機能テスト:奇妙丸の戦い

 昔書いた適当な文章をルビ機能テスト&note機能練習用として公開。
 お金をいただくようなもんでもない気もしますが、妄想創作物なんで課金バリアを張っておきます笑

 お話としては、本能寺で織田信忠(信長ではない)が生き延びたとしたら、こんなアツい展開あったんじゃね?的な妄想を期に、構想ばかりが膨らみ、小説にするにはあまりに長編化しそうになったので、第1話しか書かなかったやつです。

脱出

天正十年六月二日未明

 妙覚寺にて明智日向惟任ひゅうがこれとう光秀謀反の報に接した織田中将・奇妙丸城介信忠は、父・信長を救援すべく本能寺へと向かったが、本能寺が明智勢の重包囲下あることを悟ると、誠仁親王の身柄を奉ずるため、村井貞勝の言に従い、退いて二条御新造に入った。

 村井貞勝、団忠正、毛利新助ら自らの側近たちを集めた信忠は、事後について諮った。信長恩顧の新助などは明智勢との闘死を望んだ。だが、信忠は逃亡し生き延びねばならぬと直観していた。ここで自分が死ねば、織田の天下が水泡に帰すばかりでなく、織田の家名が途絶えることになりかねない。
 弟たちには期待できなかった。わが子もまだ乳児に過ぎぬ。それに比して、信長の支配体制は信長個人に依存しすぎているのだ。
 信長は諸将を配下にしていたが、それは織田家の家臣としてではない。「天下人」織田信長に従っているにすぎないのだ。頼りにできるのは柴田修理亮しゅりのすけ勝家・丹羽五郎左長秀など、織田家譜代の臣下ばかりであり、その他の諸将は「信長の天下支配」体制における「大名」である。織田家を相続した信忠は、大名としては彼らと同格であった。羽柴筑前秀吉ですら「織田譜代」なのか「大名衆」なのか怪しいものである。
 ともあれ、ここは強力な織田家を再結束させることこそが、父の覇業を継ぐ者として最も重要であることに違いはなかった。

「皆よく聞け。それがしはこれより安土へ退く。織田の天下を台無しにするわけにはいかぬ。十年逆戻りしようとも、それがしが織田を率いて、天下に惣無事をもたらすことこそが、父の望みでもあろう。
 新助。直ちに我が供回りを編成せよ。整い次第、安土に向け出立する。
 長益伯父は岐阜、清州あたりの安全な場所まで一族衆を逃がしていただきたい。
 時は一刻を争う。各々、これは奇妙丸が金ヶ崎と心得、奮戦することを期待する。」

 二十名ほどの信忠供回り衆は、京都を東へと脱出を始めた。団忠正は僅かな手勢を以って二条御新造に立て籠もる。信忠が留まっているように見せかけるためにも、僅かな手勢の大部分を二条御新造に張り付ける必要があった。日が東の空に上がり始め、夜陰にまぎれての脱出行とはもはや言えなかったからだ。時間さえ稼げば誠仁親王の仲介を以って降伏する手筈である。


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