『スープとイデオロギー』|稲田豊史・ミステリーファンに贈るドキュメンタリー入門〈語っておきたい新作#03〉
文=稲田豊史
『エンディングノート』が娘が父を撮ったセルフドキュメンタリーなら、『スープとイデオロギー』は娘が母を撮ったセルフドキュメンタリーである。
監督のヤン・ヨンヒは、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)幹部の両親をもつ在日朝鮮人二世。これまでにも2本のドキュメンタリー、『ディア・ピョンヤン』(’05)、『愛しきソナ』(’09)で、両親のルーツや自分との関係の変化をつぶさに記録してきたが、本作ではアルツハイマー病を患った母にカメラを向け、彼女が18歳の頃に体験した「済州