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年金が先、高齢者就業が後

なぜ高齢者就業が大事なのかこれは高齢者就業を研究するときのお決まりの書き出しですが、高齢者就業には扱いが難しい論点が多々あります。「高齢者の就業割合はどのくらいまで上げるべきなのか」「高齢者になってまで働きたくない」「ただ働くだけでなく生きがいをもって」「これまでの経験を活かした働き方を」といった類のものです。このような論点は研究をするときも難しくかかわってきます。たとえば、「男性ほど高齢期に働きやすい」という結果が得られたときに「女性は高齢期の就業から周縁化されているので、

    • Preston et al.(2000)の感想

      最近関心のある人たち数人と一緒にPreston et al.(2000)を読みました。人口学の方法論として誰からもおススメされていた書籍で、プリンストン大学の人口学の先生からいただいたということもあったので。数学は苦手で式展開を追うのに苦労もありましたが、生命表や定常人口といった人口学の基礎的な概念を勉強できたのは非常に幸運でした。それぞれの章の感想ではなくて、人口学の方法論を通読して感じたことをメモしておきます。 印象的だったのは、人口学的方法論(の式展開)は帰納的な側面

      • 博士課程を標準年限で修了する(社会学2021年入学コホートの事例)

        はじめに2023年度の3月に博士号の受理が決定し、博士課程を修了しました。自分はD3を終えるとともに博士課程を修了したので、標準年限で卒業したことになります。(定義としてはおかしいのですが)標準年限で卒業することは社会学の分野では僅少で、多くの人はもう1、2年、あるいはそれ以上をかけて博士論文を書き上げることが多いです。 近年では博士課程を標準年限で修了することへの期待が高まっています。近年では博士号が就職の必須要件になってきていること、また(少なくとも自分が属していた東京

        • 2022秋学期の振り返り

          秋学期はいわゆる後半だからあんまり振り返りを書く気がしない。しかもまとめるとなると3月だから、気持ちとしては「D3前」という感がつよい。いや、とくに消化試合だった、無意味だったというわけではないのだけれど、基本的に春学期の設定を受け継いでいることが多いので、「春学期が続きました」というふうにまとめれば良いのだろうけど、そうもいかないような色々な経験をしたので、きちんと書き残しておく。 インプットD2なのに色々なゼミを聴講していた。とくに文献購読のゼミとして参加したのは2つで

        年金が先、高齢者就業が後

          2022春学期の振り返り

          はじめにD2になった。自分がM1のころ、当時D2であった先輩がD2だったので(?)、ついにあの学齢段階にまで達したのか、と感慨深くなった。自分にとってM1のころのD2には、小1のころの小6、中2のころの高1といわんばかりの、大きな違いを否応なしに感じた。日常会話でラトゥールとかルーマンとか出てくるのが怖すぎた。きっと今のM1も、D2が日常会話でcolliderとか周辺分布みたいなことを言い出したら怖いのだろう。小癪なやつだと思われるかもしれない。 前置きが長くなったが、D2の

          2022春学期の振り返り

          2021年秋学期の振り返り

          秋学期はかなり粛々と研究した期間だった。計量系の演習に2つほど参加し、論文を1つサブミットし、学会報告も行い、博論についても方向性はぼんやりとではあるが見えてきた。徐々にキャパシティは上げていきたいが、D1の秋としては上出来だろう。ベンチマークとしたい。 演習は、線形モデルの応用と因果推論に関してであった。因果推論は夏休みに少しかじったものの、一人で読んでいたこともあり、外枠をぼんやりつかんだ程度であった。因果推論の演習はこうした自分のいい加減な理解にはピシャリとはまって、

          2021年秋学期の振り返り

          2021SSの振り返り

          4月これまで修士課程として在籍していた大学で博士課程に上がった。学部生の頃伝説としてまことしやかに噂されていた「D1」というものになった。修士に入ってすぐに博士課程の進学を決めたから、特に不思議な感覚はなかった。 4月のほとんどは学振の執筆で手がいっぱいだった。より正確には、そのはずであった。もちろん時間を捻り出してうだうだと書いていたものの、M2のときよりサイドタスクが多かった。研究室の有志が伝統的に作成している同人誌の編集委員として(強制的に)配属されたり、調査実習のテ

          2021SSの振り返り