無名芸人がキングオブコント2回戦を勝ち上がるために何をすべきか考えてみた。

地方芸人には「2回戦の壁」というものがある。1回戦は地元で予選があるため、観客の知名度も少ないがゼロでは無い。これが2回戦になると「東京or大阪の慣れない土地」「まわりの都会芸人に対する引け目」「観客の知らねぇ奴に対する冷ややかな目線」などが混ざり合って、途端にガチガチになってしまう。そして結果「まぁまぁまぁ…楽しく出来たよな…」という誰に対しての慰めかもわからない言葉で歯を食いしばって帰郷する。一粒の砂ほどにわずかな希望を胸に、結果発表のページを見るが、そこに名前は、無い。ごまかすために味のしない酒を飲む。ああツラい。言うまでもなく我々もこれに苦しんできた。というか、ことキングオブコントに関しては全くリベンジ出来ないままである。2回戦の日程は「かきこーしゅー」の真っ只中なので現在の仕事のスケジュールを変えない限り、キングオブコントに出場するのはどうにも難しいのだが。
私の話は良いとして、今年もたくさんの後輩達が2回戦に挑み、悲しくも散っていった。せめて彼らの骨を拾ってやらねばなるまい。そうだ、今年から2回戦を配信してくれるそうじゃないか。「かきこーしゅー」の合間にコントが楽しめるだなんて、愛してるぜFANY。そんな訳で、彼らの2回戦の動画と、配信された多くのコントを見た。(私が見たのは全日程のうち半分であるが)
全てのネタを細かく分析したワケではないが、あの中でウケる、結果を出すための道はあるような気がしたので、私が感じた事を挙げてみたいと思う。
※言うまでもないですが「面白いコントをする」のが大前提です。むしろそれが全てです。今から書くのはあくまで「僕ならこう戦うな」というまとめです。

①言葉に頼りすぎない。

全体通して思ったのだか、2回戦にもなるとネタの台本自体は面白いものがほとんどだ。ただ、そこにウケるorウケないの差は明確に存在する。それがいわゆる「技術」という奴なのだろう。もっと言えばウケているコントは「台本の活字」以外の様々な情報で面白さを伝えてくれる。表情、動き、小道具などでどういう事がやりたいかが明確にわかるのだ。コントの場合、どうしたってお芝居の要素が強いので「たんなる説明セリフ」は異常に浮いて見える。それがコントに対する没入度を下げてしまい観客は一気に冷めてしまうのだと思う。2分しかないので一度冷めた観客を再度温め直す時間はない。だからこそ状況の説明、やりたい事の提示をいかに言葉以外で説明するか?セリフに関しても、感情、抑揚、言い回しがそのキャラクターに合っているか?は考え抜く必要がある。提示したい面白さ以外のノイズは可能な限り無くした方がいい。

②ちゃんと衣装、小道具にこだわる

若手芸人は総じてお金がない。それを逆手に取るならお金のかかった衣装、小道具が出てくるだけで2回戦レベルだと本格派に見えて観客の注目を引くのではないか。事実、どうみてもダンボールで作った今にも倒れそうなドアなどが出てくるとコントの本筋に集中出来なかった。そしてやはり大手事務所の小道具はとてもよく出来ていて、それだけで安心感があった。この時点で2、3歩リードしているのだ。女装、不良などの役柄を演じる衣装も、安っぽいと冷めてしまうし、当人の狙いとは事なる違和感が出てしまう。見た目は思った以上に大切なのだ。あえてチープにする事もありだと思うが、あえてのチープを選ぶ場合、相当ネタがくだらなくてドカドカ笑いを取らないといけない。

③テーマは1つに絞る

コント時間は2分しかない。設定の提示などにも時間がかかるのであれもこれもやろうとすると全体がボヤける。100組近く見る審査員の印象に残すためには「何のネタをやったか」が明確である方がきっと得である。近年の賞レースはとにかく「いかにワンテーマで押し切れるか」が大切、というかそれ以外で勝ち上がるのが本当に難しい。それが何をやるのかわからない無名芸人ならなおのことである。
個人的にはただウケるだけの、あとに何も残さないザ・コントに勝ち上がって欲しいのだが。頑張れ、5GAP!

④盛り上がりのピークで終わらせる

2分という短すぎる時間で起承転結を全てやろうと思うと、どうしても盛り上がりにかける。2回戦を見ていても、ただ物語を終わらせるためだけに最後の20秒を無駄にしている組がかなり多かった。下手に物語を終わらせようとするよりも、一番ウケたタイミングでスパッと終わらせる方がいい。1番盛り上がる場面が出来たら最低でもそこからひとくだり以内で終わらせたい。最後にドカンと大きな笑いが起こせた組は、ほぼ間違いなく合格していたように思う。

⑤2回戦を研究する

2回戦で敗れた芸人のうち、何人がキングオブコント2回戦の配信を買って見たのだろうか。ハッキリ言うが全組見て勝因・敗因を分析しない限り恐らく勝ちは無い。塾講師らしい事を言ってみるが、過去問研究はとても大切なのだ。君たちが見るべきは決勝の華やかなテレビ画面じゃなくて、地味で半数以上はロクにウケていない2回戦なのだ。2000円✖️4日に加えて手数料は中々痛い出費だろう。ただ、1万円ほどの投資でものすごいデータが得られるのだ。もし仮に「俺たちの笑いを信じてるからそんなの見てもしょうがない」とか言う奴が居るのなら、それはプライドではない、言い訳だ。
そもそも配信されてる事も知らないのかもしれない。賞レースはある種、情報戦だ。コンビの片方だけでも、情報をきちんと集める動きをしておくべきである。


こんな所だろうか。自分が出ていないのを良い事に好き放題書いてしまった。最初にも言ったようにもちろん面白いネタが全てで、それが出来ていないぶんにはどうにもならないので、ネタ作りは今まで通り頑張って欲しい。ただ、不合格の組の多くは磨けば光るのに磨いていないネタだったのも事実だ。日々、研究し、台本を磨き、表現を磨く、そんな地道な努力の先にこそ合格が待っているのだと思う。そこをサボらずにやれば、決して準々決勝に行く事は難しい事ではないと思う。
もちろん東京、大阪の優秀な芸人さんの中には数回のネタ合わせでサラっと合格してしまう方もいると思う。が、勘違いしてはいけない。優秀な芸人さんは君たちの何倍も舞台を踏んで経験を積んでいる。場数が違うのだ。経験で大負けしているのだ、練習で勝つしかないだろう。長い人生の中の1年ぐらい、キングオブコントの事だけ考えて暮らしても無駄じゃないだろう。
キングオブコント運営が明らかに力を入れ始めてくれた今、来年の大勝利に向かって是非とも走り続けて欲しいと切に願う。

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