祖父の原稿 6

六 岡山モモタロウマラソン

 「むかしむかし、あるところにおじいさんと、おばあさんがありました。おじいさんはやまへしばかりに、おばあさんはかわへせんたくにいきました。おばあさんが、せんたくをしていると、おおきなももがどんぶりこ、どんぶりことながれてきました。おばあさんは、ももをひろってかえりました。おじいさんがやまからかえってきました。ももをわりました。なかからおとこのこがでてきました。ももからうまれたので、ももたろうとなまえをつけました、、、、」
 物心が付いて初めて聞かされたおとぎ話。桃太郎の鬼退治発祥の地、岡山吉備路を走るマラソンのあることを知った。マラソン競技を始めて10年、年も60歳還暦を迎えた記念すべきとき、走りたい願望に燃えて申し込むこととした。
 岡山市津島運動公園園周の樹木はすっかり色付いて師走の迫った昭和58年11月23日、スタジアムに集まった参加者は、女子20km、10km、5km計81名。男子20km(40歳以上)116名、10km(40〜)160名、5km(40〜)138名、計414名。合計495名だが、大半を高齢者が占めている。
 「ここから北西約10km先の『鬼の城』の鬼を成敗して、その首が御竈殿(おかまでん)下に埋めてある吉備津彦命を祀る一名『朝日の宮』ともいう、400メートルの大廻廊を控えた吉備津神社があります。またその先1.5km手前には、備前の国の『一の宮』として吉備津彦神社があります。史跡が数多く集まり様々な時代の歴史を体感できるロマンあふれる吉備路を心行くまで走ってください。」と紹介がグランドいっぱいに響き渡った。これは来て良かったと、しんみり聞いた。
 岡山市高齢者協会会長 房延昌一氏
 あいさつ
 岡山市、岡山教育委員会共催のもと第7回岡山モモタロウマラソン国際大会を開催したところ、北は北海道から南は九州各県に至る全国津々浦々からたくさんの皆様のご参加をいただき主催者として大変喜んでおります。
 昔は人生50年と言っておりましたが、時移り現代では人生80年時代を迎えようとしております。人生が延びれば延びるほど「自分の健康は自分で」の心構えが必要かと思います。
 本大会は健康マラソンであります。他の大会では釘打っておりながら、順位による表彰をしている大会があるようですが、これは健康マラソンにあらずと考えております。故に本大会は順位による表彰は一切致しません。選手の皆様はどうか大会の趣旨に従って、各自の健康を守りながらマイペースで「おそいあなたが主役です」の気持ちで、最後までゆっくりと染まりゆく吉備路の秋を味わいながら完走していただくようお願いします。
 マラソンを走る身で順位は狙わないといえば嘘になるが、この挨拶には感動した。この歳になれば全く健康第一と。
 10時71歳歳高齢者が交じる20km走が和気藹々(わきあいあい)のスタートをする。陸上競技場を出て、公園内を走り抜け、見晴らしの良い土手上の路面を走り終え、期待した吉備路に入る。賞は無くとも同年代では優位に立ちたい気持ちにどんと背中を押された。苦しさを覚えることもなくゴールした。結果は韓国籍、金元圭さんが1位、森脇一男が1時間30分35秒で2位となった。
 自信を持つと同時に、大きな社会の勉強となったモモタロウマラソンを祝福した。
 

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