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無題

僕だけの朝
僕だけの空
僕だけが知っているのに
紛い者の太陽は
宇宙をひとつ奪い去っては嘲る
でも君が掴んだそれは紛い物なんだ
詰まらない黒い靄 臓腑の錆
思い出も失せた幻
とても残念だよ
さようなら 僕の誘蛾灯

僕だけの本物は
誰にも秘密なんだ
虚しい烏鷺の中に
惑星の粒をためて
彼らのひそひそ話に耳をそばだてる
ただそうやって うっとりしていたい

飴細工みたいな螺旋を織る
天に昇ることばかり考えて
根を張ることや太い幹を作り損なった
あまりに脆弱だけど
ヒビは太陽が溶かしてくれたよ
懐かしいべっこう色に
甘美だけど 見詰め過ぎてはいけない

月は寂しさをたたえながら
どんな時も僕と共にある
僕の友人 憧れ 悲しみ
君が手折られてしまった羽を癒してくれる

もう何も
もう何も分かりたくない
ここに居てはいけないかい
さもしい愚かな僕を
許しておくれ 
子供のようだと
そう笑っておくれ
青白いその手を
さあ おかけになって

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