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パスタ 3

梅野田「18、19の頃かな、『色々あって川で釣りをしているおっさんに追い掛け回されて、走って逃げていたら足を滑らせ頭から転んで気絶、気が付いたら誰も客が居ない蕎麦屋の内装をひたすら白く塗っていた』って言うような内容の小説を書いたんだけど、あんなのどう言う感覚で書いたんだろうな。ははははは。今じゃあ無理だわ。ははははは」
飴川「つうかお前小学生の頃から小説ばっか書いてたな」
梅野田「うん。書いてた」
飴川「な」
梅野田「うん」
飴川「腹が減ったな」


梅野田「いやあ?」

飴川「ええ、昨日の夕方から何も食べてないじゃん俺ら」
梅野田「え、いやいや、夜中ラーメン喰ったじゃん」


飴川「ナポリタンのこと?」
梅野田「ナポリタン?」
飴川「ナポリタン」
梅野田「ナポリタンって何だよ」
飴川「何だよって、お前」


飴川「辛い料理だよ」
梅野田「ああナポリタンか」
飴川「そうだよ。ナポリタンだよ。どうかしたのかと思ったよ」

梅野田「いやあ。あんなにタバスコかかっていたらなあ。辛いよなあ」

飴川「ラーメンも辛いよな」
梅野田「あの店はいつもそう。コインランドリーの隣の隣のあの店。そうだよ。ラーメンも辛いんだよ」

飴川「いやあ。あんなに一味唐辛子かかっていたらなあ。辛いよなあ」
梅野田「うん、だからさ、そう言った辛いラーメンを夜中、俺ら、喰っただろ?」
飴川「喰ったな」
梅野田「覚えてるよ。お前はその店で辛いラーメンを食べたのち、追加でそのようなナポリタンも食べたよな」
飴川「そうだよ」
梅野田「そうだろ。辛いラーメンと辛いナポリタン、喰ったろお前は」
飴川「そうだよ」


梅野田「腹減るかよ」
飴川「ああ」
梅野田「て言うか夜中に辛いラーメンと辛いナポリタンを喰っておいて何故昨日の夕方から何も食べていないと言えるんだ?今まだ朝5時だぞ」
飴川「ああ」


梅野田「辛いからか」

飴川「辛いからだな」

梅野田「そうか、そうだな」
飴川「おお」

梅野田「俺は辛いラーメンだけ、喰ったが、お前は辛いラーメンだけ、喰った訳ではない」

飴川「そうなんだ」

梅野田「だから腹が減ったと言う上、実際腹が減っているんだな」


飴川「そう言うことだ」

梅野田「じゃあ俺も辛いナポリタンを食べると昨日の夕方から何も食べてないと言え、腹が減ったと言え、実際に腹が減る訳だ」
飴川「今更何言ってんだ当たり前だろ阿呆か」
梅野田「本当、俺、阿呆なんだ」
飴川「辛いナポリタン喰って来いよ阿呆」
梅野田「阿呆でやるせないよ、僕は」
飴川「そんなにナポリタンくらいで泣くなよ、辛いからさ、わかるよ、わかるけど頑張って」
梅野田「うん俺頑張って辛いナポリタン喰うよ」
飴川「うん頑張って辛いナポリタン喰えよ」

梅野田「頑張る」
飴川「頑張れ」

梅野田「辛いラーメンを二杯じゃ駄目か?」
飴川「駄目だ」

梅野田「頑張る」
飴川「頑張れ」

梅野田「凄く頑張って辛いナポリタンと辛い焼そばを調子に乗って食べたら駄目か?」


飴川「知らね」

梅野田「頑張る」
飴川「勝手にしろ」


ふたり「ははははは。辛くなくても食べなくても大丈夫だけど、辛いんだ。食べるんだ。はははははははははは。」





梅野田と飴川はタバスコと一味唐辛子の小瓶をマラカスのようにひたすら振り続けた。


終わり

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