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ジョージア料理に恋して ⑪シュクメルリ誕生の秘密を追え!

2019年12月 新たな時代の幕開け

2019年の師走、関係各位に激震が走った。
あの牛丼チェーン松屋でジョージア料理のシュクメルリが期間限定で提供されるというニュースが流れたのだ。

まさか?ジョージア料理が?
しかもシュクメルリが?

友人知人に「ジョージアに行ってきたの」と言っても
百発百中「アメリカ?」と聞かれる。
「前はグルジアって呼ばれてたんだよね」と補足しても、よほどのソ連好きでもない限り、旧ソ連邦の国々の名前を聞いてピンと来る人はとても少ない。
日本に住んでるジョージア人は50人ほどなので、知り合いにジョージア人が居るってこともまずないのだから、みんなの反応はしかたない。

日本人にとってはほとんど馴染みのないジョージアの料理が全国チェーンである松屋で提供されるというのは、ジョージア界隈の日本人にとっては大げさではなく大きな衝撃だったのだ。

12月13日はシュクメルリ記念日と呼ぶ

私は近所の松屋に走って行ったが扱ってない!
そうなんです、期間限定且つ店舗限定企画だったのだ。
日を改めて出かけた神楽坂の松屋で食券を購入したのが午前11時23分。
数量も限定でお昼過ぎると売り切れるという噂を聞いていたためランチの混雑の前に神楽坂店に駆け付けたのだ。

店内ポスター
✕トリビシ 〇トビリシ

ジョージアの首都の名前に誤植があったけど、今となっては楽しい思い出。

もちろんその後修正された

シュクメルリ鍋膳は、おかずであるシュクメルリの他に白いご飯、お味噌汁、サラダがついた定食スタイル。

シュクメルリ鍋膳

「ご飯よりもパンが欲しい」「ワインが合う」などの感想がSNSに投稿され、あっという間にシュクメルリは市民権を獲得した。日経トレンディのヒット商品番付にまで登場したのだから、注目度のほどがわかる。

それと同時に数々の疑問も浮上した。
「ジョージアにもさつまいもがあるのか?」
「ジョージアの人はしょっちゅうシュクメルリを食べるのか?」
「そもそも本場のシュクメルリってなに?」

これらの疑問にお答えする前に私とシュクメルリの出会いをご紹介したい。

運命の出会いか

私がシュクメルリを初めて食べたのは松屋での発売から遡ること3か月。
ジョージア、トビリシのChuriという日本人旅行者に人気の食堂だった。
宿泊していたFabrikaから歩いて10分ほどだったと思う。

ファブリカ

娘が「めっちゃ美味しそうな料理をネットで見つけたから絶対これを食べに行こう」と言って、連れて行かれたのがChuriだった。

日本人が大好きなChuri

これが娘が旅人のブログで見つけたというChuriのシュクメルリ。その後のシュクメルリブームを思うと、我が子ながらなんて先見の明があったのかと感心する。

多分鶏一羽丸々

パンも食べるかとお店の人に聞かれたのでもちろんオーダー。

容赦ない量のパン

こんがり焼けて旨味たっぷりの鶏肉にガーリックソース。ちょっと強めの塩味。旨くないわけがない。

なるほど、これか。
これが旅人たちを沈没させてきたジョージア料理か…。

私と娘は周りの目も気にせず手づかみでシュクメルリの鶏肉にかぶりつき、パンをソースにビシャビシャとひたして食べ、冷たいビールを流し込んだ。

ジョージアはワインだけじゃなくてビールも美味しい

極楽…。そして満腹過ぎて苦しい…。周囲の人を見るとやはり手づかみで食べているので、多分これで正解。(ヒンカリもハチャプリも手づかみで食べる)一応フォークやナイフは出てくるけれど、全体的にジョージアではあまり西洋式のテーブルマナーを気にしなくてもいいように思う。その点ちょっとアジアを感じる。

余談だけど、ジョージアに限らずたとえば中央アジアの国でご飯を食べてると「パンいる?」「サラダいる?」とお店の人がそれらを手にしてテーブルに来るけど、ほとんどの場合、それは有料です。「パン要らない」って答えると「お前ら正気か?パン要らないなんて!」っていう反応されるけれど、要らない時は気にせず断りましょう。

この時、もちろん日本ではシュクメルリが食べられるとは思っていなかったので、私はシュクメルリも習って帰ることにした。

マイアに習ったシュクメルリ

初めてジョージアへ渡ったときに私はジョージア人シェフのマイアから何品かのジョージア料理を習った。事前のリサーチによると、ヒンカリやハチャプリを教えてくれる料理教室はたくさんあるのに、シュクメルリを教えてくれるところは見つからなかった。
私はマイアに料理レッスンにシュクメルリを加えてくれるよう頼んでおいた。

左から料理教室の主宰エラ、私、マイアの赤ちゃん、マイア

基本は丸鶏

ジョージアで鶏肉と言えば丸のまま売っていることがほとんど。シュクメルリも丸鶏を使う。

フライパンで焼きやすいように胸のところで切り開いて平らにしておく。

スヴァネティの塩

下味はこのスパイス塩、「スヴァネティの塩」でつける。
スヴァネティの塩というのは、ジョージア北部の山岳地帯スヴァネティ地方の伝統的な調味料で、現在はジョージア国内に広く普及している。

両面にまんべんなくスヴァネティの塩を塗ったらフライパンで皮から焼いていく。皮がこんがりパリッと焼けるまで辛抱強く待つ。

両面がいい色に焼けたら鶏肉を取り出し、肉をカットする。正直これが少し面倒だ。鶏肉から出た脂は捨てずにフライパンに残しておくのがポイント。

にんにくを炒めすぎない

この脂でニンニクを黄金色になるまで軽く炒め、牛乳を加えて塩で味を調えれば完成。

思いのほか簡単

この時教えていただいたシュクメルリとその直前にChuriで食べたシュクメルリは大きく印象が異なることはなく、マイアに習ったこのシュクメルリは私の定番になった。

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