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「キングダム」ラース・フォン・トリアーに恋して

推しの諏訪部順一さんが少し前にポストされていた11月にWOWOWで完全放送されるという『キングダム』シリーズ。
ラース・フォン・トリアー監督が手掛けたデンマークのTVドラマ。
無知なわたしも北欧の鬼才と呼ばれるこの監督の名前と作品はちょっとだけ知っていて、「ダンサー・インザ・ダーク」で打ちのめされて、「メランコリア」で好きかもと思いつつそれ以上踏み込んでいない世界だった。
推しのポストで俄然興味が沸いたわたしはWOWOWの完全放送の扉をたたいた。

キングダム2Kレストア版第1話からキングダムエクソダス〈脱出〉第5話までおよそ一週間で完走。
これまでのわずかな経験から、トリアー監督の作品は体調が良い時に観るものだと重々承知していたが止められなかった。
観終わって満身創痍。
笑いと恐怖(狂気)は紙一重だということ、そして案外私たちの日常も俯瞰して見たらこのキングダムの人々のようかもしれないと思った。
あの巨大病院は世の中の縮図のようにも見える。
ファンの方たちは25年も待たれていたのかと思うと空恐ろしい気がした。
もしわたしが公開当時にキングダムに出会っていたら、25年間モヤモヤし続けなければならなかったのだ。
私は一週間でその空白の時を一気に超えたのでモヤモヤせずには済んだが、乗り心地の悪いタイムマシン乗せられた感覚に陥りちょっと吐きそうに。
各話の最後に解説役として登場する監督の決め台詞にもすっかりハマり、座右の銘になりそうだ。
お前たちにわかってたまるかという思いと、諸君なら理解できるよね、という二律背反的な監督からのメッセージも感じたり。
調子が悪い時に見る夢のようでもあり、ひどくシビアな現実でもある時間を体感できた。

キングダム エクソダス〈脱出〉の誕生も拝見できて嬉しかった。
制作現場ではどれほど多くの方たちが携われていることか。
キャストの皆さんの作品や監督への思いは深かった。
トリアー監督の作品世界に入れるってやはり特別なことなんだと思う。
視聴者が作品に魅了されるのは、現場の方たちが監督に惹きつけられるからなんだ。
結局、好きという気持ちが世界で一番強いのかもと勝手に腑に落ちる。
わたしはラース・フォン・トリアーに恋して、霧のような湯気で覆われた漂白沼で布を絞り続ける。

善も悪もあることを心得よ

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