地球の錬金術師。藻類研究の魅力を余すところなくお伝えしたい!
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Hey! What's up people~!? 鎌田です。今回も編集者目線でおススメの本をご紹介させていただきます。
今回、ご紹介するのはこちら、「藻類:地球進化と生物進化を再構築できる藻類研究の魅力」です。私は藻類のことを深く考えるようになったきっかけはビニールハウスを加温するエネルギー源を環境に適応したものはないかとリサーチしはじめたことがきっかけを与えてくれました。
私たちの生活にあまりに身近な存在で具体的に藻類がどんな役割をもっているのか、どんな生き物なのか知らない人も居ると思いますので今回取り上げさせていただきました。
本書は藻類の本というより、藻類にまつわるさまざまな産業や技術、環境面での取り組みなどの最前線事情を紹介する本となっており、海藻と日本人のかかわりなどのトピックも用意されていまして地球進化と生物進化を再構築できる藻類研究の魅力を余すところなく伝えてくれています。
そもそも藻類は人類だけではなく、生命にとって藻類ほど重要な生物は存在しないとのこと! この本の著者ルース・カッシンガーは、過小評価されてきたこの生き物の本当の姿を示してくれたと思います。
藻類は時としてネバネバして不愉快なものだったりしますよね。ベランダの鉢を移動させた時なんかに不意に現れたりします。
「藻類」この単語を聞いて、みなさまの頭には何が浮かびますか?屋外の排水管についている緑色のネバネバですか?魚の水槽のガラスを曇らせる緑色のもやのような存在ですか?
しかし本書は藻類が実際には不思議で興味深く、とてつもなく有益な生き物であることを教えてくれるのです。身近なのにあまりその実態を知らない藻類について喜びと驚きを持って知れる書籍となっています。
そして藻類こそが世界の隠れた支配者で、酸素、食物、そしてエネルギーをもたらしてきたことを示唆しています。
私たちの過去と未来が互いに絡みあっている事実を、藻類を通して美しく描き出すことに成功しているのではないでしょうか。
藻類は地球で最も古い生命体の一つで、それこそ先ほどのベランダから産油の現場まであらゆる所で見られる藻類ですがカッシンガーは、未来の藻類がもつ重要性を示しました。
本書は4部構成になっております。
第1部で、藻類の誕生とその地球征服の歴史をたどっていまして、次に第2部では、海藻を食することの楽しみを探っています。そのために私たちの食卓に海藻を届けるビジネスをしている人々を紹介してくれています。
第3部では、7世紀のガラス製造から現代のプラスチックや燃料に至るまで、 藻類から色々な用途を発見した人々の物語が語られています。
最後に第4部では、温暖化した大気と汚染された水に変化をもたらす藻類の力を調査について報告されています。
どうですか、みなさん! こんなに身近であるのに、氷山の一角しかわかっていないようなほぼ未知の世界である発見のフロンティアといえる藻類って楽しそうですよね。ものすごく興味をそそられたりしませんか?
最後に、地球史との関連以外のことにも触れておきたいと思います。長い歴史を持って、かつ多種多様な系統からなる藻類は体制とか体の大きさ、あるいは光合成色素であったり、細胞の微細構造など、さらには栄養から生活様式が極めて多種多様で、それに応じて細胞機能や代謝産物も多種多様です。
カラギーナン、そしてアルギン酸やオイルなど素材としての藻類の活用の可能性が示唆されています。
まだ研究が十分進んでいるとは言えないですが、生理活性物質とか多様な薬効を持つ物質が発見される可能性というのは極めて高いといえるので、天然物有機化学の重要な研究対象です。
藻類オイルの開発にはじまり、その実用化も当然の課題であって日本でも研究が盛んに進められています。
藻類の生産生態学のさらなる発展も強く望まれております。
長年にわたる研究の中で海洋藻類の生産力について陸上植物に比べると低く評価されてきた背景があります。これはちゃんと再評価するべき局面であるのでしょうね。
このように課題は調査海域が十分でない状態ですし、水深200メートルまで垂直に分布する植物プランクトンの生産力を正確に把握することが技術的に困難だったことにあるそうです。
本書によると1973年 の時点で海洋の1年間の生産力は炭素換算で275億トンと推算されており、陸上の537億トンの半分ほどと評価されていまるようですね。
これが2007年になると観測の回数と測定精度が上がったことで、海洋の生産力は650億トンと測定されたそうです。
これは陸上の600億トンを上回っていますが、まだ過小評価されていると感じています。2000年から2009年の10年間に、80を超える国から二七○○名の研究者が参加して実施された540回の海洋調査の研究成果をまとめた『Census of Marine Life 2010』 が出版されました。
この中に驚くべきことが書かれていまして、海洋には10億種近くの微生物が生息している可能性があって、しかも、これらは全海洋のバイオマスの90%を占めているというのです。
これをもとに考えると、そのうちの90%以上が食物連鎖の底辺で支える生産者であって光合成細菌とシアノバクテリア、そして微細藻類を含む光合成生物であると考えられます。
それぞれが占める割合はわかりませんが、シアノバクテリアと微細藻類も相当部分を占めていると想像できますよね。
このように海洋の真の生産量は誰なのか、そしてそれを実現している生産者の実態というのは、ほとんど実態を掴めていないのです。地球生態系を本当に理解するためには、藻類の真の多様性とバイオマスを把握することが不可欠です。
このように藻類はほとんどがまだ未知の世界で、ダーウィンやウォーレスが19世紀に世界で新たな動植物を探し求めていた時代と同様に、まだまだ研究・調査が必要な分野だとわかります。
このように藻類は発見のフロンティアですし、同時にビジネスチャンスも無限に広がっているんだよということでもあります。藻類とは何者なのか知る上で欠かせない一冊なのではないでしょうか。
それではまたお会いしましょう!
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