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正油のだべり

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正油のエッセイを収録。作者の思うところとして、マンガよりこっちを読んでほしいとか欲しくないとか
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#アート

【美術鑑賞備忘録】ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

モネの睡蓮を観た。ゴッホのひまわりを観た。いずれも数々の美術書、それにとどまらず各所の本や雑誌やテレビなど、あまた目にする機会がある。だから、そこまでアイコニックになった絵を目の当たりにしても、「ああ、かの睡蓮だなあ」「かの向日葵だなあ」と、どこかその感慨を昔に置いてきてしまった印象を受ける。 ただ一つ、際立った感覚としてあったのは、特にひまわりの方を観たときで、絵の具をキャンバスにだくだくに盛ってあるために、黄色の渦の中に種を表す黒い渦が出来ていた、そのことへの興味だ。こ

こんなのどうでしょう [作品を作ってみたい]

ある日の夕方、テレビを観ていたら、漫才師のミルクボーイが出ていた。よくできたネタのフォーマットだなぁとつくづく感心させられる。落語のように何度も聴ける、様式美がある。 ちなみに、初めてテレビで観た時に、内海さんにはデジャヴを覚えた。それはモナカだ、モナカじゃないとひたすら叫ぶ、向かって右手に立つ角刈りの人だ。その内海さんは、なんというか、奇品珍品を辻でひっそり商っていそうな……そうだ、丸尾末広氏の『少女椿』に出てくる山高帽のおじさんっぽい人を想起させる。 いやいや、それは

盗めるアート展が教えてくれた「芸術の無力さ」

 same gallery(東京・品川)にて行われたアート展が、オープニングと同時に、まもなく終了した。7月10日〜19日までの会期を予定していたものの、展示作品がごっそり失くなったためである。  事情をご存知でない方は、こんな書出しに面食らうだろう。「盗めるアート展」なるものが催されたのだ。「美術手帖」のような美術情報専門誌はもちろん、「Yahoo!ニュース」でも会期前の6月に取り上げられ、世間的な耳目を集める結果となった。 https://bijutsutecho.co