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予感

君とは道を違えるだろう
いや既に 君の踏み出した一歩
その爪先は東の方向へ
ぼくは西へ
道を違えたのだ
辛く寂しい
違えたというのに ぼくが縋り付きたいのは君だ
ぼくだけの滑稽な予感か
君だけの些末な優越感か
いつまで肩を触れ合わせ
同じ信仰を抱けるのか
もう既に 君はいない
君はぼくの道しるべで待っていてはくれない
しかし ただひとつの運命に向かって生きることは
君にもぼくにもできないように思う
本当の孤独には耐えられないだろう
時に火の前に身を寄せ合い 食事を共にする
そういう喜びやまやかし 生の誘惑が必要だ
敏感に互いの孤独を嗅ぎ取り
別離の予感を覚えながら
あたため合ったのだと 愚かな喜びに浸ったのだと
信じたい
ぼくは君を覚えていよう
いつまでも
憎らしい君を
ぼくのただ唯一の人は
君でもあるのだから
ああ 君は忘れるだろう
憎らしい君を 縛り付けて
ぼくの暗く湿気った青い洞窟へ連れ帰るのだ
いつまでも水の中で
繋いでいよう
恐ろしい優しさと停滞の中で
ひとつになろう
君もぼくも 消えてしまおう
冷たく魅惑的な氷の墓標
何もない もう何も生まない
永遠だ
そんな夢想をするのだ
辛く寂しい未来の道の半ば
君の影が付き纏い離れず
ぼくが君を殺めるまで 永遠に

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