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息子の病と...この10年②

✴︎日常生活がスムーズに送れなくなった息子。
生きる為に必要な【食べる】事すら出来なくなってしまった。

幼稚園時代のお弁当箱を引っ張り出し
色んな食べ物を詰め込んで...2階の部屋に持って行く。

「竜ゴロ...これだけでもええから
食べてよ...」
絞り出すようにそう言って、小さな小さな弁当を置く。
息子は布団を被ったまま返事もしない。

食べなくなって何日が経つのだろう...
このまま2週間先の受診まで待つなんて...

正直、この頃の記憶は私の中でも曖昧で...
記憶の糸を手繰り寄せるけれど...大きな何かが抜け落ちているかもしれない。

食べない➕眠らない
息子の生きる為に必要な日常生活は
とうに壊れていたのだ。

私は病院に電話をした。
「息子が死んでしまう!
助けてください...」 
絞り出すように...確かそんな事を言った気がする。

外来看護師から主治医にその旨伝えられ
「精神症状に身体症状が加わると
それは良くありません...すぐに受診を。」と言われた。

職場に事情を話し、有給をもらって
すぐに受診。

その時に主治医から告げられたのは
「お母さん。
息子さんは統合失調症のようです。」というものだった。
前にも記したが、私は看護師をしている。

看護学校時代に精神科の病について学んだ。
当時統合失調症は【精神分裂病】という病名で、しかもその病気の内容が【人格が壊れていき、再起不能の病】というものだった。
精神科の病院に実習に行った際、入院患者の多くがその【精神分裂病】で驚いたのを覚えている。

数十年後にまさか我が子がその病になるなんて...当時の私は夢にも思っていなかった。

座っていた椅子から転げ落ちた私を
娘が必死で抱え上げてくれたのを...ぼんやり覚えている。

その時処方されたのは
ほんの少しの黄色い粉薬。
ぼんやり見つめながら
途方に暮れて...

真っ暗な出口のないトンネルに入ったような気がして、涙も出なかった。
どうやって帰ったのかすら覚えていない。

その日から
息子の病...【統合失調症】との格闘の日々が
始まった。

        つづく

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