カクちゃんのホラ吹き日記 お見合い

28歳、失恋の果てに、母は祖母の友人の伝手で、ある男性とお見合いをすることになった。

決してハンサムではなかったが、純朴そうでとても良い人だったという。
周りの大人が皆、口を揃えて「この人と結婚しなさい」と言った。

しかし、
そのとき、母の頭の中である言葉が浮かんだ。
「あたしと結婚したら、この人がかわいそう。」

なぜかそう思ったらしい。

結局、母は周りの反対を押し切り、この人との縁談を断ってしまった。

一年後、母はカクちゃんとお見合いをすることなるのだが
1980年代のお見合いデートで、民族博物館のチケット代を出し渋るカクちゃんに対して、

「この人がかわいそう」など、1ミリも思わなかったという。

カクちゃんから縁談を断ってもらうため、いかすみスパゲッティでお歯黒になった母の努力も虚しく、そのまま縁談はまとまってしまった。

もし、母がもっと自分に自信があったら、
人を好きになることに諦めを感じていなかったら、
このカク家の歴史が始まることはなかった。
そして、この日記が人の目に触れることもなかっただろう。

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