《大洞窟のコウモリ》に関する能書き


Deep-Cavern Bat / 大洞窟のコウモリ (1)(黒)
クリーチャー — コウモリ(Bat)
飛行、絆魂
大洞窟のコウモリが戦場に出たとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーの手札を見る。その中から土地でないカード1枚を、大洞窟のコウモリが戦場から離れるまで追放してもよい。
1/1

 ご存じ、新イクサランの黒を代表する強力アンコモンです。書いてあるテキストに対して、実際に及ぼす効果の強さや、効果的な使い方に関する考え方は、少し突っ込んで場合を考えないと判りにくいのではないか? と思ったので自分の評価をnoteに書こうと思いました。

+コウモリが真にハンデスするもの


 なぜ強いのかを考えるに際しては、強さの比較対象がないといけませんが、スタンダードで考えるなら、比較するべきは《窃取》でしょう。

Pilfer / 窃取 (1)(黒)
ソーサリー
対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開する。あなたはその中から土地でないカード1枚を選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。

 シンプルなハンデスカードである《窃取》と《大洞窟のコウモリ》を比較することで、コウモリとは「1/1飛行絆魂が追加で出る代わりに、除去で手札が戻ってしまう」カードだ……という風に見えてきます。しかし、この理解は表面的なものです。実際のゲーム状況を考えないと、このカードの真の効果を理解したことにはなりません。
 後手2ターン目で、自分が《窃取》または《大洞窟のコウモリ》を使ったときの状況を考えます。キャスト後に見えた、相手の手札が次のようなものだったらどうでしょう。どのカードを魔法の対象にするか?

相手手札:土地土地土地土地 単体除去 3マナ生物

 こちらが使用した魔法が《窃取》ならば、除去とクリーチャーのうち、そのゲームで使わせたくないほうをハンデスすることになります。ここでは仮に、単体除去をハンデスさせることにしましょう。それによって、相手は、次のターンにこちらの出す3マナ生物を除去する手段を失います。

 では《大洞窟のコウモリ》ではどうなるか。これは、たいていの場合、3マナ生物をハンデスするのが正解のはずです。なぜならば、そうすることで相手に対し、半ば強制的に手札に残ってる単体除去を使わせる形になります。単体除去カードを、手札に二度と戻らない形で消費させることができました。《窃取》で単体除去を選んだときと、相手手札の状況が同じになって、こちらは3ターン目に安全にクリーチャーを出すことができます。
 これは、別に何のカードを選んでも最終的に結果が同じになります。例えば単体除去を《大洞窟のコウモリ》で抜いたとしても、それは次にデッキから引いてきた単体除去がコウモリに使われるだけで、最終的に手札から消えるのが単体除去1枚なのは同じです。
 わざわざ場に出した《大洞窟のコウモリ》で、チャンプブロックや特攻アタックをしませんよね? コンバットでは、基本的にコウモリは死なない。除去魔法1枚をほぼ確実に使わせます。イコール、コウモリが真にハンデスするのは単体除去魔法です。

 ただし、普通のハンデスとは違って、直接手札を墓地に送るのではなく、相手に魔法を使わせるというワンクッションを挟みます。これは、追加のテンポアドバンテージが得られる可能性があるということ。例えば、相手初期手札にが持っていた単体除去はソーサリーで(執念の徳目のような)、その魔法の為に相手は3ターン目を全部費やす必要があるかもしれない。もしそうなら、《窃取》よりも明確に得ているアドバンテージ量が多いですよね。直接除去をハンデスしてたら、そのターンは別の魔法が使われていたのだから。
 また、上の例示では、コウモリ出したらすぐ単体除去される状況を設定しましたが(そうなる前提で運用すべきだと思うので)、もしそうならなければどうなるか。相手がデッキトップから単体除去を引くまでの間、何ターンか1/1飛行絆魂が相手のクロックを刻みに行けますね。もちろんこれも、《窃取》に追加でライフアドバンテージを得ている換算になります。強い。

 というわけで、僕の考える《大洞窟のコウモリ》の真の姿はこうです。

「相手の除去魔法しか対象にとれない代わりに、追加のアドバンテージを取れるハンデス

 除去魔法しかハンデス出来ない、つまりよく採用される《脅迫》や《窃取》と違って、相手のコンボパーツみたいな真に重要な魔法を抜くことはできない。その代わり、2マナ魔法としては得られるアドバンテージ量が多い。そんな特徴を持つカードとなります。
 メガハンデスデッキを実際使うとわかりますが、《窃取》の対象が単体除去になること、別に普通にあるしね。割と《窃取》の上位互換ですよね。

+正しい認識で正しいカード運用


 さて、こうして《大洞窟のコウモリ》のことを《窃取》の上位互換と定義したわけですが、ここで問題があります。

 ぶっちゃけ《窃取》が弱いし、その上位互換のカード、別にそこまで強くはないよね?

 いやそうなんですよ。ハンデスって別に強くない。
 確かに、テンポアドバンテージはとれている。ハマればめちゃくちゃ強くて相手を成すすべなく負けにできる。ゲーム後半に引いてくれば相手の逆転手段を無に帰して勝つことがある。あるんだけれど、どうあがいてもハンデスで安定した勝率は無理なんですよ。だって相手のデッキトップ一発で全てが無になるから。めちゃくちゃ運依存。しかも自分ではない奴の運に依存します。
 ハンデス軸ではない黒単とかを普通に組んで、メインから《窃取》を積んでいくとしたら、それはまあまあの傾奇者でしょう? だいたいはハンデス入れるとしても《脅迫》をピン刺しとかサイド後とかで。だって、2マナなら《しつこい負け犬》のほうがどうしたって優先される。相手の手札を捨てさせるよりも、自分がドローしたほうが基本的に美味しい。

 あと、《大洞窟のコウモリ》にはもう一つ、他のハンデスには無い決定的な弱みがあります。それは、コウモリは単体除去魔法で除去されて初めて完成するハンデスであるということ。つまり、他の手段で破壊されると価値が大幅に減ってしまいます。コンバットは自分の意思で全部避ける以上、他の手段とは、主に全体除去です。
 コウモリは全体除去に弱い。
 ……おいおい、全除去に弱いって、その弱点あまりにも頻繁に刺さらないか? それが入ってないデッキと対戦しない日とかある?

 なので実は、手札破壊目当てだけで《大洞窟のコウモリ》を4積みとかするのは、正直ぜんぜん強くない。
 1/1飛行絆魂が出ると言ってもね、そんなの、他に何もないなら放っておけばいいんですよ。20回も殴られるまでには《太陽降下》か《兄弟仲の終焉》の一つも引くでしょうし。この1/1は基本的にチャンプブロックには使われない。飛行か到達が居れば殴っても来ない。別に居ても怖くないから、手札の単体除去を使ってもまで、さっきコウモリがハンデスした単体除去を取り戻す必要はない。
 ハンデスとしてのコウモリが別に強くないってことを、認識しているかどうかは、デッキ構築だけでなく、プレイングにも大きな影響を与えると僕は思っています。《危難の道》と《喉首狙い》のどっちかをハンデスするかと言われて、喉首を選んじゃうプレイヤーと、結構対戦するんですよね。いや~それは絶対に全除去だったんじゃないかな? 俺はお得だからいいけど~(返しのターンでセイレーンごとコウモリを全除去しながら)。

+《大洞窟のコウモリ》の相棒たち


 というわけで、単体のハンデスとしての《大洞窟コウモリ》は弱い。
 なので、このカードを強く使うためには、どちらかと言えばハンデス以外の部分、1/1飛行絆魂で得られるアドバンテージを最大化する必要があります。ハンデスとして弱くても、他が強ければ結果強いんですよ。そのためには、デッキにシナジーを生み出していく必要がある。

 新イクサラン内で定番の相棒は、やはり《地底のスクーナー船》でしょうね。
 騎乗1なので、出たターンでスクーナー船が起動できるし、探検が上手くいけば2/2や3/3の飛行絆魂に育てることができる。1/1は全除去引くまで放置してもよかったけど、2/2はちょっとクロックが厳しいです。先手2ターン目スクーナー船、3ターン目コウモリで相手の3マナを抜くとかできたら、最高ですよね。
 スクーナー船以外にも地図トークンギミックを持つカードとの相性は基本的に良好。《遠眼鏡のセイレーン》なんかもいいですよね。なんなら3つあわせて使いたいカード群って感じがします。

 似た動きが出来るカードとして、定番の《策謀の予見者、ラフィーン》もありますよね。
 スクーナー船と違って、殴るのはコウモリなので、絆魂のライフゲインを即座に得ることができます。しかもラフィーンは、敵側的にマスト除去対象ですが、ラフィーンに単体除去を使うということは、謀議で強化したコウモリがより長く生き延びるわけです。もちろんコウモリが先に除去られてラフィーンが生き延びてもいい……というか、どちらかというとそちらのほうが良いかな。次の謀議で新しいコウモリ引いてくることもあるわけですし。
 ラフィーンが入るということは、ほぼ間違いなく他にも定番の様々なシナジーも効いてきます。《婚礼の発表》や《忠義の徳目》の+1/+1シナジー効けば、やはりコウモリによるアドバンテージは増加する。

 あと特筆すべき点として、たぶん打ち消しの《かき消し》もデッキに入ってくるでしょう。僕はこれもコウモリと相性の良いカードだと思っていて。
 コウモリ対象の単体除去を打ち消すことができればもちろん美味しい……ってのもあるんですが、犠牲1の生贄にコウモリを使っていくのが、実は悪くないと思うんですよ。先述通り、コウモリは相手に除去されて初めてハンデスが完成するカードですが、《かき消し》犠牲1の打消しで何か相手の致命的カードを無に帰したならば、それはそれでハンデスが完成している形になる。しかもこの場合は、単体除去以外のカードをハンデスできたことになりますね。ゲーム後半に持て余しがちな《かき消し》が、ワンチャン勝利手段として活きてくると思います。

 他にもまあ、基本的にコウモリを強化できるカードであれば強いは強く、たまにSNSで俎上に上がっているのは見るのですが。
 コウモリは除去されることが前提なので、装備品、オーラ、賛助、役割エンチャントなどによる強化はリスクが高く、言うほど相性はよくないと僕は思います。成立はするんですけどね。結局ハンデスが不安定な上に、もう一個不安定な土台を載せてるというか。ハイリスクハイリターンな気がしちゃう。
 できれば置物や機体のような、コウモリが除去されても他への影響が残る強化カードでシナジーを形成したいですね。……あっ、でも、除去されてもテンポアドバンテージが取れればそれで十分ぐらいアグロに寄せてるなら、一考の余地はあるのかな?

+結局のところ強いのは何?


 それにしてもこうしてみると、相性が良いと思われるカード、青白っていうか、エスパーばっかりですね。
 結局のところ《大洞窟のコウモリ》が強いというよりも、もともと強かったエスパーのデッキに、ピッタリのカードが新しく追加された、という話じゃないのか。強いのはカードではなくデッキなのでは?

 自分でも実際にエスパーデッキに4積みしてみましたが、確かに出たら強いが、なんか勝ち負けが蝙蝠の有無に左右される感じがしないんですよね。コウモリ引けないゲームでも勝てるし、コウモリを引いても負ける時は余裕で負ける。
 《大洞窟のコウモリ》が禁止されるとか言っている人もいるけど、過大評価なんじゃないかな……。強さの正体が、ほかの最強エスパーカードありきです。それでいて、コウモリのせいでエスパー以外のデッキが駆逐されたとか無いわけだし。エスパーがTier1のデッキであることなんか、ネオ神河以来ずっとそうでしょ。
 次のスタンローテでのラフィーンほか様々なカードが退場したら、このカードもどうなることやら。いや探検、特にスクーナー船はずっと残るし、他の何か強い置物もでるだうから、さすがに見るは見るでしょうけどね。


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