文字通り死ぬほど苦しい

前々から死にたいと思い様々な自殺の方法を探していた。痛いのや苦しいのは嫌なので可能な限り楽な死に方をしたいと思っていた。

何故死にたいのかというとよくある話だが、ADHDとかASDとかそれに付随する二次障害のうつとかで社会の中で生活していて苦しいし、生きている中で楽しい事など殆どないので、このクソみたいな人生を早く終わらせたかったのだ。

しかし一応薬剤師として、また病院で3年間働いた経験と最低限の知識は保持していたので、そう簡単に楽に逝ける方法は無いと知っていた。勤め先の病院からカリウム製剤とシリンジを盗んできて、ワンショットで静注し心停止させる事も考えたが、窃盗は犯罪だし結局度胸がなくて諦めた。

動物実験や海外の安楽死制度においてはバルビツール酸系薬剤を用いるので、職場からフェノバルビタールを盗んで服用することも考えた。しかし結局これも上記の理由から断念した。

けれども服毒により楽に死ぬという考え方は、自らが薬剤師であるからかどうかは知らないがピンとくるものがあり、手軽に入手でき様々な自殺に使えそうな毒物を探す事にした。その中でもトリカブトに含まれるアコニチン系アルカロイドはカリウム製剤のワンショットと同じく心室細動を引き起こし、死に至らしめるものだった。

トリカブトは様々な種類があり、観賞用として特に規制もなく売られている。そのうちアコニチン系アルカロイドを多く含むヤマトリカブトをネット通販で入手し、特にアルカロイドが多く含まれている根を、干物作り用の網かごに入れベランダで乾燥させ、学生時代に習ったstas-otto法でアコニチンを抽出しようと考えた。

今の時代、ネットで検索すれば様々な論文がタダで読める。乾燥させたトリカブトの根をミルで粉砕し、メタノールでアコニチンを粗抽出し、酒石酸でPH3に調整してエーテル抽出を行う。エーテルは簡単に言うと油なので水と分離する。分離した水層を得て水酸化ナトリウムでPH11に調整して再度エーテルで抽出する。今度はエーテル層にアコニチンが分画されて、エーテルを自然乾燥で蒸発させればアコニチンの結晶が得られる。

上記について軽く説明しておくとジテルペンアルカロイドであるアコニチンは塩基性物質なので酸性下ではイオン形になり、塩基性下では分子形となる。そのため酒石酸酸性では水に、水酸化ナトリウムアルカリ性ではエーテルに分画される事となるのだ。

この工程を行うために必要な薬品や分液漏斗、漏斗台やリトマス試験紙、等を買い込んで後はアコニチンを抽出するだけ、の段階まで来ていた。
計画では抽出したアコニチンを耐酸性の腸溶性カプセルに詰めて、眠剤と共に一気飲みして、眠りながら心室細動にて死ぬ予定であった。心室細動の体験談を読むと、気が付いたら倒れていてAEDをつけられた状態で目が覚めた、とあり痛みや苦しみも最小限で逝けると勝手に期待してた。

結論から言うと生きていてこの文章を書いている様に、自殺には失敗した。
まずアコニチンを抽出する前に、トリカブトの乾燥根をそのまま細切りにして眠剤と共に飲み干してしまった。嫌な事があり仕事を欠勤し、そのまま勢いで自殺未遂を行ったのだった。そのせいで救急搬送された病院で行われた胃洗浄により乾燥根はほぼ胃の中から除去されてしまった。

それと、とても恥ずかしい事なのだがあまりの苦しさに耐え切れず、自分で119番通報してしまった。計画では寝ている間に逝く筈だったのに、あまりの苦しさに目が覚めてしまった。ゾルピデム10mgとフルニトラゼパム1mgを各20錠ずつ服用し眠りについたが、それでも起きてしまう程の苦しさだった。

結局、吐瀉物と小便をまき散らしながら、自分で呼んだ救急車で運ばれて、文字通り死ぬほど苦しい思いをしながら、医師に説教を受け胃洗浄とアドレナリン投与を受けるハメになってしまったのだった。




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