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流浪の食微録

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知られざる美味の探求と出逢いを求めて彷徨う、ロンリー・ミニマリストの食紀行。
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2021年5月の記事一覧

初夏の旅路で出逢うお好み焼きの名店。

初夏の旅路で出逢うお好み焼きの名店。

「お好み焼き 八昌」2021年5月4日(火・祝)

福岡駅は、鹿児島行きやら、大阪・東京行きやら、広域な地平を辿って旅愁を招く。
選んだのは余白だらけの山陽新幹線であった。
次々とトンネルを抜け、およそ1時間で広島の地を踏んだ。

朝の清々しい日差しが降り注ぐ未踏の道を歩き続けた。
遠く霞むあの日もまた、宙の奥まで吸い込まれるまでに清透な青空だったのだろう。
夏の灼熱とは言いがたいが、明らかに降り

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禁酒令発令前の寸刻のつなぎ。

禁酒令発令前の寸刻のつなぎ。

「焼鳥ぶらぶら」2021年5月3日(火)

水炊きで満腹の体を携えて、川端から中洲へと足を伸ばし、街の様子を伺ってみた。
想像通りの殺風景な夕景に沈む中洲。
通り過ぎる人々と言えば、活力の溢れた若者ばかりであった。
中洲の屋台に足を伸ばすと、殺風景な夕景を相殺するかのような人混みで、数の減った屋台の前には行列を成し、風通しの良さげな作りとはいえ、屋台の中は密集と密接の混雑を宿していた。
さすがにそ

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ラーメン店と居酒屋の暗黙の不文律。

ラーメン店と居酒屋の暗黙の不文律。

「一徹」2021年4月30日(金)

今年のこの地の連休は、季節に応じない寒さに見舞われて、冷涼どころか冷酷なほどの雨と風が市民の体をこわばらせた。
朝からストーブをつけて暖を求めるも、取るに足らない用事のためにダウンジャケットとグローブを着用して中心地へと急いだ。

狸小路商店街のアーケードで雨を凌ぐも、人の気配が薄らぐ路は容赦なく冷風を体に浴びせかかる。
5月前日ということも手伝って、その寒さ

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住宅街に密やかに仁王立つ、知られざる驚愕。

住宅街に密やかに仁王立つ、知られざる驚愕。

「居酒屋 かみがしま」2021年4月29日(木)

札幌という街は、東京よりもある種一極集中していて、
北海道のGDPの大半を占め、しかも街の構造も札幌駅、大通公園、すすきのという地下鉄3駅に連なるエリアにビジネスもショッピングも飲食店も集中している。
さらには再開発ラッシュによって新しいビルやホテル、タワーマンションが次々と乱立し続け、
現代風の都市設計で言うなれば、コンパクトシティと定義づけら

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春恋しい、おでんと魚料理に浸る夜。

春恋しい、おでんと魚料理に浸る夜。

「煮炊き屋 魚吉」2021年4月25日(日)

嵐のような突風は、容易いまでに体温を奪った。
ダウンジャケットはもちろんのこと、グローブも手放せない寒さであった。
まもなく5月だと言うのに、この寒さはいったいどこから襲来してくるのだろう?
こんな日々が続くと温暖化とは遠い未来の先のものに感じるのは、あくまでも端的な日々の断片にしか意識を向けていないことだとは、分かってはいるのだが。

久方ぶりの日

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斬新でボリューム溢れるランチと紫煙の漂い。

斬新でボリューム溢れるランチと紫煙の漂い。

「魚と銀シャリ せいす」2021年4月23日(金)

例年と比べて異例の早さで桜吹雪が街中を舞った。
ここ最近の傾向としては、決まった時間に食事をすることなどなく、極端な日は歩きながら、あるいは食事をすることもない日がしばしば生じた。
もちろん、身体や精神はその反動を余すことなく見逃すことはない。
インバウンドで殷賑を極めていた狸小路商店街も、今ではその余韻すらなく陰鬱とした落ち着きが定着していた

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