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海外に自閉症の弟を連れて来ること

「海外に連れて来る」と言うのは少しエゴな言い方かもしれない。一時的な旅行として自分の住んでいる場所を紹介できる日があるか、とふと考えたことがある。もちろん弟が同意するのであれば。でも乗り越えるべき壁の数々が多すぎて踏みとどまってしまう。

まず、飛行機に乗った経験がない。生活経験が乏しい弟にとってはまずは国内線を経験して空港の雰囲気、飛行機の音、気圧の変化等の感覚を掴ませる必要がある。搭乗するまでの長い待ち時間、10時間座りっぱなしも初めての人には体にこたえるだろう。

いつもと同じルーティーン化した生活の方が落ち着く弟にとって衣食住環境の変化はかなり負担になる。泊まる家や観光に行く場所の写真を前々から見せて環境への事前知識を持たせる必要がある。環境が変わってもいつもと同じものがあった方が落くので、いつも読んでいる本、iPadなどを常備しておいた方が良い。無事着いたとしても、すぐに観光して回らず環境に慣らすことに時間をかけた方が良さそう。

事前に旅行計画を示して見通しを持たせることもしなくてはならない。どんな交通手段で、目的地にはどれくらいの時間が掛かって、どれくらい滞在して、昼食は何を食べて…。思い付きで目的地を変えてしまうと不安を煽ってしまう。

パニックやてんかんを起こすことも視野に入れなければいけない。普段は比較的穏やかで健康な弟だけれども、これだけの変化が一気に来たらそれが引き金になって何が起きてもおかしくない。

「弟も連れて遊びに来れば良いじゃない?」って周りは軽々しく言うけれどそうは行かない。耐えることが目標になる旅行になるのでは本末転倒だからだ。実現させるには長い準備と綿密な計画が必要である。できないことにばかり目を向けてはいけないものの、戸惑ってしまう理由はここにある。海外同行したきょうだいのお話が聞けたら聞いてみたい。

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