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【GENT'S STYLE】クラフツマンシップ列伝 サルト リフォームとサスティナビリティの可能性を追求する 前編

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Picture by Marco Spola
 
 〝サスティナビリティ(持続可能性)〟は数年前から欧米のファッション業界では最重要キーワードの一つとなっている。だが、日本市場およびアジア市場では長らく顧客が関心を持たないとされてきたテーマのひとつだった。

 しかしコロナ禍によって人々の消費に対する意識も変化している。日本でも経済産業省など政府や業界団体の後押しもあり、〝サスティナビリティな社会〟〝SDG’s〟といった言葉が頻繁にメディアに登場するようになってきた。

 こうした背景の中、11月12日、ジャパンサスティナブルファッションアライアンス(以下、JSFA)は第一回総会を開催した。「サスティナブルなファッション産業への移行の推進」を活動方針に掲げ、共同代表に伊藤忠商事、ゴールドウィン、日本環境設計、ファッション・繊維企業28社が加盟。パブリックパートナーは経済産業省、環境省、消費者庁だ。

 日本のリフォーム店の草分けでもある老舗「サルト」株式会社はJSFAに賛助会員企業として参加。環境省「ファッションと環境タスクフォース」との政策提言・意見交換ならびに、ジャパンサステナブルファッションアライアンスへの参加を通して、洋服お直し(リフォーム)の普及に努めている。

 サルト株式会社の前身である有限会社サルトは2000年、檀正也氏によって福岡県福岡市に設立された。2007年サルト株式会社に組織変更し、東京都渋谷区に本社機能を移転した。2009年に工房兼サロンを持つサルト銀座店をオープン。自社の職人による高い技術力を背景に、ボタン交換といった簡易なものから大掛かりなリメイクといったお直し、さらにはオリジナルブランドのスーツや革製品加工まで広範囲に手掛け、企業向けに生産不良品の補修やお直しに関する講習会の開催と、単純な服のリフォームのみに止まらない幅広い業務を行っている。

 「テーラーが提案するお直し」を旨とするサルト株式会社代表の檀正也氏に具体的なリフォームの技術とクラフツマンシップについて伺う前編、後編は彼の右腕であるMoto Kwokfan氏と共に、これからのリフォーム事業の持つ可能性と経営戦略を紹介しよう。

著作『リフォームの魔法』で伝えたかったこと

喜美(Y):まず、今年9月に上梓した著作『リフォームの魔法』(講談社)について伺いたいのですが、なぜ今回本を出版されたのでしょう?

檀(D):弊社は会社設立20周年を迎えました。そこで弊社のお直しをひとつの形にしたいと思っていたところに、お客様が講談社を紹介してくれたんです。世の中は震災があったり、コロナがあったり、洋服に対する意識も変わってきている。

Y:確かにこの本の中では参考例とお直しの金額が明確に出ていますね。

D:一口にお直しといっても何ができるのかよくわからないという方が大半だと思います。
昔のお寿司屋さんと同じで、お直しの金額はよくわからないと言われている。例えばウエスト詰め3000円とかざっくりした料金はあっても、いざお店に持ち込んだら、素材や仕様がこうだからということで10,000円になってしまった。こういう問題はよくお客さんから聞いていました。だから金額を明確にすることを意識してやりました。この本で「お直しでこういうものができる」とひとめでわかる形にしたかった。

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