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2023年7月号のビジネス法務

前回の記事で紹介したビジネス法務ですが、最新刊である2023年7月号が出ました。
この記事では、7月号で読むべき記事を、IT企業法務の観点からランキング形式で私の感想を記載したいと思います。
ちなみにランキングは完全私見ですのでご容赦ください(笑)

ビジネス法務7月号・注目記事ベスト3

3位:ChatGPTの社内利用に伴う法的リスク・対応(角田進二)

みなさんはChatGPT、すでに使ってみましたか?
その精度の高さと賢さに驚かれた方も多いと思いますし、すでに仕事でも使っている方もいるのではないでしょうか?

ChatGPTはプロンプト(ChatGPTの入力欄に入力する内容のこと)としてデータを送信するため、データの第三者への提供や、プロンプトに個人情報が含まれる場合は個人情報保護法の論点、さらに、機密情報を含む場合には不正競争防止法やNDAの秘密保持義務に注意しなければなりません。
プロダクトサイドからChatGPTとのAPI連携の相談を受けている法務部員もいると思います。

この記事では、ChatGPTの社内利用に伴う法的リスクがわかりやすく説明されており、とても参考になりました。

2位:「食べログ」判決を分析する 優越的地位の濫用とアルゴリズム変更(渥美雅之・渡邊隆之)

2022年6月16日、東京地裁は「食べログ」の運営会社に対して飲食店の評価を調整するアルゴリズム変更が独禁法の「優越的地位の濫用」に該当するため違法であるという判決を下しました。

評価やマッチングなどでアルゴリズムを使用しているITサービスも多いですが、この判決は、アルゴリズム変更が「優越的地位の濫用」に該当することがありうると示した画期的な判決です。

営業秘密が多分に含まれる訴訟であることから上記判決は長らく公開されず、そのため、解説記事などもありませんでしたが、ようやく公開されるに至ったようです。

この記事では、詳細に「食べログ」の行ったアルゴリズムの変更が優越的地位の濫用にあたると判断した内容を解説しており、「食べログ」判決の概要を理解することができます。
この記事を読めば、アルゴリズムを利用するITサービス事業者としては、特定の利用企業群に対して不利益を与えることが明らかなアルゴリズム変更をする場合、事前にどの程度アルゴリズムの変更可能性を公表すべきか、正当な目的に基づく合理的手段を慎重に検討することが求められることになることがわかります。

1位:改正電気通信事業法をふまえたCookieデータ等の利用者情報の利用と管理(岡部公志)

経営戦略としてのプライバシー・ガバナンスが連載されており、その最終回で、改正電通法をふまえたCookieデータ等の利用者情報の利用と管理に関するトピックがとりあげられました。

ヨーロッパで施行されているGDPRとは異なり、日本の個人情報保護法では、Cookieは「個人情報」としては規制されず、一部が「個人関連情報」として規制されるにとどまります。

今回の改正電通法で、3号事業者も含めた幅広い事業者が取り扱うCookieをはじめとする利用者情報を外部送信する場合に、その内容を通知・公表することが義務付けられることとなりました。

いま、まさに対応に追われている法務部員は多いと思いますが、この記事では、改めて改正法電通法の概要が簡潔に説明されています。

大切なことは、自社サービスにおける外部送信規律の対象となる利用者情報の取扱状況について、ビジネス部門・セキュリティ部門・法務部門が連携して把握し、定期的に最新の取扱状況を通知・公表するというPDCAをまわしていくことですね。

ビジネス法務2023年7月号のまとめ

いかがだったでしょうか?

7月号はChatGPTといった最新技術に関するトピックや、気になっていた「食べログ」判決の解説などがあり読みごたえがありました。

それ以外にも、特集として「スタートアップ法務の作法」という特集が組まれており、契約書の持つ意味や管理について実務的な面から解説されており、スタートアップ以外の法務部員にとってもとても役に立つ内容だと感じました。

さらに、「企業法務に関わる「民法」重要論点ベスト30」が特集されており、改めて最も基本的な法律である「民法」について復習するのに役立つなと感じたところです。

この記事が、日々の法律・判例のアップデートのために、皆さんがビジネス法務を読むきっかけになれば嬉しいです。

※注:私はビジネス法務の回し者ではありません、念のため(笑)


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