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憧れた子

あの子のことが忘れられない
片手で数えるほどしか会ったことがないけれど
それでも、あの子は私の思考のどこかに常に居続ける。

1度だけ、あの子の家に泊まったことがある。
バスでその町を通り過ぎる度に、あの子はもうここには居ないんだという実感がひしひしと襲ってきて、泣きそうになる。1度だけあの子と行ったスーパー、道に迷った帰り道、少し錆びた自転車、無言の私を気にかけて、話を振ってくれたあの子。

寒い!と言いながら外でタバコをふかす姿、手入れされたセミロングの綺麗な黒髪、私を見つめる真っ直ぐでキラキラの瞳、頭を撫でてくれた手の柔らかさ。全部が忘れられない。
これはきっと表面的な彼女の1部でしかないのだろうけど。

あの子は遠くに行ってしまった。こんななら、もっと近くにいればよかった。もっと連絡して、遊びにだってもっと誘って。嫌、やっぱり醜い私であの子の隣に居たくない。こんな卑しい人間。

あの子がふかすタバコのマッチ棒になって、消費されてしまうくらいが丁度良い。


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