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ビジネス法務・最新号(2023年10月号)

最新刊のビジネス法務(2023年10月号)が発刊されました。

ひと月が経つのは本当に早いですね(汗)

今月も、最新のビジネス法務について、IT企業法務の観点から注目記事を簡単に紹介します。



注目記事①『実務解説 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)の解説』

いわゆるフリーランス新法に関する解説記事です。

フリーランス新法は、発注者に比べて弱い立場にあるにもかかわらず、労働法や下請法等による保護の及ばない個人事業主(フリーランサー)を保護するための法律として制定されました。

例えば、採用業務やプロダクト開発業務のアウトソーシングで個人事業主(一人会社)を利用しているIT企業も多いのではないでしょうか。

下請法は多くのIT企業法務においてコンプライアンス対応がマストですが、これに加えて、フリーランス新法の対応も行っていかなくてはならないこととなったのです。

この記事は、施行を間近に控えた企業法務パーソンにとって、フリーランス新法の概要を理解するのに役立つものとなっています。

ビジネス法務2023年10月号・45頁(野田学先生・白石紘一先生執筆記事)より

フリーランス新法の注意点は、適用される「業務委託」の範囲が下請け構造にない取引(採用業務の委託といった、他社に提供することを目的としない役務の提供委託)も含み、広範なアウトソーシングが対象となることです。

今後、公取委や厚労省令、政令、ガイドラインでフリーランス新法に関する規律の詳細が具体化されていくこととなります。
その前提として、フリーランス新法が「誰と誰の取引に適用されるのか」、「どのような対応をしなければならないか」「いかなる行為が禁止されるのか」、といった概要をつかむことは大切です。

以前の投稿で、法律知識のアップデートにビジネス法務はオススメ、としました。
この記事はビジネス法務が「フリーランス新法」という新たな法制度のインプットに役立つものとなっています。

注目記事②『特集1 Change Your Mindset. 「法務英語」徹底攻略法』

IT企業法務に携わっている法務パーソンの皆さんは、英文契約のレビューやGDPRやCPRAといった外国法の調査・検討業務に携わる(あるいは関わらざるを得ない)方も多いのではないでしょうか?

今月号では、「法務英語」徹底攻略法として法務英語にどのように取り組めばよいか、という点について特集が組まれています。

この特集において個人的に面白いと感じたのは「法務部員のための英語コミュニケーションの勘所」でした。
この記事では、社内/グループ内コミュニケーション(Ⅱ)、外部弁護士とのコミュニケーション(Ⅲ)、取引先等の第三者とのコミュニケーション(Ⅳ)に場面分けをして、英語でのコミュニケーションの勘所が解説されます。

例えば、第三者とのコミュニケーションにおいては、

とにもかくにも相手方からは「自社を代表する立場」として見られている意識が重要である、特に法務部員は、社内の役職がどうであれ、社内調整済みの枠内にてコミュニケーションする立場と客観的に見られているため、自身の伝達内容が社としての最終的な結論として見られる危険を常に秘めている。よってコミュニケーションに含まれる情報の種類・内容を事前に関係部門と多角的に検討するなどの慎重さが求められる。

ビジネス法務(2023年10月号・23頁)柴田純一郎先生の記事より

これは、英語だけでなく、日本語におけるコミュニケーションでもそのままあてはまるのではないでしょうか。

英語によるコミュニケーションの方法にフォーカスした記事だからこそ、日常における仕事においても学ぶところの多い記事だと感じました。

加えて、この記事では英文契約についての解説の記事(「英文契約書の基礎知識と基本構成」「英文契約書レビューのポイント」等)もあるので、英文契約に携わる方にとって、改めて英文契約の基礎を復習することができる内容となっています。

注目記事③『新連載「周辺学」で差がつくM&A』

M&Aに関わっている法務パーソンは少なくないと思います。

M&Aをテーマとしてその周辺学について解説が新連載として始まります。

M&Aに限らず、企業法務全般において、良い仕事をするために周辺学は不可欠だと思います。

つまり、法務の仕事は「法律知識だけ」あれば足りるのではなく、財務会計、情報セキュリティといったハードスキルだけでなく、いかにコミュニケーションスキル駆使して社内調整をこなすか、プロジェクトマネジメントを遂行するか、といったソフトスキルまで、多様な周辺学が求められるのです。

そして、M&Aは、法務を含め、多様な専門知識が要求されるプロジェクトの典型例ではないでしょうか。

今回は、初回ということであくまでこれからの連載の概要でしたが、M&Aで実績のある著名な西村あさひ法律事務所に所属する山本晃久先生の記事となるので、これから楽しみにしたいと思います。

ビジネス法務(2023年10月号) まとめ

2023年10月号も、今回紹介した注目記事に加えて、法律英語の攻略法(特集1)や語学の習得に関するリスキリング(キャリアアップのための法務リスキリング)、フリーランス新法、さらに、法務として珍しい「税務紛争」の対応についての特別企画といった多様なトピックがとりあげられていました。

毎月のビジネス法務をチェックするだけで、法制度のアップデートや最新のトピックを学ぶことができます。

法務の仕事は日常的に発生するため、なかなか自己学習の時間を取れない方が多いのではないでしょうか。

そんな方は、「自分の関係のある分野の記事を中心に読む」、「新たな法制度についての記事を探す」、「お気に入りの連載だけは丁寧に読む」、といったテーマを決めて、ビジネス法務を読むことをお勧めします。


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