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「君たちはどう生きるか」=「僕たちはこう生きた」だった(ネタバレ含みます)_ジブリ考察日記①/5

スタジオジブリ最新作「君たちはどう生きるか」を観てきました。感想としては「ああ、本当にこれで最後の作品なんだな」という感じでしょうか(涙)

そして、今まで制作に関わってくれた人たちへの感謝の気持ちがたくさん伝わってくる本当にステキ作品でした。

スタジオジブリ公式Twitterより。他にも久石譲さんらへの手書きメッセージもあり


「観たけど、意味がよく分からなかった」という方も多いと思います。

僭越ながら、考察を綴りましたので、どうぞお付き合いください。

※ネタバレを含みますので、ご注意ください。
※あくまで個人の見解ですので、そういう見方もあるんだな程度にお読みください。
※読み切り時間:3~5分



自己紹介(興味なかったら飛ばしてください)

前談ですが軽く自己紹介をしますと、このnoteを書いている私は哲学好きで考えることが趣味な、社会人になりたての20代です。普段はPRとブランディングの仕事をしています。

ジブリを好きになったのは高校3年生(6年前?)で、1年かけて「千と千尋の神隠し」と「となりのトトロ」を読み解く授業(今振り返っても謎授業)でジブリの世界観に浸かり、作品に込められたメッセージの考察にドはまりしました。

私はそれからというもの、ジブリ作品が伝えたいメッセージについてノートを書きつつ考察することが趣味になりました。(今回も映画館で真っ暗な中ひたすらメモしてました笑)

いわゆる#ナカチズム信者 (内輪ネタ笑)であるのですが、ジブリ製作に関わっている皆様、そして某n先生への感謝とリスペクトの気持ちを込めてこのnoteを綴ります。

劇場で取ったメモ


それでは本題に入ります。


結論「君たちはどう生きるか」=「僕たちはこう生きた」だった

Twitterでも多くのつぶやきがありますが、本作は宮崎駿監督の"自伝的作品"であり、「君たちはどう生きるか」というよりは、「僕たちはこう生きた」という作品であるとの見方に私自身も同意見です。

見終わった後にじわーっと目頭が熱くなってしまったのですがそれは、「この作品で最後。これでしまいにする。」という宮崎駿監督の覚悟と、大きな歴史に幕が下りる寂しさからだったと思います。

結局何が伝えたかったのか良く分からなかった!という声も多い(私が見たときは「意味わからん。誰か解説してくれ!」と劇場が盛り上がっていました笑)ですが、自伝的作品としてみると、本作のテーマが見えてくるように思います。

テーマについて考える前に、私が自伝的作品だと考える理由についてこのnoteにまとめます。


①過去作のセルフオマージュ。

「風立ちぬの続編?」「ハウルみたい」「コダマ??(笑笑)」など、セルフオマージュの多さは観た人の感想としてもたくさん上がっています。

空襲のサイレンから始まる戦時中のシーンは「風立ちぬ」を彷彿とさせますし、ぬるっと動く黒い人影は千と千尋の神隠しの歓楽街に出てくる"あれ"と似ています。

このように過去に自分が生み出してきた作品や表現スタイルをぎゅっと集めた本作は、自分がどのように生きてきたかという歴史をまとめた自伝といえると思います。

②影響を受けた作品のオマージュ。

今回オマージュしているのは、自分の作品だけではありません。他の人の作品もオマージュとしてたくさん出てきます。

勝手な解釈ですが、お屋敷に雇われている7人の老婆は「白雪姫」に出てくる7人の小人にそっくりで、キリコさんの見た目と性格は怒りんぼのグランピーのようです。

7人の小人(右下がグランピー)

本を読みすぎて頭がおかしくなってしまった大叔父さまの話は、「ドン・キホーテ」が騎士道物語の読みすぎで遍歴の旅に出る話と似ていますし、最後のペリカンやインコやらが洪水から逃げ出して飛び出してくるシーンは、私には「ノアの方舟」がオマージュされているように見えました。(ジブリって聖書とか古事記モチーフは多いですよね)

もちろん、小説「君たちはどう生きるか」も、まことしやかに噂されていた「失われたものたちの本」もリスペクトとともにオマージュされています。(余談ですが「失われたものたちの本」の中で"キリコ"的な役目を果たすのは、"木こり"だそうです。たまたまですかね?(笑)

自分が生み出した作品だけではなく、自分が人生の中で影響を受けた作品をたくさん登場させているのも、自伝的意味合いを持つからではないかと思います。(※宮崎駿監督が白雪姫やドンキホーテに影響を受けているかは不明です。

まとめ

本作「君たちはどう生きるか」は、『自分の過去作と、自分に影響を与えた他者の作品をオマージュした自伝的作品=「僕たちはこう生きた」だった。』というのが私の中でのまとめです。

それを踏まえて、本作のテーマ「君たちはどう生きるか?」についてですが、現代をどう生きるかという重く壮大な問いに対して、ジブリとして答えを出すことはせず、「僕たちはこう生きましたが、皆さんはこれからどう生きますか?」という問いの投げかけに終始したのではないかと思います。

これまで近代批判、資本主義批判など主義主張の強い作品が多かったかと思いますが、最後の最後は自分の主張を押さず、答えを観た人に委ねるような作品であったと感じます。

少し達観したような視座といいますか、本作を通して見える宮崎駿監督からは、エゴのない人間としての到達点の香りがします(伝わりますか涙)

本作は、宮崎駿監督が自分自身のために作った作品で、まるで誰かのために作っていないとの意見もありますが、観る人のことを全く考えていない作品という意味では決してないと思います。

20年間で120年分の進捗があると言われる変化の激しい時代の中で、「どう生きるか」なんていう問いに正解はない。だからこそ、「僕たちはこう生きた」という形で世の中に問うべきだと考えたのではないでしょうか?

最後まで読んでくださった方へ

長くなりましたが、こんなに良い作品に出逢えてよかった。この時代に生きててよかったと思います。

皆さんが気づいた他の作品のオマージュや、全然違う作品の見方があればぜひコメントで教えてください。

私個人としては、作中に出てきた「積み木」の意味や、なぜ真っ二つに切られなければならなかったのか?についても、考えれば考えるほど面白いと思っています。それについてはまた別の機会に書こうと思います。

その他、鈴木敏夫さんの宣伝戦略の意図や作画協力のすさまじさなどいろいろと語りたいことはありますが、今日はここまでにします(笑)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
(自分なりに一生懸命書いたつもりなので、いいねいただけると励みになります。)

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