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チカさん(創作手記:1000字)

noteに夢中になるあまり降りる駅を乗り過ごした平日の朝。これもまた幸せの残響であり、そのまま本当の透明を見に行くことにしました。本当の透明は目に見えない? それでもそこに透明な何かがあるんですよね。そうですよね。

ケニュペマー駅で下車してみます。ケニュペマー。なぜだろう? エキゾチックかつエキセントリックな響きです。溶けそうな矛盾の伴侶であり、最も小さい単位を積み重ねることで成立することもありそうな無効の公文書の響きを醸しています。ケニュペマーか。そうか。

駅前広場には、当然とばかりに高粘度スライム製の円柱が立ち並んでいました。少なく見積もっても30本はあるでしょうか? 西海岸で見た巨木程の高さのもの、裏山のウサギ小屋程のサイズ感のもの、そして入道雲を写実的に描写したような浮遊系の円柱もあります。どれも触るとひんやりして気持ちが良く、誰もがこぞってマイ円柱を抱きしめていました。コツメカワウソも同様です。

インフルエンサーチカ・ハイマートさんもその円柱のすぐそばにいらっしゃいました。

チカさんは既にハイヒールと肉体を脱いでおり、その円柱と同化する直前でした。比較的【揺れ】の多い時間が【場】に集まり始めます。

その【時間を引き剥がされた、かつて時間だったもの】は、軽くいなしたときの闘牛士のような顔を見せてから、火山地帯へと裸足で駆けていきます。地中というよりも天空へ。とんかつ定食というよりもかつ重として。

かかとを見れば分かります。今までの歩行距離、その歩き方、跳び方。そしてその考え方とそれを巡る差し戻しや突き返し、更には上滑りも。

チカさんに由来した、あぶりだしのように差し迫る長い黒髪の、その期待値だけが辺りに蒸散し、何匹かの陸イルカはフラッシュ暗算ができるようになりました。何と39万桁ですよ。
事実はおそらく楕円形であり、スラッシュを入れることで瓦解するかのように見せかけた旧時代の無声映画なのだと気づきます。ホームワークが本質的な終わりを迎えないのと同じです。

透明とは、このことだと思い至ります。

もう逢えないかもしれない、という寂寞は、まだ名前の付けられていない海岸が奏でる控えめな潮騒であり、旧世紀に刷り込まれた16ビットの物語がそうであるように【切り拓く】斧の到来を告げます。

破壊を伴わない創造のために。
棄却などあり得ない創出のために。
許されたおまじないとしてのカクコトのために。

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