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小説:言塊(481文字)

 名前のない盤上の遊戯。その読み合いを制する。ねじり切れたのは、身体と大脳というよりもむしろ、旧来のマニュアルだった。半世紀前の事実は、簡単にキムワイプで拭き取られてしまう。

 遥か彼方の万華鏡はゆっくりと回転し、精神残量の無い魔導士は、一行の荷物となる。杖による殴打は意味をなさない。
 遥か彼方の万華鏡はゆっくりと旋回し、精神力のある装甲闘士は混乱状態に陥る。その結果一行の荷物となるばかりか、一行からの離脱を余儀なくされる。
 遥か彼方の万華鏡はゆっくりと展開し、精神残量を持たない人造機甲兵の電極界面が断絶する。
 一行の統率者はそれでも前に進む。

 かくして、ベーコンの焼き上がる香りは、ふるさとに帰着し、ページはゆっくりとめくられるのだった。
 索敵に定評のある旧世紀のレンジャーは、近接戦への転向を余儀なくされ、フラッシュで目をやられないように角膜手術を施す。
 ブルーベリーは常にそして既に別星系に似ている、と栄華を極めた為政者が決めつけるから、無産市民は当然反乱を起こす。パンとケーキの区別さえつかないクリーチャー。

 そこまで書き留めて、彼は時刻表を開いた。

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