回答を頂けないのはどのようなご事情がおありなのでしょうか?もともとGID学会は医療者のみではなく、クライアントである当事者も含めた広い意味でのコミュニティとして設立されたと理解しておりますが、私たち当事者の声をお取り上げになる価値はないという中塚先生のご判断なのでしょうか?

 早急のご回答を賜りたいと考えていたのですが、私たちの要望書以降に海外では新しい事態が進展しております。3月4日には貴学会にも強い影響力を持つ国際団体WPATH(世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会)からの内部ファイルが流出し、欧米では大きなスキャンダルとなっております。この流出ファイルの中では、

 しかし、WPATHファイルが明らかにしたのは、同団体がエビデンスに基づく医療の基準を満たしておらず、メンバーが即興的な治療を行うことを頻繁に議論しているということである。メンバーは、子ども達や思春期の若者達が「ジェンダー肯定医療」が生涯にわたってもたらす結果を理解できないこと、そして場合によっては健康リテラシーが低いために、両親もまた理解できないことを十分に認識している。

https://www.jegma.jp/entry/News-WPATH01

 とトランス・イデオロギー主導でのエビデンスを欠いた医療が横行しているさまを白日の下に晒してしまったのです。貴学会にもWPATHの定めるガイドラインが大きな影響を与えています。WPATHの主導するジェンダー医療の正当性が揺らいでいる事態を、私たちは受益者・当事者として目をつぶることはできません。

 今までの貴学会が主導してきたジェンダー医療について、可能であれば第三者によるエビデンス・ベースの再評価をしないかぎり、貴学会の提言はもはや誰も聞く耳を持たない状況になるというのは明らかです。特例法手術要件一部違憲を受けて新しい医療ガイドラインが必要となりますが、WPATHが定めたSOC8などのガイドラインの正当性が疑われている現在、WPATHの影響下にあると目される貴学会が新しい医療ガイドライン策定に携わることには、大きな懸念が生じているというのが現状なのです。

 イギリスでは問題が指摘され閉鎖されたタヴィストック・ジェンダー・クリニックが推し進めた未成年ジェンダー医療について、客観的な再評価がキャス報告書として公開されました。これもまた新しいニュースとしてお耳に届いていることでしょう。

 私たちは受益者・当事者としてこのようなエビデンス・ベースの再評価を歓迎します。まさにキャス報告書に相当するような客観的な再評価を日本のジェンダー医療に対しても今なすべきなのではないのでしょうか。私たちは「こんな人がSRSに踏み切って大丈夫なのか?」という例も頻繁に目にもしますし、また「適応できなそう」「危なそう」と危惧を感じた仲間が術後に自殺した話を聞いて暗然とする経験もしているのです。そういう犠牲者たちの実例も知るからには、活動家たちが描くジェンダー医療のバラ色イメージを受け入れることは絶対にできないのです。

 一度しっかりと膿を出すべきです。第三者による日本のジェンダー医療の総括を一度しっかりとすべき時ではないのでしょうか?

 私たちは今まで1万人を超えるとされる戸籍性別変更者のその後について、まとまった追跡調査を持ってもいないのです。これは戸籍業務と家裁の審判を統括する法務省が主導するのならば、十分現実的な調査になるはずです。そして、それを通じて、移行後の生活に満足している人・後悔している人・自殺した人・脱トランスした人のリアルな数値を把握できます。加えて実際の当事者の想い、当事者の実態を改めて把握し直すことによって、今後の医療と立法の指針とすべき有益な情報になるはずです。

 また、同時にWPATH流出ファイルは、思春期ブロッカーに副作用がない、という神話を打ち砕きました。WPATHの医療者たちはただそれを軽視し無視していただけなのです。これは思春期ブロッカーの利用があくまでも「実験的」なものに過ぎないことを意味します。

 日本でもこの10年ほどの間に、100例ほどの思春期ブロッカーの投与事例があるという報告を目にしています。その責任を持つべき医師も事実上明らかになっています。そしてその医師は貴学会でも重要な役割を果たしてきた理事であることも知られています。であれば、貴学会はその結果についての責任を免れることはできません。

 それゆえ、貴学会の理事である二名の医師は、その投与に関する実績と実態を明らかにし、かつ現時点での追跡調査を行い、思春期ブロッカーがもたらした結果と、その後のジェンダー医療についての率直な思いを聴取し、それを客観的なレポートとして提出すべきだと考えます。あくまでも「実験的な」ものでしかない思春期ブロッカーについては、国内でも薬事法に則った客観的な評価がなされなければならないのです。今のままではとくに未成年のジェンダー医療は「海外の多くの国が禁止するいかがわしい医療」という偏見を拭うことはできないのです。

 私たちは当事者として、ただ受益するだけではなく、医療が誤った方向に向かわないように、責任を持つ必要もあるのです。

 貴学会は私たちの真剣な意見に向きあって責任を果たしてください。

 何卒よろしくお願い申し上げます。

以上


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