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自国とは異なる国の通貨に連動する特異な香港ドル

みなさま、こんにちは!
Global Investment Academyの両角です。

昨日Zoomを使って「ニューノーマル型銀行口座セミナー」を開催しました。海外銀行口座にとても詳しく、自らも複数の国の銀行口座を使いこなす長谷川コーディネーターから、2時間しっかりレクチャーをさせていただきました。セミナー終了後の質疑応答にも1時間近く、参加者から続々と質問が上がり、高い関心をお寄せいただいたようです。ライブでご参加された方、有難うございました!

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続きは【編集後記】にて

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香港国内で米ドルが消えた!?
このまま通貨安に向かうはずだが・・・

先日あるニュースで、香港国内の両替所にて、香港ドル→米ドルへの両替需要が急増したことにより、一時的に両替所から米ドルが蒸発した(無くなってしまった)という報道を見ました。

これは先日来お伝えしている、中国が香港に対して「国家安全法」の導入を決定したことにより、香港が今まで保ってきた「一国二制度」が近い将来失われ、香港の中国化を危惧するようになったこと、そしてそれ以前に、米国ドルとのペッグ制が場合によっては保てなくなることから、香港ドルの価値が下がることを恐れて、米ドルに両替しておこうという動きが顕著に起きたようです。

私たち『Global Investment Academy』は香港法人ですので、お客様から頂く諸々のサービスフィーもは香港ドルが基準ですし、従業員へ支払う給与や報酬も全て香港ドルですから、その動向には誰よりも(真剣に)注意深く見守っています。また香港国民と同じように、今のうちに会社資産を米ドルに移しておこうかな、、、なんて頭をよぎることもあります苦笑

ただ、以前のGIA通信vol.377「中国に飲み込まれる香港、一体どうなる!?」でも触れたように、そうなる可能性はゼロではないものの、だからと言って今すぐ行動を起こして、半ばパニック状態になって香港内にある資産を引き出すような行為は必要ないと、今でも思っています。

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でも、香港ドルから米ドルへの両替需要が急増=自国通貨が売られているということですから、通常であれば通貨安が進行していくはずですよね? でも、少し様子が違うようです・・・。

香港ドルは世界でも珍しい通貨
自国とは異なる国の通貨に連動

中国の特別行政区である香港。かつては英国の植民地でしたが、1997年に中国に返還され、中国の一部となりました。ただ、返還後50年(~2047年まで)は「一国二制度」を続けるという合意の下、通貨も本土の人民元とは別の香港ドルを維持することになりました。

この香港ドルですが、実は世界でかなり珍しい通貨であると個人的には思っています。

このGIA通信をお読みの方は、海外に関心を持つ、リテラシーが高い方々が多いので、釈迦に説法かとは思いますが、香港ドルは変動相場制ではなく、米ドルにペッグしているという特徴があります。

ペッグとは、特定の通貨(多くは米ドルかユーロ)に対してレートを固定する制度のことで、途上国など単独では弱い通貨が通貨価値を安定させるために採用しているもので、現在世界中の通貨の6割以上もの国と地域で何らかのペッグ制を採用しており、それ自体は何ら珍しいことではありません。

ただ香港は、名目GDPベースで世界で36番目の大きな経済規模を持ち、かつ、自国でもあり、経済的な依存先でもある中国とは異なる国の通貨と連動している点はとても珍しく、この香港ドル以外、ほとんど知りません。

ペッグ制にも色々な形があって、香港ドルの場合は、レートのレンジ(上限下限の範囲)を1米ドル=7.75~7.85香港ドルと決めています。これはどういうことかというと、定められたレンジから外れそうになった場合、香港の通貨当局(香港金融管理局=HKMA)が介入して、レートをレンジ内に是正する動きを取るのです。

つまり、1米ドル=7.75香港ドルはこのレンジの上限(=香港ドル高/米ドル安)であり、この水準を越えそうになったら当局は香港ドル売り&米ドル買い介入でレンジを維持。逆に7.85香港ドルはレンジの下限(香港ドル安/米ドル高)なので、越えそうになったら当局は香港ドル買い&米ドル売りで対抗するという感じです。

以下のグラフは香港ドルの対米ドルの過去5年間の推移です。年によってレンジ内で振れはしているものの、綺麗にこのレンジ内で収まっているのがわかります。2017年以降2019年半ばまでは、香港経済の発展に寄与してきた中国の成長にやや陰りが見られたこと、さらには景気拡大期において利上げを連続していた米国との金利差が広がったことで、香港ドルもレンジ限界まで売られました。

このタイミングで香港当局は、2018年4月以来、香港ドルを支えるための為替介入を数十回行い、その総額は160億米ドルに上るとも言われています。

こうした為替介入が米ドルとのペッグ制を採用している中で積極的に行われることも、これまで香港経済および香港ドルが世界中から信用を引きつけていた大きな理由の一つであり、中国の一部でありながら、安心してこの国に投資マネーが流れ込んできた理由でもあります。

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資金流出懸念がある中での通貨高!
香港ドルの今後の展開はいかに!?

ただ一方で、昨年来、香港政府が進めていた「逃亡犯条例法」の改正を巡って香港内では大規模なデモが繰り返されてきたことも関係し、英国のシンクタンクZ/Yenグループが発表した最新の「世界金融センター指数(GFCI 27)」において、香港は上位5カ国(①ニューヨーク ②ロンドン ③東京 ④上海 ⑤シンガポール)から転げ落ちてしまいました。

となれば、香港ドル安に一気に向かうかと思えば、実はそんな簡単でもなく、上記のグラフにもあるように、昨年来逆に香港ドル高米ドル安が続いていて、先日も香港政府は215億円相当の香港ドル売り介入をし、ペッグ制防衛のため2015年以来となる売り介入に踏み切った模様です。

何だかイメージ違いますよね、、、、汗

これは何故かここまでのメルマガを読むだけでもその理由はわかるかと思いますが、理由は「米国との金利差が発生しているから」ですね!

足元では、米国がゼロ金利政策に近いレベル(0.0~0.25%)まで利下げしたのに対して、香港も3月に0.85%にまで利下げをしたものの、その後は金利を維持していることから、香港ドルの方が金利が高い状態=香港ドルが買われ、国家安全法制導入に関連した資金流出懸念が出ているにもかかわらず、香港ドルは堅調を保っているのです。

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香港の中央銀行でもあるHKMAの余偉文(エディー・ユー)総裁は、「(ペッグ制は)36年間にわたってさまざまな市場ショックを乗り切り、円滑に運営されている。香港の通貨・金融システムにとって柱の1つであり、香港に対する外交政策が切り替わったからといって、決して変更されるものではない」と述べ、自信をのぞかせました。

また香港は、香港ドル流通量の6倍に相当する4400億米ドルの外貨準備資産を保有していることから、よほどのことがない限り、短期間で香港ドルの価値が暴落する、という事態にはならないのでは?というのが現時点での私の見解であり、冒頭にお伝えした「今でない」という根拠です。

しかし、2018年以降、米国と中国との間での通商貿易戦争の激化に加えて、先日の中国政府が香港に対して「国家安全法」導入を決定したことから、この2カ国間でこれまでにない緊張が高まっているのは事実。

実際に、トランプ米国大統領は、ドルペッグ制を外す可能性も含めて中国に対してプレッシャーをかけていますし、万が一そうなれば、香港ドルは世界中から得ていた信用を大きく損なって、一気に価値を落とすことも予想されます(あくまでも、そうなれば、のお話ですが・・・)

そもそも、香港ドルが英ポンドから米ドルにペグ先を変えた1983年当時、米国が最大の貿易相手国でしたし、逆に中国人民元はかなりマイナーな通貨でしたが、そこから時代は大きく代わり、今や香港の貿易や輸出入とも約5割が中国本土とダントツであり、経済的にもかなり中国に依存しているのが今の香港の姿です。

今回米国が香港に対する優遇措置を停止することで、中国の貿易比率はより一層上昇することが予想されますし、中国人民元自体も、2016年のIMFのSDR採用で、世界の基軸通貨の一員になりプレゼンスが向上しています。

実際に下の表にあるように、国際決済銀行(BIS)が調査している為替取引量の推移においても、中国人民元での取引シェアは2004年:0.1%→2019年:4.3%まで伸びてきています(それでも圧倒的に米ドルが世界の中心です・・・驚)

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これらのことを考えると、長い目でみれば(=遠い将来を見据えたら)、香港ドルは米ドルより中国人民元とのペッグして行くほうが自然なのかなとも思えます。

香港が2047年まで今のままでいられ続けるのか? あるいは、親(中国)が子(香港)を強引に飲み込んでしまうのか、、、 すぐには結論が出ませんが、今後の展開について我々と一緒に見て行きましょう!

編集後記

私は個人と法人含め、海外10カ国に口座を保有しています。どの国が一番良い口座か、ということではなく、それぞれ一長一短あり、目的に応じて使い分けをしています。

日常使いをするためにネットバンキングの利便性を重視した口座、長期保有で資産を増やすために金利が高い口座、収益不動産からの家賃の受け取り用の口座、といった感じです。

今回ご紹介したある国での銀行口座は、まだ多くの方にとって馴染みが薄いものの、バランスが良いハイブリッド型で、これからのニューノーマルな時代においては自信を持ってお勧め出来るものですし、今回は単に口座開設+定期預金という切り口でご紹介しましたが、今後弊社としてもその国で色々なビジネスを展開していくことを考えている中で、今からそこに口座を持っておいてもらえば、かなり面白い取り組みができるのでは、とも考えています。

香港やシンガポールでの口座開設がほぼ出来にくくなった今、それでも日本にしか銀行口座がないというのはやはりリスクが高い状態ですから、これから海外投資を考えている方は、まだ門が開いているうちにアクションをおこされることをお勧めします!

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