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【発売前】ゾナウ文字を考える【ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム】

※発売前の考察です。
※結論から言うと、解読には至りませんでした!本記事は現在の考えをまとめたものになります。言語学について全くの素人ですが、この考察が皆様のゾナウ考察の一助となればと思います。
※【2023/5/14追記】ゾナウ全14文字をまとめたノートを書きました。また本記事は、あくまで発売前の仮説としてお読みいただければと思います。


ゾナウ文字とは

 『ティアーズオブキングダム』の前作となる『ブレスオブザワイルド』(2017)には3種類の文字が登場した。ハイリア文字、ゲルド文字、そして古代シーカー文字である。この3種類の文字はいずれもアルファベット26字と対応しており、すでに解読されている。

 ところが、ティアーズオブザキングダムの発売前トレーラーの中で、新たな文字が発見された。ゼルダシリーズ史上、これまで確認されたことのない文字である。
 文字は、『ティアーズオブザキングダム 1stトレーラー』(2023.3)内で、ゾナウ文明の特徴を備えたレリーフの隣に刻まれていたことから、以下「ゾナウ文字」と呼ぶことにする。

ゾナウ文字の特徴

文字数が少ない。

 この文字最大の特徴は、その文字数の少なさである。たったの11文字しかない。この文字数の少なさゆえに、アルファベットなどの既存言語との紐付けは難しく、発見されてから半年以上たっても未だ解読されていない。

発売前に、公式動画などから作成した一覧(筆者手書き)


 ちなみに、私はまだ解読を諦めていない。なんと、世界最少の文字数の言語である「ロトカス語」は、ゾナウ文字と同じく11文字らしい。
 まさかロトカス語と対応しているとは思いたくないが、11文字のみで表現できる言語世界があるのであれば、ゾナウ文字考察にもまだ光があるのではないだろうか。

※この考察を書いている最中、公式Twitterで新たなゾナウ文字らしきものを確認することができた。しかし他史料では確認できないことから、その場一回限りの文字とみなし、ひとまず一覧には加えないこととする。

【2023.5.14追記】全14文字でした。

書体のモデルは、漢字の祖先か

 次に、字形と書体に注目してみよう。

  • 一文字の大きさが均等

  • やや縦長の長方形に収まる

  • 「へん」と「つくり」に分かれる

  • 曲線を主体とする

 この特徴から、ゾナウ文字のモデルは、漢字の古い書体である「篆書」ではないかと考えている。篆書は、今から約2200年前の中国で生まれた書体であり、現在は筆記手段としては用いられないが、印鑑の書体などで使われている。

参考:有- ウィクショナリー日本語版

書体が変化するときがある

 ここで、『ブレスオブザワイルド続編 E3 2019出展映像』(2019.6)を見てほしい。

 映像から、緑色の光が1筋の螺旋を描いているのがわかる。注目したいのは、この緑色の光が絡まり合い、何らかの"記号"を示しては、また解(ほど)けるように変化していることである。

※2019年に映像が発表された当初、「この記号は何らかのゼルダシリーズ特有の文字を表しているのではないか」という仮説が生まれ、多くの人が解読を試みた。一筆書きのように変化するその特徴から「ゲルド文字ではないか」という説もあるが、明らかにゲルド文字にはない新たな文字も見られるため、私は「ゾナウ文字と似て非なる文字」と考えている。この文字については後述したいと思う。(以下「緑文字」)

 この「文字の変化」という現象は、ゾナウ文字についても見られる。

ゾナウ文字の変化。両端は筆者の手書き、中4つは公式資料である。

 この文字は、資料によって左下の表現が異なる。2種類の異なる文字なのか。それとも1つの文字の変化した姿なのか。それを考えるヒントが、漢字の書体の歴史にある。

「日」という漢字の成り立ち(参考:日- ウィクショナリー日本語版)

 漢字は約3500年前に誕生して以来、いくつかの書体の変化を経て、現在私たちが使う書体(楷書)となった。それは筆記用具の進化という技術的な面、そして文字の持つ政治・社会性によるものである。
 「日」という漢字は、甲骨文字の時点でかなりの抽象性があり楷書と似通っている。ここで見てほしいのは、金文の「日」から篆書の「日」への変化である。金文で、「○に点」と抽象化された太陽は、篆書になると「口に横棒」と変化している。つまり、点は横棒となるのである。

 改めて、先ほどのゾナウ文字を見てみよう。左下の表現は、「◯に点」だったり「夕」だったりする。しかし漢字の例を参考にすると、これはあくまで書体の変化であり、2つは同一のゾナウ文字であると考えられる。

 この書体の変化は、ハイラル文字や古代シーカー文字などには見られない特徴である。ほかにこの特徴を持つ文字としては、ゲルド文字や緑文字がある。

【仮説】 緑文字からゾナウ文字へ進化した?

ティアーズオブザキングダム公式サイトのトップ画面

 緑文字をはっきり確認できるのは2ヶ所である。E3 2021の映像と、この公式サイトのトップ画面である。

 見ていただきたいのは、真ん中の行である。3文字ともゾナウ文字を崩したものに見えないだろうか。かなり形が崩れているものの、へんとつくりの関係や、穴の空いた特徴的な形などがわかりやすい。

 そうすると左右2行の緑文字も、現時点では判読できないが、もしかするとそれぞれゾナウ文字に対応しているのかもしれない。これらの緑文字は、E3 2021の映像にも出てくるので、あの1筋の緑光は、絡まり解けながら1つの記号を成し、ゾナウ文明の中で単純化・簡素化され、やがてゾナウ文字という書体になっていったのだろうか。

崩れているが、同じ文字…?

ゾナウ文字の史料

史料の特徴

 まずは史料の特徴から確認していこう。

  • 固い石板に刻まれている(例外:タイトルロゴ)

  • 石板は円形(例外:1stトレーラーのレリーフ)

  • ゾナウ遺跡、もしくはゾナウ遺物

 タイトルロゴを除いて、ほとんどは固い石板に刻まれている。しかも円状になっていることが多い。ブレワイのゾナウ遺跡は石で作られており、そこには円・渦巻きの模様が見られることから、これらの石板はゾナウ遺跡内にあると考えられる。

配列の特徴

 ゾナウ文字の解読が困難な原因は、文字数が少ないことにある。そこで配列の規則性から、解読の糸口を見出そうとした。
ここで、ゾナウ文字の史料一覧を見ていただきたい。

制作途中のゾナウ文字史料一覧。他と共通する配列がある場合は色をつけた。

 これまで公開されてきた公式トレーラーなどに登場するゾナウ文字をまとめた。不鮮明なところが多く、完全に判読不可な文字は「〼」とした。一方、一部分しか見えていない文字でも、文字の特徴から類推できる場合には〼としていない。

 そして、他と共通する配列があった場合は、特定の色をつけた。この色の付け方はまだ整理していないため、一旦、色がついているかついていないかのみ見ていただきたい。
 そうすると、色がついていないグループが浮き彫りになっているのが分かるだろうか。これらは『1stトレーラー』に出てくるゾナウ文字である。

配列の規則性

1stトレーラーのゾナウ文字(規則性なし)

 1stトレーラーでは、冒頭から物悲しいピアノとともに、異形の人物のレリーフが現れる。異形の人物の周りには7つの勾玉。そしてトレーラー終盤では、頭上に2つの勾玉が光り輝く中、異形の人物は長髪の女性と互いに手を合わせている。
 おそらく歴史を後世に伝えるために作られたレリーフ。その横には、ゾナウ文字による文章が書かれている。

1stトレーラーの2つのレリーフ

 先述したように、この2つのレリーフの文章は、他のゾナウ文字史料と共通する配列がほとんど見られない。おそらくレリーフの場面に関する重要な記述と考えられるだけに、解読の糸口が掴めないのが悔しい。
 青マーカーを引いたところは、5文字に渡る共通部分である。何らかの固有名詞だろうか。

タイトルロゴの7文字(規則性あり)

 タイトルロゴの二匹の龍にも、ゾナウ文字7文字が読み取れる。

タイトルロゴと有機EL。同じゾナウ文字の配列である。

 タイトルロゴのみでは不鮮明であったが、有機ELの表面からはっきりとゾナウ文字が読み取れた。この7文字の配列は、重要な配列と考えられる。

 タイトルロゴの7文字に似た配列は、主に3rdトレーラー内に見られる。特にゼルダのいる神殿(?)のゾナウ文字に注目してみよう。

3rdトレーラー 1分52秒付近

 2つの歯車が回転すると、真ん中の橋がゆっくりと降りてくる。この場面にはたくさんのゾナウ文字が登場するが、その配列はほとんどタイトルロゴの7文字の配列と同様である。
 ここで、タイトルロゴとこの神殿の共通点を考えてみたい。タイトルロゴは「2匹の龍」が互いを噛み合うように重なっている。そしてこの神殿は、「2つの似た歯車」が噛み合って回転している。左の歯車に比べて、右の歯車は刺々しい装飾があるのが特徴的だ。
 私は、ティアキンでは二者対立もしくは共闘の歴史が描かれるのではないかと考えている。もしそうだとすると、この神殿は「2つの歯車がある」「タイトルと同じゾナウ文字が刻まれている」という点から、両者にとって重要な場所なのではないかと推察できる。

 3rdトレーラー内の別の場面も見てみよう。

画像は公式サイトより。同じ場面だが画質が良かった。

 緑の光を体内に巡らせたゴーレムが、壁から出てこようとする場面である。ゾナウ文字はその壁の円状の枠に刻まれている。全部で8文字。ほとんどタイトルの7文字の配列と同じだが、1文字だけ追加されている。水色マーカーで色をつけた文字だ。
 重要と考えられる7文字の配列に1文字加えられているという事実は、解読のヒントとなりそうであるが、今はまだ分からない。

配列の2つのグループについて

 以上を踏まえて、もう一度一覧図を見てみたい。

 ゾナウ文字の配列には2つのグループがある。タイトルロゴの7文字を元にしているか、そうでないかである。タイトルロゴの7文字を元にした場合は、多少文字の追加・置き換えがあったとしても、基本的には規則性を持って配置されている。しかし1stトレーラーの文章のように、タイトルロゴの7文字を元にしていない場合は、規則性を確認することができない。

【仮説】7文字は「七人の英雄」を意味するか

 1stトレーラーに7つの勾玉が出てきたことから、ゲルド地方に伝わる「七人の英雄の伝説」が注目されるようになった。

1stトレーラーより。異形の人物の周囲に7つの勾玉が浮かんでいる。

 「七人の英雄」の伝説については、ブレワイの祠チャレンジにて、ゲルド族考古学者ロテインから詳しい話を聞くことができる。

・『我ら七人の御霊 正しく導きし者 勇者の試練への 資格を与えん』
・英雄達は1つの大きな力を「心・技・耐・知・飛・動・柔」の7つに分けて、それぞれが各々の力を担っていた

https://i-njoy.net/zdbw_ye04.html

 ロテインによると、英雄たちは1つの力を7つに分けていたようだ。これをゾナウ文字に対応させてみよう。

ロケットは、公式twitter動画内より。

 そうすると、公式サイトのロゴの真ん中の行は、動 知 耐……一体何に耐えるのだろうか。そしてロケット表面に刻まれていた文字は、心 飛…………たしかに飛ぶところだけは合っている……

 ゾナウ文字の解読に繋がるかは確かでないが、この「七人の英雄」の伝説がティアキンに影響していることは期待できそうである。本作の重要キャラクターであるガノンドロフはゲルド族出身であり、そして、この七人の英雄伝説には「隠された八人目」という謎の伝承も残っている。
ブレワイではわざと謎を謎のままにしておくことで世界に奥行きを見せているのかと思っていたが、ティアキンへの伏線だった可能性も否定できない。

最後に

 ここまで、文字の特徴、配列の特徴から2つの仮説を立てた。

  • 緑文字は、ゾナウ文字へ変化した。

  • タイトルのゾナウ7文字は「七人の英雄」と対応している

【仮説】ゾナウ文字は漢字と対応している

 ゼルダシリーズにおいて、「解読できない文字」はないと考えている。それは公式に対する私の信頼から来るものである。これほどまでにすっきりとバランスの取れたゾナウ文字が「実は適当に作りました〜」とか公式に言われたら、もうひっくり返って気絶してしまうかもしれない。

 解読済みの過去のゼルダシリーズの文字は、アルファベット対応か、平仮名対応のいずれかであった。ではゾナウ文字は何と対応しているのだろうか。
もし現実世界の文字と対応しているのであれば、もう「漢字」しかないのではと私は思っている。

 漢字は「1つの文字が複数の音・複数の意味を持つ」という特徴がある。例として「日」という漢字を見てみよう。

 組み合わせる語によって、「日」が様々な音・様々な意味に変化していることが分かるだろう。たった一文字でこれだけの意味を表す。私たちの身近でそのような特徴を持つ文字は漢字しかない。

 ゾナウ文字は11文字しかないが、もし漢字だったとすると、組み合わせ次第で多様な意味を含ませることができる言語だったのではないだろうか。発売までの残り期間はこの仮説という妄想をさらに広げることに使いたいと思う。

参考サイト等


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