【機動戦士ガンダム】MOBILE ARMOR(モビル・アーマー)〜ビグロ誕生〜
【GHOST CHRONICLE】におけるMA
相対する敵機はビーム装備の大型機動兵器。最新データにあがっていた奴だ。
(ビグロ……だったな!)
不気味で、薄汚れた暗褐色。Gm117を遥かに上回る巨体。
そして、そのずんぐりとした三角形の機体に灯っている一つ目に 否が応無く 畏怖心を煽られる。
それがこの上なく腹立たしく感じられた。
機動戦士ガンダム ゴーストクロニクル series000
scene 001 - 絶望のジルバ - より
全文はこちら
オリジナルのガンダム世界、既知の設定や解釈では、MAはどう定義されているのでしょうか。
※オフィシャルなMAについて良くご存知の方は、以下を読まずにお進み下さっても結構です。
モビル・アーマー(MA)
MOBILE All Range Maneuverbility Offence Utility Reinforcement(全領域汎用支援火器と訳す)の頭文字をとってMOBILE ARMOURとなる。
ミノフスキー粒子撒布下での有視界戦闘を前提とした最初の兵器開発競争で、ZIONIC社に敗れたMIP社のMIP-X1は、総合性能で劣ったものの 空間戦闘においては非常に優秀だった。
MOBILE ARMOUR(以下MA)は、これをベースに 重武装 重装甲化を行い 汎用性より攻撃力に重点を置いた機動兵器である。
また、モビルスーツの実戦データの蓄積によって、AMBAC(能動的質量移動による自動姿勢制御)は腕又は脚一対で充分であるという結果に基づき、MAの多くはその片方のみが装備された。
これはジオン独自の進歩的兵器である。
MA-05(ビグロ)は、MIP-X1の実質的な発展タイプである。
書籍 - GUNDAM CENTURY - より
これが、オフィシャルのMAの定義だと考えて良いのではないかと思います。
機動戦士ガンダム 公式百科事典 でも、この設定をなぞって記述されているように見受けます。
ちょっとコラム 書籍 - GUNDAM CENTURY -
MAに限らず、ガンダムメカニクス全般に渡り、この書籍に列挙されている設定は素晴らしい。
オフィシャルな、或いは、既知の設定の中で、現在でも この書籍に記されたそれが、最も優れているとGhostWrider.Jpは思っています。
ガンダム世界のメカニックの設定に興味を持たれる方は、是非 この書籍を一読される事をお奨めします。
GHOST CHRONICLE においても、MAはジオン独自の進歩的兵器です。
しかしながら、その発想進化の経緯は大きく異る設定をしています。
GHOST CHRONICLEにおける、Mobile Armor
強力無比なビーム兵器のMSによる運用。これを考えたのは連邦だけではない。
むしろ、国力に圧倒的に劣っていて、拡大長期化してしまった戦争を戦い抜く力を主にMSという優秀兵器に頼るジオンこそ、よりそれを渇望したと設定している。
そう、GHOST CHRONICLEでは、ビームライフルの開発に最初に着手したのはジオンなのだ。
ジオンでは、開戦初期から MSにメガ粒子砲を装備する研究開発に力を注いでいた。
一方、ジオンらしい柔軟な発想はこうも考えた。
-メガ粒子砲にMS並の運動性を持たせる事は出来ないだろうか?-
最初に これを考えたジオン技術者の頭の中には、手足の付いたムサイ艦がAMBACを行い、ザクと共に連邦艦隊に襲い掛かっているシーンが思い浮かんでいたのかもしれない。
この発想は直ちに正式な研究へと移行した。
国としての体が小さく、伝達経路はストレートで頭は柔軟 かつ 切羽詰っているジオンの利点がなせる技だったろう。
検討した結果、-機動メガ粒子砲- と仮称されたこの兵器は、メガ粒子砲と それを稼動させる大型反応炉を基部とした宇宙ポッドに、MS並みの運動性を発揮させる為の MSの手足に相当する 一対の可動ウェイトを装備したような形になった。
これは かなりの大型兵器になることが予想されたが、それでも戦闘行動でバラバラにならないだけの素材強度を得られる規模には収まっており、プランは現実的に実現可能と判断された。
検討結果に満足した上層部は、この -機動メガ粒子砲- の具体的な設計のスタートを指示した。
設計は順調に進み、検討時の青写真は ほぼ そのまま設計図に変わっていった。
既存の技術で 開発の全てを賄う事が可能といって良い この兵器は、細部設計でも取り立てる問題も無く、見る見るうちに仮想の実戦運用シミュレーションを行う段階にまで至った。
しかし、ここで大きな問題が指摘された。
艦載の問題である。
これまでも、MSにおいては その改良や発展に伴って 搭載艦の改修などを行ってきたジオンではあった。しかし、ここまで大型の兵器になると、それを搭載する改修を考えられるのは グワジン級戦艦 及び ドロス級空母 しかなかった。
グワジン艦は旗艦の象徴、ドロス空母はジオン制宙の要であり、また 両方とも艦数は極端に少なく 量産ラインも確立していない為に、建造には莫大なコストを必要とした。
加えて 運用は大仰にならざるを得なく、巡洋艦のような持久力がない為に 補給線も相当にしっかりと確保せねばならない。
つまり、各地の戦線に展開するには おとなしく言っても、
-不向き- であった。
艦船への搭載が無理となれば、艦外に繋留して使うしかない。
しかしそれでは 移送の時以外、つまり戦闘や作戦行動において メンテナンス面と運用面に大きなマイナスを貰う事になる。
この種のペナルティーを持つ兵器を、機動艦隊戦力として標準的に組み込む事は、避けるべきである。
それは、開戦後の実際の現場でも はっきりと証明されていた。
この新型機動兵器は、運用を 拠点防衛や大規模な作戦 に限定される。
これは、非常に面白くなかった。
技術陣のこの報告に、ジオン首脳部は一様に顔を曇らせた。
デギンがいつも通り、何も言わずに意味ありげに唸り、
キシリアが例によって、期待値の高いこの兵器の為に、新たな専用艦を一緒に開発すれば良い と言い、
ガルマがまたしても、新型機動兵器など開発しなくても、私が連邦を倒してごらんにいれますよ と前髪を巻き、
ギレンがとうとう、失笑しながら、MS用ビーム兵器の方に開発を絞るべき と考えたとき、
ドズルが怒鳴った。
「駄目だ駄目だ! 現行の主力艦、ムサイに搭載できなければ使えん!! 押し込んででも載せろ!
場所が無いなら、コムサイを捨ててしまえ!!!」
白羽の矢が立った。
- コムサイ -
このムサイ艦に標準搭載されているカプセルは、もはやその存在意義を失いつつあった。
戦闘力は皆無。MSをちょびっと積めるだけ。
大気圏突入能力は評価できるが、MSを降ろすだけならば、ムサイ艦オプションの -HRSL- の方が遥かに優れている。
艦船のようなMS運用は望むべくも無く、大気圏内外を問わず航続距離もそのレベルには遠く及ばない。
連絡に使うのであれば 自力での 大気圏離脱が出来ない以上、もっと小型の連絡カプセルを打ち上げる方が適している。
はっきりいって コムサイは、
- 付いているから使われることがある - だけであった。
ドズルのアイデアを受け、ジオン技術陣は直ぐにこれを検討した。そして コムサイをどければ、代わりに この -機動メガ粒子砲- を搭載するスペースを十二分に確保できると結論した。
ここで、またしても発想の置換が行われた。
ジオン技術陣は、
-機動メガ粒子砲- をコムサイと置き換えるのではなく、コムサイを -機動メガ粒子砲- に改良できないだろうか?
と着眼したのである。
コムサイ流用は 機体の更なる大型化を意味したが、大気圏突入カプセルはその目的から 外部からの様々な圧力や衝撃に非常に強い構造的設計がなされている為、強烈な -G- のかかる MS並みの高運動に耐えるフレームとして 合格だった。
もともとコムサイは ブリティッシュ作戦におけるコロニー防衛決戦のために、防衛ライン間のザク高速移送用に開発されたカプセルである。
(※ゴーストクロニクルでは、コムサイは戦闘中に使用されるカプセルとして設定されています。詳しくはこちらで解説しています。)
これが戦闘力を備えて前線に参加するとなれば、ムサイ艦の総合戦力を大幅に向上させるシナジー効果が発揮される。
また、現在持っているコムサイ生産ラインを利用でき、開発及び生産の コストと時間の削減になる事は、貧乏なジオンにとって非常に価値が高かった。
勿論、最多配備艦ムサイへの搭載が可能なわけで、そのための改修も安価である。
これは総合的にたいへん画期的であり、結果、危ぶまれた研究は一気に勢いを取り戻し、-機動メガ粒子砲- は MSの強化派生兵器とは一線を画す -新兵器- として認識された。
それは、MSと類似した上で はっきりとカテゴリーを違える事を意味する、-MA- という呼称が 産声をあげた瞬間 だった。
-機動メガ粒子砲- より呼称を改められた新兵器、 -MA- の開発は本格的な専門チームが組まれ、第1級プロジェクトとして ズム・シティのマザーシステム -ナリス- の使用が許された。
開発は加速して、一気に最終段階に到達した。
(※ゴーストクロニクルでは国家級の頭脳として スーパーコンピューターが設定されています。詳しくはこちらで解説しています。)
全ての工程が完了し、ただ一つ残った選択事項として 開発チームは2つのプランを首脳部に打診した。
MAに搭乗する、パイロットについて である。
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