マインドコントロールについて

すしすきーアドベントカレンダー2023用の記事です。

マインドコントロールと洗脳の違い

マインドコントロールと洗脳にはいくつか違いがあります。

そもそも洗脳とはかつて中国が共産主義へと改心させるために行っていた手法です。
洗脳とは拷問のような激しい肉体的精神的苦痛を与えながら教育を行うことを指します。これは後にソ連やアメリカでも同様の事が行われてきましたが、中国を含めたどの国でもあまりうまくいかなかったようです。
というのも、洗脳教育はその強烈なストレス状況から脱すると1ヶ月程度で元の思想に戻ってしまうのです。

なので、マインドコントロールという洗脳よりも長期的に作用する方法が使われるようになりました。
現代日本を生きるわたくし達にとって、国や諜報機関が行うマインドコントロールよりも、反社会的な宗教団体や政治団体(以下まとめてカルトと呼称します)が行うマインドコントロールの方がより脅威だと思います。

マインドコントロールによる思想定着がどれくらい持続するかについては個人差があるようですが、概ねマインドコントロールを受けていた期間とほぼ同じ分だけの期間がその思想への解除に必要な時間になるようです。

1年間どっぷりその宗教団体の施設で生活をしていた人は、家族や脱会団体等により強制的に施設から奪還された場合でも1年間程度はマインドコントロールの影響下にあるそうです。

(ただ、すぐにマインドコントロールが解除される人や全く解除されない人もいるようなので、あくまでも目安なようです)


マインドコントロールに必要なのもの

(1) 社会との隔離状態
(2) 被コントロール状態にある集団
(3) その集団内でのみ通じる多数の専門的な用語
(4) 組織や指導者への奉仕的な活動
(5) 睡眠不足

以下、順番に説明していきます。


(1) 社会との隔離状態
マインドコントロールを施そうとしているカルトは大抵の場合マジのカスです。

なのでカルトが教え込もうとしている主義主張も大抵の場合どうしょうもない内容です。

公の場であれ私的な場であれ、簡単に外部から出入りができてしまう場所では、せっかく入会させたのに世間一般の価値観でカルトの思想を判断してしまいます。
また、入会者の家族や友人、脱会団体などの敵対的部外者からの干渉を受けやすくなってしまいます。
あとなにより勧誘した人が簡単にカルトから逃げてしまいます。

なので勧誘されたばかりの入会者に対しては、社会から隔離された状況を作り出します。
カルトの考え方や価値観が常識の社会、という場を作り出してそこで生活をさせるのです。
そこで長時間の教育を行い、それ以外の事を厳しく禁止します。
隔離生活の中ではスケジュールや目標が事細かに設定されており、自由時間はほぼありません。

外の社会と繋がることが出来るスマホやパソコン、情報を得ることが出来るテレビやラジオは徹底的に取締りの対象になり、隠していることがバレれば再教育や再修行の名目で罰を受けることになります。

このような環境でカルトの価値観を繰り返し繰り返し教えられ、そこで何ヶ月も生活させられると今まで持っていた価値観がカルトの価値観にどんどん塗り替えられてしまうのです。

宗教団体の修行施設や企業の研修施設が山奥にあることが多いのはそういう理由です。
車がないと人里まで脱出できないような閉鎖環境で、なおかつ土地が安いので都合が良いのです。


(2) 被コントロール状態にある集団

サッカーで日本が勝ったりハロウィンだったり新年が明けたりして渋谷などで、様々な人たちが暴徒同然に騒いだりすることがあります。
それは集団心理によって「俺達は無敵だ!」状態になるからです。

この集団心理には二つあり、暴徒のように動きが派手になる集団心理と、動きが鎮まる集団心理があります。

カルトは後者の集団心理を巧みに使います。「みんながやっているから」
「従わないと罰せられるから」
「この人たちと同一でいるのが心地よいから」
「自分VS大勢の状況になるのは避けたいから」
「"自分の"価値観(実際はカルトの価値観)ではそうするのが正しいから」

様々な動機があるにせよ、人は誰かのコントロール下にある集団へ所属すると自身をその集団に同一化させる傾向があります。

その傾向を使って表面的な服従状態を作り出し、それを長期化させることで組織や指導者への恒常的な精神的服従状態にしていきます。

そして服従状態が続くとそれはいつしか精神的な依存に変化していきます。

服従してさえいれば罰を受けたり、集団内で疎外されたり不安定な状況に陥ることがないので、結果的に精神的な安定を得ることが出来ます。
それが組織やその指導者にすがれば自分は救われている状態が続く、そう考えるように変容していきます。


(3) その集団内でのみ通じる多数の専門的な用語

多くの組織(一般的な企業や団体やカルトを含む)では、内部でのみ通じる専門用語が多数あります。

一般的な組織に関してはとりあえず置いておくとしても、カルトの使用する用語というのは意味が難解で抽象的である事が多いです。

また、世間一般で普通に使われている言葉で十分に通用するのにも関わらず、団体内部でしか使われない聞き慣れない特殊な単語に置き換えたりします。

それは物理的な社会との隔絶だけではなく、言語的な隔絶も行う為です。
使う言葉を縛るという事は、その人の思考の傾向や気分を縛るのにとても有効です。

また、専門用語を使うことの有効性は他にもあります。
カルトの教育では必ずグループセッションがあります。
最初の頃は教えられたばかりの専門用語をたどたどしく使って、教えられたばかりの思想に基づいて、自身の考えを表現することでしょう。
しかしそれを繰り返すうちに、専門用語を自在に使用し流暢に自分の考えを述べる事が出来るようになります。

そしてその事を他のベテランから褒められるようになると、集団内部での承認欲求が満たされてカルトへの帰属を一層強める事になります。

グループセッションによってカルトが 説く教えの理解が深まり、カルト的な考え方が出来るようになり、当たり前のように専門用語を使いこなす事が出来るようになると、「俺って結構出来るやつじゃん!」という自信を得る事ができようになります。
また、周囲からの承認や尊敬を得ることによって自尊心を獲得することも出来るようになります。

こうした心地よさは集団に所属し続ける強い動機になり、組織や指導者が掲げる目標の達成へ向けて積極的に活動するようになります。

カルトは自分たちが高度で奥深い思想を有しており、入会者の現在の理解度が浅いことを常に強調してきます。
もし現在わからないことがあったとしても、それは活動をし続けることでわかるようになると理論的説明から逃げます。

そして後述する実践活動を重ねることで理解が深まると教えます。


(4) 組織や指導者への奉仕的な活動

カルトは構成員に対して無償での労働を強います。

入会者したばかりのまだ隔離中の構成員には、建物や設備の掃除など外部に出なくても済む奉仕活動をさせますが、ある程度マインドコントロールが済んだ(カルト内では多数派の)構成員には別の事をさせます。
それは主に新規入会者獲得のための勧誘活動や、活動資金獲得の為の労働です。

勧誘活動のための戸別訪問や街頭活動には高いノルマが設定されており、さらに勧誘成功数にも高いノルマが設定されています。
また、資金獲得のための売上金にもノルマがあり、厳しく管理されています。

都市部に住んでる方は「珍味を売る訪問販売員」が家に訪ねて来たことは無いでしょうか。
ある有名カルトでは珍味販売を活動資金獲得の手段に使っています。

先述した通り、カルトはこうした無償労働を思想的な実践活動と呼び、思想や理論をよく理解するためには必要な事だと説きます。当然ですが勧誘活動や労働の対価を搾取されることにそのような効果があるはずはありません。

しかし無理なノルマを達成出来ないのはカルトへの信仰心や忠誠心の欠如のせいであると無理矢理に関係づけて、自己否定的な思想を植え付けます。
こうした賞罰(賞もたまには与えられます)を繰り返すとカルトへの服従心が条件付けられていきます。

その上で「こんなダメな自分を救ってくれるのはこのカルトだけなのだ」という信念と、「カルトに見捨てられでもしたら自分は生きていけない」という信念の両方を擦り込むのです。


(5) 睡眠不足

これまでカルトがマインドコントロールを行うにあたり、時間や行動を厳しく管理して自由を無くし、使う言葉や考え方を縛って常識的な物の見方を剥奪し、組織や指導者への労働を自己否定に活用してきた様子を見てきました。

最後に肉体と神経の疲労で情緒的不安定さを常態化させる手段として、睡眠不足を使う方法を紹介して終わりにしたいと思います。

まず、マインドコントロールにおいて情緒的不安定さがなぜ有効なのかについて。
一言で言えば感情が不安定な状態ではまともな論理的思考や、穏やかな情緒的に基づいた判断がかなり難しくなります。
そのような状況下では権威に対する服従心が強くなり、暗示へのかかりやすさ(被暗示性)が高まります。

こういった環境下にいる人達は良心の呵責や道徳的責任を放棄し、権威からの命令に文字通り何でもするようになります。
某カルトの信者が殺人や拉致などの犯罪行為何でもしていたのは、少なくとも自分の利益の為ではありません。

そのカルトにとって都合のよい情緒的不安定な状態を作り出す一番簡単な方法が睡眠不足です。

カルトは構成員に対して「我々は敵から攻撃されている」などと言って被害者意識をすり込みます。
また「終末戦争がもうすぐ来る」などと言って切迫感を煽ります。
これによって「終末を回避するために敵と戦いつつ活動しなければならない」という状況設定をします。
現在は厳しい状況であるけどもそれでも活動し続けなければならないと強調するのです。

故に、危機的状況で寝ている暇などないのだから、寝ずに活動せよというわけです。

前述した通り、厳しく管理されたスケジュールに基づいて活動を行い、自由時間がなく、肉体的疲労がつらく、充分な休息を取れない状態ではまともにものを考えることなど出来ません。

お金も労力も掛けずに、構成員が何でも命令を聞く状態にさせる手法が眠らせないことなのです。

なのでみんなちゃんと寝ましょうね!!!
おやすみなさい!!!







この文章は西田公昭著の「マインドコントロールとは何か」と自身の経験を元に書いています。

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