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創作大賞感想 吉穂みらいさん「眠る女」

 吉穂みらいさんの昨年の創作大賞応募作品です。

 

 そして今年の応募作、「眠る女」もこれまた素晴らしいので、今回も感想を書かせていただきます!



 
 睡眠障害を患う女性が経験した、不思議な出来事についての物語です。

 性交渉のない夫婦関係に虚しさを覚えながら、大学時代の友人カオルと逢瀬を重ねてしまう主人公、葵。ただしそれは体だけの関係で恋愛感情はない。気持ちを持て余す葵は不眠に苦しんでいたが、夫時生の失踪と同時に、今度は過眠になってしまう。4日間眠り続けて栄養失調となり、加療のため入院した葵に代わって、カオルが時生の行方を探すのだった…!
が!!そこには衝撃の事実が!!

 謎めいた展開の続きが気になってしまい、前のめりになって読んじゃいました。そして、葵自身が時生をどう思っていたのか、カオルをどう思っているのか、という丁寧な描写に、そうだよね…と共感しました。複雑な女性の心理がとても鮮やかに描かれています。ミステリー要素を混じえた、少しだけハラハラする展開が続き、最後は心がほっこりと温かくなる、素敵な読後感です。

 以下はネタバレを含んだ私の感想です。




 私はこういう不思議な余韻の残るお話が大好きです。なので、時生の存在は葵にとって何だったのか、という点をすごく考えてしまいます。幽霊だったのか、幻覚妄想だったのか……葵を道連れにしようとしたのか、助けようとしたのか……と。

 おそらく、読む人によって時生の存在の意味づけが変わると思うんですよね。こういう読者の想像にお任せしますという結末は、心地良さを与えるものもあれば、作品によってはモヤモヤしたり、嫌な読後感を残したりすると思うんです。でも吉穂さんの作品は、素敵な感じにおさまっていて、そのバランスがさすがだな〜、と感服しました。 


 今年も素敵な作品をありがとうございました!今後も吉穂さんの物語を楽しみにしております。


 読んでくださった皆さま、ありがとうございました!





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