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この先には、何がある? 1┃群ようこ
転職六回
毎日、原稿を書いていると、「何年、こんなことをやってきたんだろう」とふと思う。会社に勤めながら五年、独立して専業になってから三十二年、計三十七年間、書き続けてきた。あらためて考えると、生まれた子供が立派な大人になり、その子の子供ができてもおかしくないような年月である。
それまでずっと仕事があり続け、自発的に休んだ一年間は別にして、病気で休むこともなかったのは、ありがたかった。
しかし
この先には、何がある? 2┃群ようこ
やめたとたんに体調は好転し、毎日、家でぶらぶらしてずーっと本を読んだり、レコードを聴いたりしていた。
だがそれを許さないのが働いている母と大学生の弟だった。再び「怠け者」と私を非難し、すぐに就職先を探せという。私は貯金を食いつぶしたら、探すつもりだったのに、早くしろと急かして、私の至福の時間を奪おうとする。
(金を貯めたら家を出てってやる)
と腹の中で毒づきながら、新聞の求人広告を眺めていた
この先には、何がある? 3┃群ようこ
独立思いがけず私は物書きになってしまった。
会社をやめる一年ほど前からは、昼間は会社、夜は原稿書き、取材がある仕事も受けていたので、土、日は取材と、休みはほとんどなく、睡眠時間は毎日三時間だった。
それから解放された私は、こんこんと寝続けた。思いっきり寝られるのって、何て素晴らしいのだろうと感激していた。
会社をやめて独立したとき、連載の仕事ばかりだったのはありがたかった。
まだ男女雇用機
この先には、何がある? 4┃群ようこ
私たち四人は徒歩で組事務所に行き、丁寧に招き入れられ室内を案内していただいた。どこもかしこも掃除が行き届いて磨きあげられ、ちりひとつなかった。和室に入った私が、
「ずいぶん照明が明るいんですねえ」
と天井を見ながらいったら、
「あはははは」
とみんなに笑われて、あれっと首を傾げたり、まるで高級料亭のように、美しく並べられているすき焼きの材料に目を奪われたり、私は、「はああ」「ほおお」と感心
この先には、何がある? 5┃群ようこ
新人この頃の取材は、スポーツ系と旅行が多かった。京都のお茶屋、プロレス、ゲイバー、そして海外と、あちらこちらに連れていってもらった。
京都のお茶屋では舞妓さんは他県から来ている人がほとんどと聞いて驚き、突然乱入してきたお茶屋の美人な娘さんが、人払いをしたあげく、「私は籠の鳥で将来をすべて決められ、こんな辛い人生はない」と嘆くのを、慰めつつ聞くはめになったり、ゲイバーでは新入りのゲイボーイが自衛隊