見出し画像

男児の母(シングルマザー)としての禁忌、私の場合


恋猫や 自転車で追う彼の尻

  ***

息子たちに明かしていないことがいくつかある。
たとえば、私自身の性行為について。
具体的にいうと、彼らは「母はもう性行為ソウイウコトからは引退している」と思っているらしいので、そういうことにしている。
嘘は言ってない。
聞かれないので、語らないだけ。

以前、「ハハの初体験はいつだったの?」とお話好きの次男に聞かれたことがある。彼が中学生だか高校生のときだったろうか。性や異性への関心はあふれつつも、まだ現実的にはそう切迫していない頃。
「君に彼女ができたらおしえてあげよう」
と、とりあえず、私自身の具体的な情報は先延ばしにしつつも、行為そのものやその結果(妊娠)などについての一般論は話した記憶。
「何かあったときは、早めに相談してくれると嬉しい。親(私)じゃなくてもよいから、必ず信頼できる人に相談するように」
という親として伝えておくべきことはしかと伝えた。

私は自分の性体験を男性に話すことがほとんどない。
かつて、若い時分につき合ったひとりの男性に話したところ、彼が大変そのことを気にして後々までイロイロ引きずられたことが発端だと思う。
まだ十代で彼は私が初めての相手だった、ということもあるだろう。「辛い想いをしていて苦しい」といった意味の言葉をもらされ、軽い気持ちで話した私は焦った。大切な相手を苦しめるのは本意ではないので(端的にいうと面倒なので)、以来、相手から聞かれても、うっかり話すまいという姿勢になったのだと、振り返って思う。
もちろん、相手にとって切実な情報で受け止める用意があるなら提供してもよいのだけれど(すごい言い回しになってるな)、単なる好奇心と興味であれば話さなくてもいいかなと。
「相手の過去を気にするようなヤツは云々」という意見もあろうが、ソコが相手と共有したい大切なポイントではないなら、わざわざ言わんでもよいか、と。
性行為自体は、とても大切な営みだけれど、過去の経験を引き合いに出さずとも、そのとき目の前にいる相手と築いていければ十分な営みである。
また、直截的に情報を開示しないことで場合によってはより燃える営みでもあろう。
なので、息子たちの父親にも話していない。

息子たちも成人した今、おそらくは母親のソンナコトには触れたいと思わないだろう。

先日、息子の片割れとの何気ない会話で、親子公認の私のボーイフレンドの話になったときのこと。
どんな話だったか忘れたけれど、私たちの交際はプラトニックなものであると彼が認識していることが明らかになり、ああ、やはり、と。
「もしも、ソンナコト(SEX)していたら、縁を切る」
という言葉が、「いやいや、ソンナコトありえないでしょー」という軽いノリで出てきて、ありゃー、と。

母として、彼らに「50代女性の性のリアル」を教える務めは、、、とりあえず、担わなくてもいいかな(そうした任を果たせる人は素晴らしいと尊敬します)。

彼ら自身が、追々、自らの経験や知見を通して、
「あのときのハハと彼の間にソーユーことがあったのかもしれない」
と、ふと思う日も来るかもしれない。

成人した彼らのことだから、その日はそうそうに来たりして。


私が息子たちにそのことを言わない一番の理由は、
「君たちが私のいちばん大事な相手だよ」
という私の事実を、何の迷いも混じりけもなく、信じていてほしいからじゃないかな。
もうしばらくの間は。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?