2023シーズン開幕前夜に思うこと
昨年の雑感から今年への想い
森下体制を挟んだものの
それまでのFC東京は長谷川健太のもと歩みを進めていた。
ハイプレスからの「ファストブレイク」を合言葉に2019年シーズンは優勝争いに最終節まで絡む2位。ACLの出場権を得た。
そして2020年はルヴァン杯の優勝と結果を残してきた。
しかしながら、このサッカーは
フィジカルコンディションを高い水準で保ち、球際の強さを前面に押し出し、ハードワークを厭わない献身性を強く求められた。
そしてそれを実現するには高いモチベーションを保つ必要もあった。
どんなサッカーにもこの要素は必要だが、
どちらかというとリアクションが多くなるこのサッカーはモチベーションを保つには少し難しい部分がある。
そうやって少しずつ、全ての要素が揃わなくなる中で、ハイプレスが簡単にかわされ、大量失点の試合も増えた。
そして悲しいシーズン途中での監督交代を目の当たりにする。
結果を残したサッカーではあったが、
継続してクラブのベースとして取り組むには、リアクション要素が多くなることは、モチベーションやコンディションを保つためには難しいのではという気持ちにさせられたシーズンでもあった。
そこでアルベルを迎えた2022年シーズン。
ボールを恋人のように扱えという言葉が表すように、
丁寧なビルドアップからのアタッキングサードへの侵入と、ボールロスト後の即時奪還が色濃く打ち出された。
そしてそれを果たすために正しいポジショニングを取り続けることを求められた。
いわゆる自らアクションを起こすサッカーへの転換を図った。
リアクションするより、アクションするほうがモチベーションが高まるのは人間の真理でもある。
そして東京全体としても、アルベル本人としても、クラブのベースとしてこのサッカーを植え付けたい意識は伝わってきた。
シーズン序盤、特に開幕戦は、ボールがスムーズに回る展開に胸を躍らせたが、逆に前がかりすぎてフィルターなしでCBがカウンターに晒されるような大味な展開も散見された。
ただ渡邊凌磨や松木玖生といった若手から長友佑都や東慶悟といったベテランまでアルベルのサッカーを理解が進んだ後半戦は徐々に理想のサッカーが形作られた。
そして展開が悪い時にはアダイウトンの個の力で勝点をもぎ取るなど理想からは一旦離れた現実的な選択もして結果は6位。
サッカーの深化を果たしながら最低限の結果を残した意味では初年度としては及第点とも言えよう。
しかし、ふと思うのである。
サッカーの深化は何のために行っているのか。
近年、フロンターレやマリノスという優勝チームが時間をかけて自らのスタイルを構築したこともあり、
監督就任して1年目は結果が出なくても我慢するという認識が一般化してきた。
ただ、サッカーの深化はシーズンを過ごす上での目的ではない。
あくまで優勝するための手段である。
なんとなく及第点とも思えても、やはり結果がでなければ、どんなにサッカーが浸透しても意味はないのである。
そういう意味では今シーズンは結果にこだわる必要があると思う。
そもそも降格圏をウロウロすればアルベルが解任されるリスクが増え、サッカーを浸透させるどころではなくなるが、
むしろ結果を出して、このサッカーが正しく、全員に浸透させ、クラブのベースとして据えるべきだと証明しなければならないシーズンなのではないかと思う。
なので私自身やはり今年は更に結果を追い求めたいと考えている。
サッカー界の正念場
FC東京から一旦日本におけるサッカー界に話を移す。
昨年はカタールW杯が開催された。
だが、開幕前のテレビや各メディアの取り上げ方はだいぶ縮小されたように思えた。
他の趣味の友人に
「ワールドカップの初戦っていつか知ってる?」
「今週日本の初戦なんだけど知ってた?」
と聞くと一様に「知らない」と返ってきた次第だ。
国民の話題のテーブルから落ちてしまった感覚であった。
今まではW杯の出場とともに、三浦知良、中田英寿、本田圭佑といったアイコンとなる選手にも引っ張られサッカーの人気は右肩上がりにみえた。
しかし、近年はそうでもないように見える。
考えられることとすれば
まず1つはサッカーコンテンツの成熟化である。
サッカーが広く知られるようになり、知識を多く持つ人も増えた。
カタールW杯前も、ドイツやスペインの強さも知ってしまっているがゆえに悲観的なムードが漂い、日本の国民性からも盛り上がりにかけてしまったように見えた。
さらに、日本より他の強豪国のサッカーに興味がいってしまうという部分もあるだろう。
そしてW杯だけ盛り上がる「にわか」的なムードを拒絶する空気感もあるかもしれない。
2つ目にサッカーがその他コンテンツと並列になったということかもしれない。
カタールW杯の最終予選。アウェイゲームはDAZNでしか観られなかった。
今まで地上波で放送してなんとなくテレビをつけたら観られたものから、興味のある人がお金を払って観るものになった。
SNSの発達や情報化に伴い、エンターテインメントコンテンツは、興味のある人が自ら情報を得てアクセスするケースが大半になってきたように思える。
そういった時代の流れにサッカー界が飲み込まれた格好ともいえ、他の多種多様なエンターテインメントコンテンツがライバルになった。
そういう時代の中にあっては、サッカーが特別フォーカスされることはないというのも、
別のコンテンツのほうが盛り上がっていればそちらを取り上げられるのも納得かもしれない。
カタールW杯は
ドイツやスペインの撃破、本田圭佑のAbemaでの解説、長友佑都のブラボーで一命を取り留めた。
ただこの繋いだ命を次につなぐためには、また他のコンテンツと戦いをしなければならない。
いかにサッカーを観続けてもらえるか。
そしてJリーグに関しては
ほとんどの代表選手が所属する欧州リーグにだけ興味を持たれるだけでなく、地元のスタジアムに足を運んでもらうために、さらなる戦いが待っている。
という意味では日本サッカー界は正念場を迎えているのではないかと考える。
FC東京の過渡期
さて回り道をしたが、話をFC東京に戻す。
FC東京は2018年シーズンからmixiとの関わりを持つようになり、マーケティングパートナーを経て、2022年2月からはmixiの子会社になった。
このことは、上記に述べた監督の交代とともに過渡期として挙げられうる出来事だと感じている。
もちろんmixiという企業はSNSや「モンスト」などスポーツ以外のエンターテインメントにも明るい。
そういった意味でも、日本サッカー界の正念場を理解しているし、FC東京がどうやって他のエンターテインメントコンテンツと戦うかという視点をすごく持ち合わせているように思う。
事実、青赤パークの充実だったり、国立競技場をはじめとするスタジアムの演出であったり、YouTubeなどのSNSの活用であったりと様々な場面でサッカー以外でも人を惹きつけられるような仕掛けをしてきた。
「他の事に力を入れなくても、サッカーが強ければ、人はついてくる」
そういう意見も十分に理解できるし、私自身も、理想はサッカーの質でスタジアムを満員にすることだと感じている。
とはいえ
麻雀しかり、野球しかり、アイドルしかり、
本来のパフォーマンス以外の、付属するエンターテインメント要素が人を惹きつけていることを私自身が目の当たりにしていることもあり、
やはりこういう仕掛けは今後のFC東京の発展には必要なのだと思う。
素晴らしいサッカーの質を持っている欧州のビッグクラブも財政難で苦しんでいる。そういう意味では経営的に傾いてクラブが消滅しては元も子もないという見方もできる。
とはいえ、やはり
FC東京は「フットボールクラブ」である。
全ての活動において、実際に戦うチームや選手のパフォーマンスに悪い影響を与えてはならないと考えている。
先日、ユニホームの背面デザインについてや、
開幕戦のゲストライブに関して少し世間を賑わせた。
自分たちの是非に関わらず、こういう些細な事柄が意外とチームとしての歯車を狂わせるかもしれない。
先ほども言ったようにサッカー以外のことでサッカーに悪い影響は与えてはならない。
特にSNSの発達に伴い、サッカーに関わる事柄において
不適切な行動や、対応は、すぐに炎上する傾向が高まってきている。
そういう厳しい環境の中でも、しっかりと様々な活動を行わなければならないし、
その延長線上には、チームやスタッフがサッカーに集中できるような環境づくりであったり、選手の力を高めるような集客力のあるスタジアムづくりをしていかなければならない。
フロントがフットボールクラブであることから逸脱していないか、私たちは見守ることが必要であるとともに、
自分たちもスタジアムやSNSでどう振舞うかも問われているように思える。
とても長くなってしまい恐縮すぎるところではあるが、
FC東京にとって2023年シーズンはビッグクラブになれるかどうかのキーポイントになる大切なシーズンかもしれない。
そんなシーズンの開幕前夜。熱くなるものをこみ上げずにはいられない。
過渡期で正解が見えないからこそ、
私はみんなで一緒に1年戦い抜きたい。
それでは!
VAMOS! TOKYO!!