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シンポジウム『オンラインでジオパーク 〜シリーズ全12回開催で⾒えた可能性〜』レポ―ト

2022年9月29日 19時00分〜21時00分

当日はZoomオンライン形式で約160名が視聴。

2020年、観光業はコロナ禍で大打撃を受け、ジオツアーも激減。そんな中、オンラインツアーを開催し、12回で延べ⼈数が1000⼈を超えるツアーを企画した事について、ガイド、ジオパーク関係者、TORE指導担当、主催旅行社の各関係者に語っていただきました。


第一部:オンライン講演

1.挨拶 (日本ジオツーリズム協会副会長 西谷香奈氏)

最初に⽇本ジオツーリズム協会副会長、伊⾖⼤島ジオパークの⻄⾕香奈氏よりシンポジウムの趣旨を説明しました。

私達は新型コロナの流⾏で、今まで⾏ってきていた対⾯型のジオツアーが減少したことをきっかけに2021年の6⽉から1年間にわたり、九州から北海道までのジオガイドが案内する⽉1回のオンラインジオツアーを開催し、全12回のツアーには延べ⼈数が1000⼈を超えるたくさんの皆様にご参加いただきました。

⼀番驚いたのは、ツアーを継続する中で各自のアドバイスが的確になり、ツアーがどんどんより良いものになっていったことでした。また、TOREという軸が私達を⽀えてくれたことも⼤きかったのではないかと思っています。私達は12回のツアーをやりっぱなしで終わらせるのではなく、⼀度まとめて共有して次のステップに繋げたいという思いで今回のシンポジウムを企画しました。

それぞれ異なる⽴場の⽅々からの講演と対話を通して、今⽇お集まりいただいた皆様に少しでも今後の参考になるものをお持ち帰りいただけたら幸いです。


2.TOREについて ⾦沢⼤学融合研究域融合科学系准教授 ⼭⽥菜緒子​​氏

当協会のTOREを指導くださっている⾦沢⼤学融合研究域融合科学系准教授の⼭⽥菜緒子​​氏から「TOREとは何か」についてご説明いただきました。山田さんからはインタープリテーションやTOREについての簡単なご説明と、TOREがなぜガイドツアーなどで必要なことなのかについてお話いただきました。山田さんはインタープリテーションを提唱した米アイダホ大学サム・ハム教授から直接インタープリテーションを学んだ方です。

インタープリテーションはTOREを含めたコミュニケーションの手法です。インタープリテーションの参加者はすごく特徴的で、楽しい時間を過ごしたいと思い、娯楽を求めている。そういう自由度の高い参加者とのコミュニケーションをするために必要です。

うまくいくインタープリテーションは、テーマ、つまり、コミュニケーターが相⼿に伝えたいことやわかってほしい「メッセージ」を持っており、簡単についていけて、わかりやすい。構成がわかりやすく整理されていることで、聞いている人が、⾃分に関係がある重要に思っていることと結びつける。そして、聞いていて楽しい、体験していて楽しいという「楽しさ」が重要です。この4つが、インタープリテーションをうまくしていくために必要なT(=テーマ)・O(=構成)・R(=関連性)・E(=楽しさ)です。

TOREを取り入れたコミュニケーション、つまりインタープリテーションを取り入れることで、達成できることが3つあります。まず、参加者が、体験が楽しくなり質を⾼めることができること。次に、参加者が楽しい思いをしたからいい評価をしたり、意欲を持ってくれること。そして、良い評価をしたものに対して良い⾏動をとること。そうして、これら3つを達成することができます。

講演ではTOREの各要素について具体的な説明をしていただきました。


3.オンラインジオツアーの振り返り 日本ジオツーリズム協会会長 福島大輔氏

日本ジオツーリズム協会会長で、桜島錦江湾ジオパークの福島大輔氏からは、全12回のオンラインジオツアーの振り返りと、どのようなツアーだったか一話一話、ダイジェストでお伝えいただきました。

ジオパークオンラインツアー&勉強会の企画内容について、当初はオンラインツアーをすることが⽬的ではありませんでした。ガイド同⼠のスキルアップを⽬指して、TOREをどうやったら⼀番勉強できるかを考えたときに、誰かガイドし、内容にTOREの4要素がちゃんと⼊ってるかを確認しながらツアーをするのが⼀番勉強になるということで、ツアーをしながら学ぶという勉強会をメインに企画したものでした。最終的に、第一部はオンラインツアー、第二部は勉強会にし、オンラインツアーを⼀般に公開してお⾦も1⼈1000円ずつ頂戴するということでスタートしました。

全12回の参加者は1528人、初回の400人は無料で、残りは有料参加者で、合計100万円以上の売り上げでした。オンラインツアーで月一回100人ずつ集まるのは珍しいことだと思います。

全部で12回振り返ってみましたが、毎回毎回皆さんそれぞれ⼯夫し、新しい、初めてのチャレンジばかりでしたが、何かオンラインだからこそできることはないか、オンラインの難しさをどう克服するかをみんなで話しながらツアーを開催してきました。特に、何度もリハーサルを繰り返して、Zoomは動くか、TOREに則っているか、客観的にフィードバックする多様なメンバーがいたこともあり、ガイド実践者が⼀番成⻑が著しかったと思います。

これらの内容はテキストにもしており、日本ジオツーリズム協会のnoteで無料開放しています。(動画は有料会員のみ)

勉強会参加者からは、勉強会に参加することで⾒⽅が変わった、ただ単に楽しむだけじゃなくてガイド⽬線で⾒るようになった、との感想をいただき、TOREの理解がより深まったと感じます。​​

このほか講演では、全12回の内容の振り返りと、オンラインツアーで各ガイドが工夫したテクニックなどを解説いただきました。


4.観光事業者としての視点でオンラインツアーの効果や課題を考える 世界仮想旅行社 中島しのぶ氏

このオンラインジオツアーの販売、運営、配信を担当した観光事業者・世界仮想旅行社代表の中島しのぶ氏からは、オンラインジオツアー開催で得た知見や、効果、課題についてご説明いただきました。

世界仮想旅行社は、コロナ禍を受けて、国内外、世界各国を結んだオンラインツアーを手がけています。

このジオパークオンラインツアーの属性分析の結果ですが、他のオンラインツアーに比べて男性、特にサイエンス系に興味のある人が多く、年齢は40代〜60代が中心ですが、10代の高校生や20代、そして80代もいました。新しい切り⼝の⾯⽩いツアーを⾒てみようとプラッと視聴しにきた、ジオパークを知らない方の心をぐっとつかんだのが今回のシリーズの特徴です。視聴者数が最後まで減らなかったのは、ガイドが相互のリハーサルでTOREのTとRを磨きながらシャープに伝えることができたことが大きいです。また、五感で感じるような楽しさを貪欲に追求したことにも感動しました。

参加者へのアンケートでは、国内というアクセスの良さと、各ツアーで現地に行きたくなるような仕掛けがあったことから、配信を見た人が実際にその地へ行きたくなったか、アンケートのスコアが弊社の中では平均よりも10ポイントくらい高かったです。

また島原の回での「ジオと防災」は、楽しいだけではないことをこだわって伝えることができ、ツアー内でのコメントも多く、防災教育の可能性も持っていることが分かりました。

最後に大事なポイントは「告知」。オンラインツアーは集客に苦労する場合が多く、今回のシリーズは日曜日20時というNHK大河ドラマの時間とかぶる中、関係者が一生懸命SNSなどでPRを重ね情報が何千人に広がっていく、このような仕組みを持つオンラインツアーは非常に珍しいです。ぜひ2期もファンを増やしていただければと思います。


5.ジオパークにオンラインツアー実践をどう⽣かすか ⽇本ジオパーク委員会 国⽴研究開発法⼈産業技術総合研究所 渡辺真人氏

⽇本ジオパーク委員会の渡辺真人氏からは、ジオツーリズムの目的、そしてジオパークオンラインツアーでのガイドの成長、そして、各ジオパークでオンラインジオツアーをどう生かしていけるかについてお話いただきました。

ジオツーリズムの目的はこれまで使われてなかった、地域の大事な資源である地形や地質​​を観光に活用し、そこで魅力ある体験を提供して、地域にお金をもたらすこと。私たちは、地質や地形に残っている、昔の地球の活動記録に気づく面白みを伝えたい。そして、⽣態系や⼈の暮らし、伝統⽂化と地質や地形との繋がりをジオパークを巡るツアーに参加することで気づき、地球の中のつながりや仕組みが分かります。過去の地球、今の地球の仕組みがわかってきて、未来の⼈間と地球との良い関係作りに活きる、地球を大事にする気持ちもできてくると思ってジオパーク活動を進めています。

ジオパークオンラインツアーは、ジオパークへ直接行かなくても気軽に安価に体験でき、その場でいろんな地域を楽しめ、離れた場所でも瞬時に移動できる、オンラインならではの趣向が楽しめます。大勢が一度に参加でき、ツアー後のチャットの時間に、ジオパーク関係者に「今度行くのですが」と情報交換ができるので、オンラインに参加すると現地に行きたくなってしまいます。

毎月リハーサルに参加しますが、ガイドの皆さんが百戦錬磨のプロで、プロはお⾦取るとなると、ここまで⾃分を追い込むことがよくわかりました​​。リハーサルを繰り返すことで中身が絞り込まれてテーマが明確になるので、やる側に回ってリハーサルから参加すると、ガイドの技術向上に本当に役立つと思います。

ジオパークオンラインツアーは、ツアーに参加するだけで為になります。ツアー造成の参考になるし、視聴して各地のジオパークに詳しくなると、自分のジオパークの特徴が見えてきます。ジオパークツアーのモニターツアーでは無料だからと良いお客さんは来ないが、このオンラインツアーは本当に良いお客さんが来て良いサンプルが得られるので、リアルツアーにも生かせると思います。


第二部:パネルディスカッション

過去12回のオンラインツアーの経験と講演内容を通して、今後のオンラインツアーの可能性と課題について、担当ガイド、視聴者、勉強会参加者から意見を聞きました。(以下、敬称略)

コーディネーター:西谷香奈
パネリスト:山田奈緒子、福島大輔、中島しのぶ、渡辺真人 

①ガイドをして気づいたこと、学んだことが⽇々の今の活動にどのように役に⽴っていますか​​?

(西谷) エンターテイメント性がすごい豊かな内容だった松本さん、お願いします。

(松本) すごい変わりました。プロガイドとして活動していますが、TOREという言葉自体を知らなくて。30年かけてきた自分のガイドスタイルに自信があったし完成していると思ってました。オンラインガイドの機会をもらい、TOREを意識することによって、⾃分のガイドスタイルがすごく磨かれていくのを本当に今回感じました。

オンラインツアーをする前まではお客さんの感想は単純に⾯⽩かったです、とか、想像よりすごい⾯⽩かったです、ぐらいのものでした。しかし、最近は終わった後に「話がわかりやすくてすごく⾯⽩かったです」と、目に見えてはっきり伝わるようになってきています。

 このオンラインツアーをやったことで今まで持っていたストーリーを再認識というか、こういう風にやったら⾯⽩いという部分を⾒つけ直すことができたので、ストーリーの内容が変わり、トークスキルも上がったと思います。第三の目というか、ガイドの皆さんの目によって、自分のガイドの良いところと悪いところがハッキリ分かりました。

 オンラインとの掛け合わせでいろんな資料を作りましたが、その資料を(対面の)お客さんに⾒せながら話をすることで、より具体的に物事が伝えられるようになったのが、今回オンラインツアーをやった⼀番のメリットかなと。

(西谷) 続いて、ガイドの中でサビちゃん(キャラクター)との対話をしてくださった田畑さん、お願いします。

(⽥畑) ツアーシリーズで火山が並んでしまうので、伊豆ならわさびと思って、テーマにわさびを選びました。ツアー感覚を持ってもらうのに、SDGsを意識して、オンラインだからこそ自転車に乗っている風に楽しんでもらおうと、ツアーを作り始めました。リハーサルの時に「余分なことが多すぎる、一体何を伝えたいの?」と聞かれ、やはりわさびを伝えたいと思い返して(構成要素から)自転車を捨てました。

リアルのツアーで通常使っている、赤色立体地図を出した時に「自分しか分からないよ」と言われた時はすごくショックを受けました。ジオパークを知らない方に、わさびを通じて何を伝えたら良いのかを考えました。

ジオパークに認定された頃はジオパークについて一生懸命お話したのに、最近は地層がどうの、植物がどうの、といきなり本題にはいってしまってる...ガイドを通じてジオパーク活動を理解してもらって、お客さんが自分のところへ戻って、自分たちの地域を見直してもらうこと。これは外しちゃいけないと改めて思いました。

 TOREの中で、⾃分がこの地域で何を伝えたいのか、⽕⼭噴⽕でできたこの地形を地元の皆さんがどう⽣かしているのかを伝え、自分たちの地域はどうですか、と振り返ってもらうこと。そして、子供たちだけルーペや磁石を使ったりしていたんですが、一般のお客様にも使ってもらって楽しんでもらうことも、もう⼀度やり直そうと思ってます。

(西谷) 続いて、第二部の勉強会に全回参加してくださった、桜島錦江湾ジオパークのガイドの高田さん、お願いします。

(高田) 実際のガイドに役立ったかというと、一言で言えば「効果絶大」。ガイドを準備するときの力の入れどころが分かるようになりました。

 勉強会ではTOREを細かく毎回議論しながら進めていきます。何かあれもこれもってなりがちなストーリー性を絞っていく大事さ、引き込まれるような話の順番、構成も本当に大事だと思って、実際のガイドでも気を遣うようになりました。

 何より良かったのは、第二部の勉強会では小部屋(ブレイクアウトルーム)に分かれて少人数で話をするのですが、ツアーを作っていただいたガイドのスーパースターと直接話ができる。こんなチャンスはコロナ様様です。

 Tは先に議論するので、その後、OREについて議論するのですが、最初の頃は、新米ガイドなので話がピンボケになることが多かった。回を重ねていくうちに、勉強会で話すOREを見つけておかなければいけないので、第一部もものすごく真剣に観ていって、鍛えられた部分がありました。良かったです。最高でした!

(西谷) 素晴らしいメッセージが励みになります。次は勉強会に参加してくださった、ジオパーク事務局の立場で参加いただいたジオパーク秩⽗、肥沼さんお願いします。

​​(肥沼) ⽴場的に⼀般⾏政っていうより学芸員でもあるので、そういった⽬線でも参加していたんですが、本当に全回参加してすごく勉強になりました。

ジオパークではストーリーは重視されていますし、文化財でも日本遺産、文化財の地域計画の中で地域を理解するのにストーリー立てて理解してもらおう、わかりやすくしようという取り組みがされています。オンラインツアーでは自分である程度素材を集めて、現地を回ってはできないような、好きな順に話をつなげる組み方が勉強になりました。

事務局の方はガイドの養成を⾏っていくと思いますが、現地に⾏くと詳しく説明して終わっちゃうようなガイドさんもいるので、ここで伝えたい内容は何か、をTOREのやり⽅にすると、ただ現地で話したいことを何分も話すのではなく、もっと明確に内容を絞ってくださいと事務局も言いやすくなります。ストーリーを紹介するための、理解促進できるやり⽅がいろいろとあると思いました。今後秩父でも広げていきたいとも思いました。

(西谷) 私も関東ブロック大会でこういう勉強会をしてきたのですが、出てくる意見の中に、個人的な意見ではなく、TOREに基づいてアドバイスがしやすくなった、嫌われずに済む、といっていたのを思い出しました。

②​​パネラーの皆様へ、ご⾃⾝以外の講演、ガイドや勉強会参加者の⽅たちの発⾔を聞いて、何か新たに気づいたこと、参考になったことがあれば教えてください。

(山田) たまたま私がTOREを紹介させていただいただけなのに、まるで私のおかげでこのオンラインツアーがうまくいったような気持ちになったことがすごくうれしいです。TOREがとても良い、役立つと思って教えたり研究していますが、実際に役立ったという声を今回聞いてすごくうれしかったです。

2つ言わせてください。T(テーマ)のことについて、言いたいことや言うべきこと、言わないべきことが、すごくはっきりしたと思います。そのTがあるから、これに結びつくこと以外は言わないという選択ができたのではないかと思います。​

あともう一つは「ストーリー」。ストーリーと言われて何を思うかピンとこない方は「冗談」を思い出してほしいです。よし、冗談をここで言うぞっていう時はすごく構成を考えていると思いますよ。どこでオチを言うか、オチを一番盛り上げるために伏線を置くじゃないですか。これ言ってあれ言って、だからここでドーンって言ってここで落とすって・・・それがストーリーです。それをするために考えてもらうとわかりやすかったかな、と。

(福島) 今日改めて山田さんのTOREが綺麗に整理されていてめっちゃいいと思います。講演以外でいうと人に指摘するときに、自分の意見では無く、基準に則るとこうです、みたいに使いやすいのがいいなと思います。

興味深かったのは中島さんの分析で、オンラインツアーだと通常女性が多いのに、ジオオンラインだと男性が多かったので、特殊な傾向があるとか、新しい発見が多かったです。うれしかったのは、ジオパークをやっていると、ジオパーク関係者だけで話をすることが結構多いですが、観光業界から観ても良かった、インタープリテーションの業界からも意見がもらえたのが良かった。

(中島) 私は、一番ガイドさんご自身のためになっているだろうと思ってみていました。途中、本当に苦しそうなことも結構あって、配信直前にも「中島さん、日曜も絶対に電話出てね」「わかりました!」みたいに、何回でも一緒に練習やりましょうってことがあったりとか...

ガイドの皆さんは、地域の中で、オンラインツアーで取り上げるからと約束をして写真を撮ったり、いろんな取材協力をしてもらっているのに、それをバッサリ切られた時の苦しさ...すごく気持ちがわかると思いながら拝見していました。でも、結果的にすごくいいところにたどり着いて、逆にその素材を使ってまたもう1回やろうと言ってくださったり、本当に1人1人のドラマが思い出されて、すごく私も感慨深かったです。

あとここにいらっしゃる皆さんが本当に資産だろうと思います。旅マエ、旅ナカ、旅アトという言葉であれば、オンラインが旅マエ、対面が旅ナカって言いますが、次はどこへいくかをお互いシェアできるような、そういう旅アトの場が継続して育っていけると良いと思います。福島さんが日本ジオツーリズム協会を作られているので、これからも活性化してもらって、私もその端っこにいたいと思います。

(渡辺) マッツ(=松本)さんが「プロだと思っていたけど、まだこんなに変われるんだ」と仰ってたのが印象的でした。皆さん元々すごくできる方なのに、リハーサルを重ねて行く中で成長していくのが見れて、それが印象的でした。あと皆さんが、人とは違うスタイルを出すぞ、とか、これまで出してなかったようなネタを出す、そのプロ意識が素晴らしいと思って見てました。​​

(福島) チャットにコメントしていきましょう。渡辺さんに成長したと言われるとうれしいですよね、という話がありましたが、最初とリハーサル2回3回繰り返した後にこんなに変わったんだ、というのを僕らは自分たちでやっているじゃないですか。だけど、皆さんは一番最後のツアーしか見てないし、その前がどんな感じだったかもわからないので、今回、その辺が伝わったのは良かったと思います。

リハーサルのときに言う皆さんの指摘がすごい的確だったと思っていますし、それのおかげで成長したと渡辺さんにも言ってもらったので、ぜひ第2期の人たちには、苦しんでいただきたいなと思っています。

あと、山田さんのインタープリテーションの話はすごくわかりやすくてファンになりました、ということでした。

(山田) 宣伝になりますが、こちらの本(INTERPRETATION 著:SAM.H.HAM)を鋭意翻訳中で、今年中には出したいと思うので、出たらお買い求めください♪

(西谷) 私、英語が全然不得意なのに、一生懸命、最初のうちだけ読んで挫折したんですけど。最初のうちにテーマを決めることがガイドが楽になる方法であると。何故なら、何が余分なものかが見えやすくなって、そぎ落とすのは自分の分身を削がれるようで辛いですけど、捨てるのがやりやすくなるというのを読んで、すごい納得しました。他も全部、日本語になって楽に読めると思うと、すごい楽しみです。

(山崎) 荒川さんのコメントの一部から抜粋します。ツアーの流れを考える上で、今のちょっと削ぎ落とすというところと少し通じるんですけれども、何を伝えたいのか、何を感じてほしいのかを意識するようになり、短い案内の中でもメインになるテーマを意図的に考えて、内容も絞り込んだりするようになりました、というコメントいただいております。​​

③今後のご自身の活動の中で生かしていこうと思ったことがあれば教えてください。さらに今後のオンラインツアーを対面型に広げる為の提案があればお聞かせください。

(山田) TOREが本当に役に立っているのかどうかを知りたいと思ったので、研究の中で効果や影響を測定をさせていただけたらとってもありがたいです。インタープリテーションは実践があればこそ意味があるので、私だけがやっていても意味が無いんです。実践をして、研究をして、エビデンスに基づいてまたインタープリテーションを高めていくことができればありがたいと思います。

(渡辺) 僕はジオパークへ行って何か意見を言ってくださいと言われるんですよね、特にガイドは。そういうときにどうアドバイスするか困っていましたが、簡単になりました。日本ジオツーリズム協会のオンラインツアーに参加しよう、と言えば済むようになったのはラクですね。ジオパークではテーマやストーリーといってましたが、いまいちイメージが曖昧で伝わってなかったところがありました。TOREと言語化してまとめていただいて、言いやすくなりました。

(中島) ジオオンラインのおかげで、世界仮想旅行社も成長しましたと申し上げたい。リハーサルに私達仮想旅行社のメンバーを同席させていただいたことで、TOREの考え方が、それこそ他の国や他のテーマのオンラインツアーにも非常に持ち込まれまして、テーマは一つ、誰を対象にするか考えを身近なところから、とか、わかりやすいオンラインツアーを届けることに繋がっていると思います。

今後のリアルツアーへの導線ですが、ちゃんと流れを考えて落としどころをきちっと常に仕掛けておくことです。三笠の回がすごく良い例ですが、「ワイン飲みたくなりました」では、このふるさと納税へ!「ツアーに行きたくなりました」ハイ、ここで申し込み!っていう流れをきちっと作って、さらにその人たちが帰ってくる旅アトの受け皿を作っておくことは非常に大事です。

あとは数珠つなぎで行きたくなる人がいそうだと思っているので、ぜひそういう数珠つなぎテーマのジオリアルツアーみたいなことはやっていただきたいし、私も参加したいのでよろしくお願いします。

(福島) さっきの繰り返しになりますが、僕だと、ガイドの指導や養成みたいな立場で関わることが増えてきたのですが、指摘するのが言いずらかったのが、TOREのルールに則ると、という風にめちゃくちゃやりやすくなりました。

今後ですが、まずは第2期をやります。2ndシーズンがありますので、是非参加してください。​​​​第3期、第4期と引き続きやっていきたいです。オンラインツアーそのものをするというよりは、TOREの訓練の場でもあり、紹介の場でもあり、ツアーでもあり、みたいないろんなメリットがあると思うので、引き続きやっていきたいと思ってます。

なんかいい感じに伝統になったらいいなと思っていて、これに参加したいっていうガイドさんが全国にどんどん増えていって、ジオガイドの登竜門みたいなオーディション番組っぽい感じになってきて、「私、セカンドシーズン出たんですけど」とか「僕は4回」「いや、第4シーズンなんです、まだ」みたいなのだったら面白いな、と勝手に想像しています。(笑)

皆さんのガイドを聞いていたら行ってみたいと思ったし、日本はまだまだ知らないところがあるし、実際に行ってみたいですよね。いずれなのですが、中島さんに旅行業を取ってもらって・・・

(中島) 第三種の旅行業申請中です。日付を決めたパッケージツアーは募集できませんが、受注型であれば可能です。

(福島) 1日で回るのは難しいので、例えば渡辺さんと行くなんとかツアーや、西谷さんと行く何とかツアー、セカンドシーズンの誰々さんと行くなんとかツアーみたいな、実際のツアーもしたいと思っています。例えば花崗岩で、この時期に出てきた白亜紀の花崗岩繋がりとか、黒潮、流山などで、Part1、Part2、Part3みたいなオンラインツアーを企画して、やっぱり本物が見たくなると思うので、リアルツアーもマジで開催したいと思っています。

(西谷) リアルツアーに繋げるというのは、今回のテーマもまさにその通りですね。オンラインツアーをやると、ピンポイントの広い紹介じゃなくても、物語として面白いとすごい楽しくなって、人やガイドさんに会いたくなったり、私はそう思ったんですけど。

そもそもガイドって普通に行ける、歩ける場所にお金を払ってガイドを頼むんで、高いからってやめる人はやっぱりいますし、そもそも安いツアーの方がやっぱり集客力はあるんですよ、ガイドをつけない安売りとか。
そこになんでガイドの価値があるかというと、自分で行っただけでは全然わからない、物語をそうやって楽しませてくれる体験ができるところがすごく大きい。日本で欧米ほどガイドにお金払う文化がなかったんですが、このオンラインツアーでガイドが真剣に物語を作り込むということで、今後はそういうお金を払う文化が段々できていくんじゃないかなと、今聞いていて思いました。

(チャットの質問)質問2の後半とても興味津々です。オンラインツアーの出来が良すぎて、例えばガイドが良くて景色の見せ方が良くて、参加者は大変満足したところで、ジオパークには興味あるけど、せっかくだからオンラインツアーで見れてない別のジオパークの地域に行ってみようっていう考えになってしまったりしないのでしょうか? あえて全貌を見せないといった工夫や現地に行かないと!って思わせる工夫があるのでしょうか​​?

(福島) あの「行かせよう」という工夫は、(三笠の回の)下村さんが、もう完全にそのつもりでやってましたから。そういう意図を持って作っていた回もあれば・・・なんだかんだテーマを絞ると、その地域全部は見せられない。テーマを絞ると、本来はすごく時間をかけて移動しないといけないところも出てくるんですが、秒で見せられるのがオンラインの良さだったりするんで、リアルでオンラインツアーと同じことができるかっていうとできません。

リアルにその場に行きたいですよねという仕掛けが、正直、今回のシリーズでできてなかったのは、そもそもこれはTOREの勉強をしようから始まったので、リアルツアーにちゃんと繋げるつもりなかったってのが正直なところです。

中島さんが入ってくれたことで、リアルツアーへの意識もちょっと持ちつつ開催できたのはよかったと思います。僕らだけだったら本当にガイドの勉強会だけで終わったところを、せっかくならもうちょっといろんな人に見せましょうよ、とアドバイスしてくださったのは非常にありがたかったと思います。

(中島) オンラインツアーの会社として言うなら、全部出し切ったとしても、絶対に現地の素晴らしさの1000分の1にもならないので。現地の良さは、そんなに出し惜しみしようと思わず、全開にしてちょうどいいぐらいな気がします。​​

(福辻) 第二期の方にお伝えしたいことがあります。リハーサルがすごかったんですが、あえてオリジナルを置いておくべきだったと思いました。自分が一番最初に作ったオリジナルと、完成品を見比べることで、自分の成長がわかるし、1年後2年後でも勉強になります。オリジナルをどんどん変えちゃった自分が勿体ないって思ってるので、2期の方はオリジナルをコピーで置いておいてください。​​

(福島) 確かにそうですね。両方比べると衝撃的にいいかも知れない。オンラインの良さでもあると思います。

最近いろんなところのガイド養成をしてるときに、自分のガイドの様子をビデオに撮ってくださいって言ってます。自分の姿をビデオで見ると、大体恥ずかしい、こんな喋り方してたのか、すごい反省になるから良いんですけど。オンラインは録画しやすくて、普通に録画ボタン1個押せばツアーの全容が全部残るので、反省がしやすいのは、オンラインの良さかな、と。リアルで録画しようと思えば、誰かにビデオ回してもらわないといけないので、結構大変ですよね。

(中島) 皆さんがすごかった、苦しんだみたいなことを結構言っているので、何で私、第2期するっていってしまったんだろう、って気持ちになった方がいたんじゃないかと心配するコメントがありました。結果オーライだったと思うんです。その辺を、1期の方、やって良かったという感想をください。

(山崎) 私がやった第4回ぐらいまでは、まだ日本全国で移動が自粛してた頃だったので、他の県の方にアピールするという考えも無く作っちゃったんですよ。だから逆にオンラインだからできる無茶な動きで、オンラインだからできるストーリー仕立てで、というところはできたんですね。

今、あのツアーの内容を見直すと、絶対にこの内容でリアルツアーはつらいなと思いますが、オンラインツアーでしかできないことという視点が得られたのはやっぱり大きかったと。

あと、この画面に自分が映るのを見られるのがいいんですよ。自分が普段持っている写真や地図、ぬいぐるみを使う方もいますが、実際どういう角度で映って、どういうアピールになってるかを後で画面で確認できることで、より見せやすい動きが獲得できます。

私の場合だと、紙芝居を作りました。神話を紹介するのに書きましたが、最初に迫力が出るようにと思って筆ペンで白黒で書いたものは、画面に映すとあまりに強烈で、これは良さが伝わらないとバッサリ捨てて、ちょっと漫画チックに書き直したんですよ。客観的に見るからこそ、逆にもっといい表現にたどり着くっていう側面もあります。

作ってるときは嫌だ嫌だ、中岳の火口に身を投げるまで行きましたけれども大丈夫です、この通り生きてます。(笑)

(西谷) 最終的には大丈夫ということですね。山崎さんの言葉からはオンラインをリアルに繋げるという役目+オンライン自体の楽しみというツアーの可能性もあるんじゃないかと感じました​​。

(福辻) 私の場合は皆さんのリクエストで、川舟下りをやってほしいって言われたんですね。止まってる場所の案内ならオンラインでしやすいですよね。動いてる川舟ツアーの1時間半を50分にどうする?それも川舟だけをって。すごいチャレンジでした。

動いてるものが動いてない、配信で動いてるように見せるという3ステップだったと思います。だから百何十枚かのパワポの写真を使ったら、多すぎるとすごい言われて、削って削って削って・・・少しだけドローンを飛ばしたり、音を聞かせようとすると音飛びしたり、やっぱりうまく行かないとか。

何か動いてるものと動いてないものとの組み合わせの難しさがあったけど、やっぱりチャレンジっていいなって。できないことに挑戦するから、結果が良くも悪くも、自分にいい結果として戻ってくるなと思いました。チャレンジしなかったらずっと後悔していたと思います。

(江川) オンラインツアーを経験したことで、リアルの下見のときより注意深く見るようになったのが、私にとっては収穫でした。リアルのときは見えるものから見えないものを、どうやって伝えようかという風に思うんですが、逆にオンラインの時は、見えない人に見えるものをどうやって伝えようかをすごく考えました。

そのためにいろんなものを注意深く見て、これをどうやって伝えようかとすごく考えるようになったのが、オンラインツアーですごい活きてきた、というのが私にとっては大きな収穫でした。

何より大きいのはテーマを意識することで、必要か、必要じゃないかの選別がすごくしやすくなる。もっとぶっちゃけた話をすると、最初の段階で作ったとき、枠の3倍ぐらいの長さになっちゃって。(笑) 

いろんな方に取材をして、いろんな話をいただいたので、ちゃんと恩返ししなくちゃいけない。これも入れなきゃ、あれも入れなきゃ、という気持ちでめちゃくちゃ長くなってしまったんです。

仲間内でリハーサルをしているときに、「テーマは何だろう」ともう1回考え直して、削って削って削って削って・・・の作業が苦しかったんですけれど、結果的によかったです。今では、それがもっと早くできるようになりました。それが収穫でした。

(福島) テーマを「絞る」ことがすごく大事で、それが勉強になったというお話でもあると思います。一方で、今回のツアーを作るに当たって、結構取材したり、改めてもう1回調べ直した人が多かったんです。それは何か逆に良かったなと思って。

なんとなく聞いてたからこんな感じだろう、とリアルのツアーだったら雰囲気でごまかせるときもありますが、オンラインツアーではちゃんとしなきゃと思ったら調べるじゃないですか。​​それがすごい良くて。今回、リハーサルのときに専門家の人が何人か入ったりして、「いやそれちょっと違うと思う」っていう指摘をするチャンスもありましたし、地域の人の声をちゃんと聞きたいと取材に行った方は、それが一つの糧になっていると思います。
引き出しが1個増えたというか・・・。オンラインツアーに参加することによって引き出しは増えていくし、引き出しの使い方もわかっていくことで、良いことがいっぱいあったと思っています。

(西谷) 下村さんからのコメントです。日本ジオツーリズム協会だけで終わらずに手法もいろいろあるので、これをきっかけに、手法を変えてオンラインツアーを展開してほしいと思いますし、旅マエ、旅ナカ、旅アトにどう繋げるかという意図的設計を考えるのも面白いと思います。

④第2期の方への一言、エールをお願いします。

(西谷) 実は、オンラインツアー第2期の話が時々出ていたんですが、次に続いて手を挙げてくださってるガイドの方もいらっしゃいます。パネラーの皆様、エールをお願いします。

(福島) さっきの繰り返しになりますが、本当に自分の糧になる、めちゃくちゃいいチャンスだと思うので、楽しみながらこのチャンスをものにしてもらえたら嬉しいと思います。

(中島) どこまでも一緒に作りますので、もう何ならポケットWi-⁠Fi送りますので、一緒に頑張りましょう!

(渡辺) 印象的だったのは、みんなのアドバイスがかなり具体的なんですよね。だからそんなにビビることなく、飛び込んで来ていただければ何とかしてくれると思います。

(山田) 2期の皆さん、作成するのはすごく大変でしょうけど、お客さんの方を見ている人の方がもっと楽しめるようになると思って。1期目の積み重ねで2期目ですごく良くなってっていうのがあるから、お客さんとしても楽しめそうだなって風に思いました。

閉会の挨拶 (日本ジオツーリズム協会会長 福島大輔氏)

皆さん本日はたくさんご参加いただきましてありがとうございました。ジオパーク、ジオツーリズムの新しい可能性を見つける一つのチャンスになったんではないかと思いますし、なってくれたら嬉しいなと思っております。

10月16日に第2シーズンのキックオフイベントがありますので、ぜひご参加いただければ嬉しいなと思っております。

本日は長時間どうもありがとうございました。


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