ブッダは究極のマイナス思考から出発した
濁世(じょくせ)には濁世の生き方がある————。コロナ禍で再注目された累計320 万部超の大ロングセラー『大河の一滴』(五木寛之、1998年刊)から試し読みをお届けします。
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毎日の暮らしのなかで、あまりにも人を無視した乱暴な扱いを受けることがある。なんてひどい連中だ、と腹から怒りがこみあげてくることもある。以前、共産党の独裁下の旧ソ連を旅していると、一日に何度となくそういう目にあったものだ。官僚たちだけでなく、ごく一般の庶民の端々にまで小権力をふりまわすいやな