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「虎吉の交流部屋プチ企画」最近はまっているもの イヤホン

子供の頃、学校の図書館が遊び場でした。古い大きな小学校でしたので、生徒数は減ったものの、蔵書は、増える一方で。図書室というよりも、独立した図書館のようになっていました。図書委員をしていたので、鍵も預かっていました。校長は住職も兼任する人で、蔵書を管理していました。その人の指導で、書の虫干しや手入れの仕方も覚えました。ある事情から家には居辛い状況があったりして、元々好きだった読書に夢中になりました。ゲーム好きが止められなくなって、ネトゲ廃人になる様に、人間捨てて本の虫になって、ある物全てを読み尽くしそうな勢いでした。本の続きを早く読みたくて、ナイショで夜の図書館に度々忍び込んでいました。小さな懐中電灯で、テーブルの下で寝そべって本を読んでいる時、夢中になりすぎて、当直の先生の気配に気がつかなかった、すると、かなり遠くから妙な悲鳴と共に、先生が逃げて行くのが見えた。 先生、皆んなゴメンね、図書館の幽霊は、この私めでございます。そんな折り、真夜中の図書館からコソコソと1人で帰る道中で、時刻的には午前3時ごろかな、夜明け前と言ったところ、遠くに見えるキラキラと光る場所では、すでに早朝の活動が始まる時刻だ。付近の暗い木々の間から、かすかに聞こえ始める読経の音、聞こえたと思ったらどんどんはっきりと聞こえる。大勢のあげる低音の読経だ。初めて暗闇を怖いと思った。それなのに、本を読み始めると止まらない!繰り返すうちに、怖さは無くなり、慣れてしまった。

そして、ウン10年、あの不思議な読経も、山の音として変な理解をしていた。夜中にキーボードポチポチが習慣になっている今日このごろ、無性にコーヒーが飲みたくなって、たまたまコードレスのイヤホンを装着したまま午前3時に、自販機のある所まで、外を歩いた。 ウン?! 聞こえる! 遠い昔に聞いたあの大勢の読経だ!足を早めるとより強く、より近く聞こえる。ン? 体内の音!

分かった! 分かってしまった、遠い市場の朝の喧騒、木々の擦れ合い、それらの音を、自分の体内の血流の音がリズミカルに支配している。それらが、耳覚の内と外から読経の音の様に聞こえるのだ。子供の頃は今より聴覚が良かったからね、でもイヤホンの集音機能で、きっとそうだ。何日も試してしまった。早朝の配達人も驚かせてしまった。

変なものにハマってしまった。夜明け前の暗い静かな道を、白いイヤホンを付けて、早歩きしています。立ち止まって耳を澄ます。

もしかして、もしかして、何か、微かでも違う音が聞こえないかな! なんて思って


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