ヒメものがたり その1
ほんの2ヶ月と少しの期間ではあるが、我が家に、猫がいたことがある。今から21年前のことだが、今でもその時のことは鮮明に覚えている。また当時私は、ホームページを開設しており、そこで日々の様子を綴っていた。
先日、その頃のデータが外付けのハードディスクから見つかったので、今回こちらに投稿させてもらうことにした。
2003年7月2日(水)
いつものように、Buddy(ナビの前に暮らしていたラブラドールの男の子)と朝の散歩に出かけた。
小学校の前を通っていると、どこからともなく、「ミー、ミー」と弱々しくも、はっきりとした子猫の声が聞こえてくる。どこだろうと周りを見渡したものの、次の瞬間には、Buddyの目の先に彼女たちはいた。
黒く汚れた側溝の中、二つの固まりがうずくまって、まるで助けを求めているかのように泣いていた。
Buddyがいるのに保護できるわけない、と後ろ髪を引かれながら帰宅した。モーニャン(妻)に「保護できないかなぁ」と話すと、「まるで、小学生の親になった気分やわ。」と彼女。
それでも、知らないフリをできないのが、モーニャン(妻)。
結局、私の出勤直前に、彼女が言った「なんとかなるか!」の一言で、2匹の子猫を保護することになった。そして私はその日、会社を休んだ。私と息子には初めての「猫」である。
問題のBuddyの反応は、想像以上だった。やっぱり、同居なんて無理だよな、とその時はあっさりとあきらめていた。
お湯で洗ってあげるとそれなりにきれいになった。まだ、ヘソの緒がついているし、もちろん、目は開いていない。片方の子は足の様子がおかしい。
開院の時間を待って、P遠藤先生(獣医師)の診察を受ける。基本的には、致命的な異常は認められないとのこと。性別は男の子と女の子だった。
足に異常が認められるのは女の子の方で、一晩預かっていただいて様子を見ていただくことにする。
2003年7月3日(木)
昼間、私は会社なので、世話は全てモーニャン(妻)がしてくれたのだが、男の子は順調とのこと。ミルクもしっかりと飲んでくれる。子猫専用のミルクを、目薬用のスポイトで3時間おきに授乳する。一回の量は、5g前後。一日にして20~30g。
ミルクの後は、うんちを出さないといけない。お尻にティッシュをあてて、「もしもし」する。肛門の周りを刺激するのだが、強すぎると炎症を起こすし、弱すぎると刺激にならない。そのあんばいがちょうど、「もしもし」なのだ。P遠藤先生の口から聞いた言葉だが、うまく言ったものだ。
夜もお腹がすくと「ミーミー」泣くので、Buddyが猛烈に反応する。おかげで、昨夜はほとんど眠れなかった。それに、Buddyの反応に気を使って、胃が痛かった。
会社から帰ってから、P遠藤先生のところに女の子を引き取りに行く。レントゲンでは足の骨折はなく、敢えて言うなら脱臼だろうとのこと。今はこのまま様子をみて、もっとしっかりしてから、処置をしようとのことだった。それよりも、とにかく元気がなく、食事もあまり食べないので生きられるかどうかわからないとのことだった。
(つづく)
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