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ZARD/坂井泉水の詞の魅力について

どーも、ゲッティです🍝
今回はZARD/坂井泉水さんが残された詞の魅力について、自分なりに感想をまとめます。
坂井さんの詞がなぜ多くの方の心に響くのか、『永遠 君と僕との間に』(著:ZARD)を読んで学んだこと、感じたことをつらつらとアウトプットしますので、よろしければお付き合いください(*^^)

あくまでも個人の感想なので、違和感を覚えたり、これは違うんじゃないかと思うこともあるかと思いますが、ご容赦ください。

ファンの方には、よりZARDや坂井さんについて深く考えるきっかけになったり、坂井さんのことをあまり知らない方には、ZARDの曲を聴いてみようと思ってもらえたりしたら嬉しいです!

坂井さんの作詞のメソッド

5つのポイント

多くの方の心に響く、寄り添う歌・詞を生み出してきた坂井さんですが、作詞のメソッドがあります。

プロデューサーの長戸大幸さんが自身の経験から身に付けたメソッドをもとに、坂井さんに指導したポイントが以下の5点です。

①口語体で書く
②Aメロで情景描写をする
③Bメロで状況説明をする
④サビで願望を言う
⑤サビに曲タイトルを入れる

長戸さんが具体例を以下のようにあげています。

「適切かどうかわかりませんが、借金の無心にたとえてみましょう。まず、Aメロで“寒い日が続きますねえ。今年はずいぶん雪が積もっていますねえ”と情景描写をする。Bメロで“この寒さでおふくろが体をこわして、もう2か月も入院しているんですよ”と状況説明をする。そしてサビで “来月には返すので、5万円ほど貸してもらえませんか”と願望を言う。これが歌詞の骨格です。そして、サビのアタマにタイトルをいれます」

『永遠 君と僕との間に』(著:ZARD)

確かに、これを意識して曲を聴いてみると情景描写→状況説明→願望になっているのが良くわかりますね。自分なりに好きな曲の流れをこのケースにあてはめてみると…

『Don't you see!』
Aメロ(情景描写)

友達に手紙を書くときみたいに スラスラ言葉が出てくればいいのに
もう少しお互いを知り合うには 時間が欲しい
Bメロ(状況説明)
信じる事を止めてしまえば 楽になるってわかってるけど
サビ(願望)
Don’t you see!(わかってよ!)

『Don't you see!』(作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎)

恋愛に限らず、何か伝えたいことがある時に上手く言葉が出てこない経験ってありますよね!このAメロを聴くと、自分にとって特別な相手との関係の中で、伝えたいことが上手く出てこない情景だったり、自分にとっての似た経験が思い起こされますね。

Bメロでの状況説明では、相手を信じる・期待してしまう気持ちが表れていますね。「わかってほしい」とか「この人なら自分のことを考えてくれるはずだ」といった相手への期待感がある一方で、待つのはしんどいし、相手に期待しない・わかってもらうことを諦める選択をしたら楽になるという葛藤が説明されていますね。この短いフレーズで状況を説明する坂井さんの言葉のチョイスは本当に凄いと思います!

サビでは、そんな葛藤がありながらも「Don't you see!(わかってよ!)」という強い想いが出ていますよね。
「相手に期待してわかってもらいたい時あるー!めっちゃわかるわー!」と共感できますね(^^♪

ただ願望があるだけでなく、Aメロの情景描写とBメロの状況説明があるからこそ、聴き手が曲の世界観により入り込めたり、自分の体験・経験とリンクしやすくなって、坂井さんが寄り添ってくれる感じが湧いてくるのでしょうね✨

他には…

『遠い星を数えて』
Aメロ(情景描写)

自分の中にいろんな自分がいて 優しいから苦しむのよと
Bメロ(状況説明)
時には前向きな自分が 弱気な自分を叱ったりする
サビ(願望)
カッコいいことってカッコ悪いよ 醒めてるよりも感情で生きてる人
熱い君を見てると 嬉しくなる

『遠い星を数えて』(作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎)

行動したい自分や批判を恐れる自分など…。自分の中で葛藤があり、弱気な自分にダメ出しをしてしまう。誰にでもありますよね。そんな時に坂井さんから「自分の感情を大切にしてほしい」というメッセージがささりますね!

『Love is Gone』
Aメロ(情景描写)

いままで気にもとめなかったラブソングが 今夜はどうしてこんなにせつないんだろう
Bメロ(状況説明)
10代の頃の甘くロマンチックな夜 若さが武器だった
サビ(願望)
何を犠牲にしても すべてを捨ててもいい
誰か教えて 僕はこれでいいんだろうか my love is gone

『Love is Gone』(作詞:坂井泉水 作曲:綿貫正顕)

失恋の曲ですが、恋をする/したことでラブソングに意識が向くようになり切なく感じる。若さを武器にしていた10代の頃の恋愛が思い起こされる。そしてサビで「これでいいのか教えてくれ!」と訴えかけたくなる気持ちを坂井さんが代弁してくれる。恋愛に限らずとも「誰か教えて 僕はこれでいいんだろうか」のフレーズは言いたくなる時が多々あります。そんな自分にとってはこの曲が本当に寄り添ってくれますね(^^)

全身を愛撫するような言葉選び

言葉の選び方も長戸さんが以下のように指導したようです。

「ちょっと刺激的なたとえになってしまいますが、全身を愛撫するように言葉を選び、2行の殺し文句を決める。それを徹底させます」
このことをより具体的に解説してもらうと———。
「全身を愛撫するというのはね、なんというのかな、言葉で、頭から足の先まで愛でていくんですよ。マッサージするみたいにね。まずは頭です。“あなたはもう忘れたかしら”と言うと、リスナーの意識、血液の流れは頭に行きます。“忘れたかしら?”でなければ、“覚えてますか?”“思い出してね”といった単語です。次に、色や景色を描写すると、リスナーの意識は目に行きます。“赤い手拭い”とか“白いギター” とか“裸電球がまぶしくて”とか。その次に“石鹸がカタカタ鳴った”とか“冷たい壁に耳をあてて”と言うと、リスナーの意識は耳に行きます。“そのときに潮の香りが鼻をくすぐって”と言うと、鼻に行く。“靴音を追いかけた”と言えば足と、また耳です。そして“貴方は私の身体を抱いて”と歌えば、抱くのは手ですよね。(以下略)」

『永遠 君と僕との間に』

曲を聴いている人の五感を刺激するからこそ、曲の世界観や聴いている人の経験・体験が思い起こされ、より深く入る。そこでサビの願望がくるからとても心に響くんだなと改めて実感しました!

坂井さんの共感力について

坂井さんの詞を書く秘訣

文学も、映画も、歌詞も、日常的に質の高いものを体にインプットしていれば、自然にアウトプットの質も高くなっていくという考え方が長戸のベースだった。
坂井は生前、
「好奇心だけが頼りでした。詞を書く秘訣をあげるならば、私自身がリスナーであることです」
と語っていた。
さらにこうも言った。
「私は等身大の一人の人間であって、ものすごい天才でもなければ、常に”おっ!”という言葉が出てくるわけでもないから」
この言葉のとおり、坂井はインプットを重ねることによって、自分の中で言葉を生み、熟成させ、アウトプットしていた。
「言葉には貪欲で、本を読んだり、会話の中にヒントを見つけたり、人がふつう当たり前の出来事として見過ごしてしまうようなことに焦点を当てたりしていました。あらゆる瞬間を自分のために"取材"していました」

『永遠 君と僕との間に』

坂井さんは本当に貪欲に言葉と向き合い、瞬間瞬間を大切にされてきたことがわかりますね。そんな坂井さんだからこそ、詞の中に一番出てくるフレーズが「今」になったのかななんて思いました。

等身大の一人の人間という意識があったからこそ、曲を聴く多くの方々と同じ目線で、時には平成を生きる昭和の女として、時には伴走者としての詞が心に響くんだと実感します。

経験外からのインプット

「映画には必ずテーマがあります。恋愛映画ならば、2時間で、出会って、別れて、ときには死んでいく。人生が凝縮されているので、とても参考になります。だから、映画を一本観たら、それをもとに必ずテーマを一つ考えてくるように言いました」

『永遠 君と僕との間に』

長戸さんがこのように指導して生まれたのが『Today is another day』ですね!映画『風と共に去りぬ』のラストシーンが元ネタになっています。

『Today is another day』についてのレビューもよろしかったらご一読ください。

映画のラストシーンを見てから改めてこの曲を聴いたのですが、主人公スカーレット・オハラの気持ちが手に取るように伝わってくるというか、坂井さんが経験した出来事でもないのに、こんなにも他人の視点からの想いを形にできるのかと衝撃を受けましたね。

レコード会社のアーティストの発掘や育成を担当するスタッフの小林さゆ里さんも、坂井さんについて印象に残っていることを以下のようにおつたえしています。

「坂井さんは一枚の絵画とか、その日のニュースとか、自分の身近の状況を次々と歌詞にしていました。うちの会社はみんな忙しくて、家に帰れない状況もしばしば起こります。そんな男性社員と彼を家で待つ女性をイメージして歌詞を書いたりもしていました」

『永遠 君と僕との間に』

『Forever you』といった坂井さんご自身の経験の曲ももちろんのこと、日常の何気ない出来事だったり、芸術作品からの刺激を受けたりしたものからも詞を紡いでいるからこそ、いろんな方に幅広く寄り添えるんでしょうね。

曲を聴く人達が各々経験は違ったとしても、これだけ寄り添える詞を選択できる坂井さんの感性は本当に凄いですよね。

終わりに

坂井さんの詞の魅力について、掘り下げていくことでZARDが、坂井さんがより好きになりました。

ファンの方同士でどの曲が好きか、どの詞が好きかを語り合う時ありますよね(^^♪
そんな時に、何故その曲が好きなのかを聞いてみるとより面白いと思いました。

「自分がそういった経験をしたからなのか」
「その行動をした側なのか、された側なのか」
「自分の好きな作品と似たような場面があって、
それが思い起こされるからなのか」
「大切な人が思い起こされるからなのか」
「思い起こされる人が家族なのか、友人なのか、恋人なのか」

同じ「好き」でも、そこに至るまでの経緯の違いを楽しむのもいいですね!
違った視点で曲を聴くきっかけになるでしょうし、自分たちもより多くの人に寄り添えると思います。

もちろん、「これが正解だ」という理由はありませんし、各々の好きな理由がリスペクトし合えたらいいなと心から願います。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

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