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ザンギの弾力を削ぐ、揚げ過ぎの硬直。

「札幌ザンギ本舗札幌駅北口店」2021年1月28日(木)

ザンギのルーツは釧路にあるという。
鶏肉の下地から味を漬け込んだものをザンギと言い、そうでないものは唐揚げである、といった説もあるらしい。
それは民族と国家の差異と同様、ザンギと唐揚げの峻別は困難なのかもしれない。

ザンギの店名を冠したこの店を知ったのは、つい最近のことである。
しかもオープンして間もないようで、どことなく真新しい相貌の空気を放ち、白を基調にした壁面に掲げられた店名のサインは、シンボリックでありながらも明快な専門店を訴求している。
店内にはオープンを祝した花が彩られ、明るい照明が華やかさを宿していた。
地味ながら、学生も会社員も取り込める札幌駅北口というロケーション、そしてザンギという理解しやすいメニューと店名の大衆性は、おそらくこの地に根づく期待を膨らませた。
窓辺の席に座ると、外の容赦ない冷気が足元に忍び寄った。
ダウンコートを膝掛けにしてメニューを凝視した。
ザンギをベースに、多様なコンビネーションで迫り来るメニューに心躍るも、迷いが次々と迫り来る。
信念を以って「ジャンボザンギバラエティ定食」に行きつき、ご飯は十六穀米の中盛り、さらに小鉢「切り干し大根」と「明太子」を選んだ。
キャベツとご飯のおかわりが1回無料というのも、まるで大衆とんかつ店のようだ。
ひとまずザンギのボリュームを推し量りながら様子見することを自らに課した。
あまり接客の慣れていないアルバイトらしきスタッフが大きなトレイを運んできた。
塩ザンギ、醤油ザンギという王道、加えてタルタルソースとのり塩のそれもまた拳大の塊で、十六穀米のご飯のボリュームも中盛りとは思えない。
キャベツから食し、塩ザンギへ箸を伸ばした。
箸から伝わるザンギの予感、それはどこかぎこちなく堅苦しい。
その予感は、口内で正解を導いた。
躍動するような肉感はない。
それどころか揚げ過ぎ感は否めず、噛み砕く音はさながらかりんとうのようだ。
小鉢の「切り干し大根」や「明太子」にも生気はなく、食べ進めていくもどこか虚しい。
飽食の時代に生きる者として、満足と満腹の意味合いの相違を再確認したような気がした。
“食い改めよ”
そんな心の声に耳を傾けながら、店を去り地下通路へと急いだ…

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