性同一性障害特例法を守る会
美山みどり
昨2023年夏からの署名サイトVoiceでの「最高裁判所にあっては、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の「性別適合手術の要件」につき違憲判決を下さないよう求め、各政党にあっては、この要件を外す法案を提出しないように求めます。」に私たちの団体も率先して加わり、皆さまからの熱い支持の署名とメッセージを頂いたことに感謝しております。
皆さま、本当にありがとうございました。
https://voice.charity/events/534
この署名で頂いたメッセージの中にも、GID当事者からの声が数多く含まれています。今特例法の改正などの議論が政治の世界では始まっています。しかし、私たちの本当の声が、なかなか政治家の皆さんには届きづらい状況にもあります。大変残念です。
端的に言って、私たちの「想い」はなかなか体験を共有しない人には理解しづらい面があります。そうなると逆に活動家たちの「お涙頂戴」なストーリーの方が一般に「わかりやすい」という困った状況も起きかねません。
ですので今回、私たちに寄せられた署名のメッセージの中から、GID当事者を中心に、公開可のものから、広く皆さんにご紹介します。寄せられたメッセージのお名前については、失礼ながら個人特定が可能なお名前については万一を考えてイニシャルのみの掲載にさせていただきます。
これが私たちのホンネです。
医療と手術に対するホンネ
当事者はまさに「性別適合手術」を人生を賭けて受けます。「戸籍を変えたい」から嫌々手術を受けた、と公言する人がいるとすれば、それは本来「絶対に手術を受けてはいけない」人たちなのでしょう。
私たちの最大の利害は、ジェンダーについての医療を後退させないこと。
私たちと、医療を求めない「トランスジェンダー」を混同することで、「トランスジェンダー本位」に医療がゆがめられようとしています。美容手術化・脱病理化を通じて、本当に医療が必要な私たちのための医療の重要性が低下することに、私たちは重大な懸念も抱いています。
私たちが受けたい手術・医療がいい加減なものになっては一大事です。
とくに専門医の先生方には、イデオロギーによって私たちの切実なニーズを切り捨てないように、強く強く求めていきます。
未手術のGIDのホンネ
そして、私たちの仲間にもさまざまな理由から手術を受けない・受けれなかった人もいますが、そういう人にとっても性別適合手術の重要性はいささかも変わりないのです。
「手術をしたからこそGIDが社会に受け入れられている」が私たちの「生き方」の大前提なのです。特例法の手術要件が「手術ができなかった人」もしっかりと守っていることを、未手術の当事者もちゃんと理解しています。
ですから「手術しないのに、戸籍を変えたいのは論外」という結論になるのです。手術要件は私たちすべてのGID当事者の「盾」です。これがあるからこそ、私たちは身を守ることができるだけではなく、自らを恥じずに社会で生きていけるのです。
手術要件は、さまざまな事情で手術ができない当事者・未手術の当事者にとっても、自らを定義するアイデンティティなのです。なぜ「手術をしたくないのに、戸籍を変えたい」とLGBT活動家は主張するのか、理解できないというのが、GID当事者の率直な思いです。
女性たちとの関係についてのホンネ
さらにこれは特にMtFと女性たちの関係について、当事者はどう感じているか、という微妙な面についても、率直な声が聴けます。
「いかなる性別変更も、生得的な女性の権利を不当に奪うものだ」と私たちを非難する女性が一部にいます。私たちは性別適合手術によって生物学的な意味での「性転換」をするのではない、ということを重々承知して手術などの医療を受けます。自分と社会の折り合いをつけるために、ひっそりと埋没する手段として「性適合」するのです。私たちは活動家と違って目立ちたくはないのです。女性たちに「女性と違う」と言われないために、精一杯の努力をして自分の生活を築き上げようとします。
MtF GIDが自分たちの「文化」とするのは「女性の文化」です。
けして手前勝手な「トランス女性の文化」ではないのです。セクシュアル・マイノリティのアイデンティティとプライドを強調するLGBT運動は私たちとはまったく無縁です。これが私たちがLGBT運動を自分たちとは無関係な運動として、共感しない理由なのです。
FtM の方も「男性の文化」を尊重して生きていくことを、しっかりと語っておられます。このような微妙な心情を少しでもお汲み取りくださいませ。
当事者家族・Xジェンダーのホンネ
やや別の視点から、GID当事者のご家族の方からも声が寄せられています。
ご家族の方も同様に、大切な家族の身体的な苦しみをよく理解し、手術という要件の「人生の中での重大さ」を受けとめて頂けていることに感謝の気持ちを表します。
また、活動家がアンブレラ・タームとしての「トランスジェンダー」に一括したがる、いわゆる「Xジェンダー」「クェスチョニング」の方からも「性自認」による制度への危惧の声が寄せられています。LGBT活動家の特例法緩和の主張は、実際のセクシュアル・マイノリティの声ではなく、「過激なイデオロギー」としてまさにその「受益者」と想定される層からも支持されていないのです。
LGBT活動家の「イデオロギー」は、当事者・関係者・トランスジェンダーのナマの声ではないことは明白です。それは過激な社会学者や社会活動家によって紡がれた、観念的なイデオロギーに過ぎないのです。
LGBT活動家への批判
LGBT活動家の主張は、まさにLGBのレズビアン・ゲイ・バイセクシュアルの層からも強い反発を受けています。「LGBTQは連帯概念」などと活動家はあたかもセクシュアル・マイノリティの代表面をしますが、ほとんどのセクシュアルマイノリティは活動家には悪い印象しかないのです。
いかに活動家たちの意見が「政治的な思惑」のある人たち以外にはまったくアピールしないか、少しでも活動家以外に耳を傾けたら明白なのですが…
手術と戸籍変更のホンネ
さて、最後。私たちにとって性別適合手術は「アイデンティティ」と呼ぶべき人生の最重要事なのですが、それに比べたら、戸籍変更はただの「オマケ」に過ぎません。体が変わることによって、それに合わせて生活をしやすいように公的書類を変える、ということに過ぎないのです。手術があって初めて戸籍を変える意味が出てくるのです。「戸籍を変えたいから、望まない手術を受けた」という主張が、いかに本末転倒なものなのか、GID当事者はその主張に強い疑問しか感じないのです。
手術要件が特例法にとって、死活的な意義があるという当事者の訴えに、誰が耳を塞ぐことができるでしょうか?このナマの声に、私は追加すべき言葉はありません。
手術要件のない特例法は、魂のない法律です。
私たちの20年間の努力が水泡に帰するのです。
もはや私たち性同一性障害当事者の問題を解決する法律ではなくなるのです。MtFの外観要件をなくすことは、当事者にとって許されない暴挙であると、私たちは強く訴えます。
おまけ
エールを頂きました。ありがとうございます。今後とも頑張ります!