💿『弦楽セレナーデ』チャイコフスキー＆ドヴォルザーク

指揮：ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏：ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音：1980年　

【曲目】
１.『弦楽セレナーデ　ハ長調　op.48』チャイコフスキー(1840～1893)
２.『弦楽セレナーデ　ホ長調　op.22』ドヴォルザーク(1841～1904)

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セレナーデ？　セレナード？

ドイツ語でセレナーデ、フランス語でセレナード、イタリア語でセレナータ、英語でセレネイド、国によって呼び方は違いますが、ふつう夕べの戸外で愛する人や高い身分の人のために演奏する「音楽でのご挨拶」のことを指します。日本では「小夜曲」として知られています。

チャイコフスキーの弦楽セレナーデ

チャイコフスキーはロシアの作曲家で当作品は彼が40歳の時に作曲されました。敬愛していたモーツァルトの精神に立ち返るという強い内発的動機がきっかけでした。

「あー、最近の音楽ってのはみんな商業的でさ、なんか、こう、なんていうか、あれだよ、ほら、つまりどれも商業的なんだ」

彼は譜面にペンを走らせて、芸術的価値を見失わない一曲を書き上げました。翌年、サンクトペテルブルクで初演を迎えた彼は拍手喝采。第2楽章のワルツはアンコールでおかわりなど華々しいデビューを飾りました。

ドヴォルザークの弦楽セレナーデ

ドヴォルザークはチェコの作曲家で当作品は彼が33歳の時に作曲されました。それまで彼は貧しく満足に作曲に打ち込むことができませんでした。しかし、オーストリアが国家をあげて若い芸術家のための奨学金を公募し、そこで彼は見事合格を勝ち取り、晴れて作曲に専念することになりました。

「めっちゃええわ。金あるってめっちゃええわ。嫁も最近なんか優しいし、子どももパパって呼んでくれるようになったわ」

彼は10日あまりで一気にこの曲を書き上げました。曲全体を通してカノン（追複曲）が用いられ、ヴァイオリンがヴィオラ・チェロ・コンバスを追いかけたり追いかけられたりしながら、全体的に調和がとれた優しい仕上がりになっています。

2人の親交

また、この二人は同世代で同時期に活躍したこともあり、親交があったといいます。1888年のプラハで二人は初対面を果たします。意気投合した二人は毎日のように会い、食事を共にしたり、夜が更けるまで一緒に音楽を聴いていたとのことです。

「いや～チャイコフスキーさん、ほんまにえらい遠いところからおいでなさって、ささ上がって、あっ、すいやせん、検温とアルコールはこっち側でおねげぇしますわ」
「おー、わりわり。てか、チェコってのはなんか、なんていうか、あれだな、将来スロバキアと一緒に独立しそうだな」
「何をおっしゃいますの、チャイ兄さん。そんなけったいな話ありますかいな」
「あと、お前、少ししたらアメリカに渡るぞ。そこで、なんていうか、あー、つまり、ほら、あれだ、すげー交響曲と弦楽四重奏を書くぞ」
「いやあ、チャイ兄は変わった人や。この国を愛してやまへんワテがなんでまたそんな異郷の地に行かなあかんのです？　ワテはこのチェコに骨を埋めるって決めてはるんで」
「金だ」
「荷造りしてくきますわ」

対面の五年後、チャイコフスキーはこの世を去り、時を同じくしてドヴォルザークは交響曲の金字塔『新世界より』と弦楽四重奏の傑作『アメリカ』を世に送り出しました。

まとめ

月日が流れ、二人の『弦楽セレナーデ』が一つのアルバムに集約されました。どちらの弦楽セレナーデも感性があり、ロマンがあり、ドラマがあります。じっくり部屋で聴くのもいいですし、出先で目の前の風景に重ね合わせてみるのもいいでしょう。もちろん夕べに窓際で聴いてみるのもいいかもしれません。今までもこれからもわたしのお気に入りの一枚です。

チャイコフスキー&ドヴォルザーク:弦楽セレナード