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国家のシロアリ
復興予算流用の真相 著者 福場ひとみ
この本はタイトルの通り、東日本大震災に使われた復興予算の使途について詳しくまとめられた本です。
この本の前書きは、
2013年10月15日に当時の総理大臣をしていた安倍晋三元首相の国会議事堂本会議で語った
復興に向けた演説で始まります。
前年に発覚し民主党政権を揺るがした
「復興予算の流用問題」から1年あまり、
二度と予算流用を許さないという前提のもと、政治がイニシアティブをもって復興を進めていくという明確な意思が込められていた。
だが、、、とつづき、
国会議事堂本会議で震災復興に
向けた強い決意を語ったけれど、
彼らが高尚な演説をする舞台となった
国会議事堂が、被災地に渡るべき
復興予算で修繕されていたという
内容などが記載。
ステンドガラスを照らす照明 1億2000万円
耐震補強の名目 総額約7億円
中央合同庁舎 12億円
著者の方が驚いたのは震災から
1年以上過ぎた2012年7月とのこと。
公開された予算書をもとに
さまざまな流用のケースを取材し、
週刊ポストで取り上げたところ、
「復興予算が流用されている」という批判が徐々に高まっていきました。
当時の民主党政権も、霞ヶ関の担当者たちも
民主・自民・公明の3党合意による
復興基本法や、復興基本方針で決めたことで
問題ないとつっぱねていたが、高まる国民の怒りを無視できなくなり、
その後民主党は選挙を大敗し自民党が政権を
獲得する。
その後、自民党政権は、復興予算流用問題を取り上げ政権を再獲得。
しかし、自民党政権に変わってからも
被災地の復興が進まない現実に疑問をもち、
さらに調べ続けた。
というような内容が書かれていました。
私が注目したポイントは、
①復興予算をもとにした名称の変化!
東日本大震災復興に向けて「絆」をかかげ
「負けるな日本」「がんばろう日本」などの
スローガンが開始され「一日も早い被災地の復興を」を毎日のように聞いている中、
蓋をあけると
「耐震」「防災」の要素が入れば全国の
公共事業に充てられていた。
「世界に開かれた復興」という根拠で、
海外イベント予算。
「未来の原子力」核融合炉の開発実験事業
復興予算の中には「いつか」のためのものまで含まれていた。
復興にまつわる言葉が含まれていればあらゆる事業が計画、実行され、被災地とは関わりが
ない全国各地にに税金が使われていた。
言葉のあや的文脈が多い中、抽象的に表す内容が、P146〜.復興構想会議の諮問書の一文に
「今回の大震災は単に被災地域のみならず、、、。」
二度も「被災地域のみならず」と繰り返されたのち「被災地域の復興なくして日本経済の再生はない、、、。」と続いている。
本の中には復興のあり方を決めるはずの
会議が、違う場所ばかりをさしていることに
不自然さを感じるとありました。
②メディアへの広告費
復興に莫大な税金が使われているが、
いまだに復興できていない事や
無駄に税金を使われている事への批判が
高まり、批判すべきメディアにも
広告費という税金が投入。
③一般会計と特別会計の謎!
国会で予算のことを語られる時、
通常は一般会計のことしか対象とならない。
特別会計が除外されているから。
しかし、国家予算の額からすると、
一般会計予算は5分の1にも満たない。
歳出削減の話は一般予算で行われているため、単にパフォーマンスにすぎないとありました。
④海外からみた日本というシステム
日本の権力構造に対する分析で知られる、
カレル・ヴァン・ウォルフレン氏
(アムステルダム大学名誉教授)
[日本にはシステムを構成する権力者たちが多数いるが、この国は彼らによって押されたり、引き戻されたり、漂わされることはあっても、率いられることはない。権力の中心が不在であること、それが日本というシステムの本質である。]
権力をコントロールする手立てとなるものが
役割を果たせていない。
この内容に関しては、ウォルフレン氏が
1994年に発刊しベストセラーになった
「人間を幸福にしない日本というシステム」
という本に詳しく書かれているようです。
本の感想
復興予算に使われた事業内容が詳しく書かれており、その数や事業内容に驚きました。
被災地との関連性が私には理解し難いものであったことや、被災地外の事業の方が明らかに多く感じられました。
また、本の中に、
[矛盾や違和感が多くあり、あらゆる機関の担当者に確認すると、最終的に返ってくる言葉は
「〇〇法で決まったことですから。」
のような返答でしかない。]
というような場面がありました。
自分も似たような経験があり、日本のシステムのあり方に疑問や不快感を抱いていました。
明らかに問題があると感じ、問い合わせをすると案内される場所が異なり、再度問い合わせをしても同じことが繰り返され、最終的にははっきりとした回答がなくなってしまいました。こうした事例は、コロナ禍では多くありました。矛盾を感じても適切な根拠を示さないことや、責任者が現れないということもあります。このような状況では、問題を感じても何もできずに受け入れざるを得ない状況になると思います。
後書きには、震災から3年近くなっても復興されない被災地の様子が書かれています。
心の傷は容易に癒されず、自殺者が増加し、
若者も減少、メディアが親身に取り上げたのは震災一年目がピークでした。
もし可能であれば、本書をお読みになった方には、こうした実態を改め変えていく一助となるよう、本書を活かしていただきたい、と書かれています。
これだけ膨大な内容を詳しく調べ上げた
著者の方の熱意は素晴らしいと思いました。
私は政治に対する詳しい知識がないので、誤った解釈で書くことは避けたいと思いながらまとめましたが、文章に誤りがあった場合は申し訳ありません。
ご興味を持たれた方がいましたら、
ぜひ読んでみてください。
いつもお読みいただきありがとうございます。
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