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雨だれと岩井俊二監督の話

5月27日の8時30分
私の住んでいる地域ではしとしと雨が降っている
こんな日に聴きたくなる曲がある

ショパンの「雨だれ」である

クラシックは能動的に聴かない、耳馴染みのある曲も題名はほとんど分からない
そんな奴だが、ショパンの雨だれだけはふとした瞬間に脳内再生され、youtubeで音源を探し、しみじみと聞き入ることがしばしばある

なぜか

それはとあるドラマで使用されていたからだ
主題歌ではないが、ドラマの世界観を表現するための一装置として使用されており、綺麗でもの哀しげな映像と相まって印象に残っている
作中ではショパンの雨だれが存在する世界と存在しない世界の住人が、音楽室でこんな会話をするのだ

「なんて曲?」
「ショパンの雨だれ」
「”ショパンの雨だれ”…」「モーツァルト?」
「いや、ショパン」
「ショパン……知らない」「でもいい曲ね」

放課後の夕日が差し込む音楽室に鳴り響くショパンの雨だれ
ストーリーが進み、視聴者的に少しずつ登場人物たちの置かれている状況が分かってきたころに流れるワンシーンだが、何度見ても胸がぎゅっとなる

このドラマのもの哀しさと雨だれが結びついてしまい、本来の雨だれの解釈は知らないが、私の中で雨だれ=もの哀しい、朝のしずけさ、しとしと雨、誰もいない放課後、夕方のチャイムのようなイメージとなった


このドラマを視聴したきっかけは
監督が「岩井俊二」さんだったからだ

岩井監督との出会いはおそらく「リリイ・シュシュのすべて」だったと思う
視聴当時はGEOに行き、映画を4~5本借りるのが日課(正しくは週課)で
選定基準は色々だったが、この作品は別作品に入っていた予告に惹かれたんだか、タイトルに惹かれたんだか、はたまた適当に借りたんだか覚えていないが、”ルーティンワーク”の一環で視聴に至った

内容は終始鬱々としており、友人や家族には勧められない、観てよかったとも観なければよかったとも思わないそんな作品だった
といいつつ、3回は視聴したと思う
登場人物たちと同世代だったため、同じではないが当時抱えていた”生きづらさ”みたいなものが共感できたんだろう
作中リリイシュシュの音楽が好きになり、歌っているのは誰だ?作曲しているのは?と検索していくと、作曲者や歌唱者の別の曲に触れることもでき世界が広がった思い出だ

ちなみに作曲者は「小林武史」、歌唱者は「Salyu」である
CMの曲などで耳馴染みのある方もいるのではないか
興味のある方はぜひ
映画のほうはメンタルが安定しているときに視聴することをお勧めする

さて、岩井監督との出会いに話を戻すと、
その後スワロウテイルやら花とアリスやらLove Letterやら、もう覚えていないがその他岩井作品を視聴するようになる
その影響でCHARAが好きになったり、共通して出演している俳優をチェックするようになったり etc…
青春時代に彩りを与えてくれたのは間違いない

どのタイミングだったか覚えていないが、岩井監督の映像美に惹かれる瞬間があった
芸術的なことも技術的なことも専門的なことも分からないが、ストーリーの好き嫌い関係なくこの監督の撮る映像が好きだなと思ったのだ
例えとして適切か怪しいが、蜷川実花さんの作品を観たときに作者を見なくても蜷川さんの作品と分かる感覚が岩井監督作品にもあるのだ

いや、特に検証したわけではないので、私は岩井監督かどうか目利きができる!と言いたいわけではなく、CMやMV、短編映像などでこの映像いいな~と思って調べると岩井監督に行き着くことが何度かあり、監督作品にある共通項のようなものを感じているのではないかと思う
音の好き嫌い、造形の好き嫌い、ストーリーの好き嫌いは当たり前の感覚としてもっていたが、よもや映像にも好きかそうでないかがあるとは思わなかったため、新しい発見であった

そして冒頭のとあるドラマに戻る
岩井監督のドラマをリアルタイムで観ることが初めてでとてもわくわくしていたのを覚えている
周りに観ている友人もいなく、面白さを共有できなかったが、今でもふとした瞬間に思い出す好きな作品である

好きな作品・好きな監督であっても常に意識しているわけではない
10年後20年後に「あの頃は何が好きだったっけ?」となった時のために
ここに記しておく

おわり

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