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バンドを組み立てる残像|毎週ショートショートnote

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僕はちいさな頃から音楽が好きだった。
ことや尺八、三味線、習うものはすべて楽々習得できた。親が日舞を教えているため、和楽器しかふれさせてもらえない。

黄昏どき。レールから一歩はずれてみたくなり、習い事をさぼってみた。ドキドキしながら薄暗い路地に足を踏み入れる。なんの店かわからない、ちっぽけな店舗が軒を連ねていた。
「バンドを組み立ててみませんか」
窓辺に座っていた人形が、そう語りかけてきた。吸い込まれるように、僕はその店をえらぶ。

木の香りが歓迎してくれた工房は、針金や木くず、布きれ、アルミの板なんかで雑然としている。道具類は壁にきっちりとおさまっていた。
アコーディオンやトランペットを奏でる旅の楽団。観る人々を、生き生きとした動きと見えない音楽で癒やす。
僕は今、操り人形の制作に没頭している。ここが親にバレるのは時間の問題かも。
もう操られるのは、御免だ。

(おわり)

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