2022.5.1

どうかわたしのことを忘れないでいてください

あなたの屋根裏部屋の片隅に、二番目のひきだしの中の、モンシロチョウの標本と一緒に

わたしの小さな欠片をしまっておいてください

それはわたしのいちばん綺麗な宝石なんです

あなたにあげた、最後のわたしです

あなたのなかにある、いちばん綺麗なわたしです

だから、幾度となくやってくる重苦しい冬を振り払い、憂鬱な春の訪れと共に思い出してください

屋根裏部屋の二番目のひきだし

モンシロチョウの標本と、わたしの泪のかたち

あなたの指が埃を払う時、やっと私は輝きを取り戻すのです

いえ、わたしが輝いたことなんてありませんでした

だから、どうかお願いします

私はその時だけ、あなたの屋根裏部屋の三角窓の光の中に、艶やかなる過去に、春の息吹たちと共に生きることができるのです

かつてわたしが生きていた時よりもずっと、軽やかに生きていられるのです、輝きを得るのです

だからどうか、どうか

わたしを大事にしまっておいてね

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