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共創マーケティング~生産者と消費者が一緒に創る未来

前回は地球温暖化と気候変動が土壌と植物生産に与える影響について解説させていただきました。日本はこの問題に対してどのように貢献できるのでしょうか。

ここから日本の農業と食料供給に関する特定の課題と、これにどう対処するべきかについて述べていきます。具体的には、「食べる人のコミュニティ化」の重要性、そして日本の生産者と消費者の比率について話していきます。

まず、「食べる人のコミュニティ化」という概念は、消費者が食料生産にもっと直接的に関与し、食料の源泉と自分たちの関わりを再認識することを指している可能性があります。これは、食の安全性や持続可能性に対する認識を高め、地元の食料生産者を支援するという観点から重要です。

例えば、「1.5%:98.5%」という数字があります。これは、日本の全人口の中で食料を生産している人々(生産者)が1.5%しかおらず、一方で食料を購入している人々(消費者)が98.5%を占めているという事実を示しています。この比率は、日本が食料自給において非常に依存的な状態であることを示しており、他の多くの先進国に比べてこの比率はより低いとされています。

しかし、単に就農人口や担い手の不足に焦点を当てるだけではなく、より根本的な問題に目を向けることが必要でしょう。食料生産と消費の間のつながりを改善し、消費者が食料生産により積極的に参加し、また食料生産者を支援することの重要性にフォーカスを当てるべきです。

例えば、日本の農業と工業の発展の歴史、特に1970年代から現在までの変遷について述べてみたいと思います。

筆者が1970年に生まれたとき、日本の農業労働者は全国民の約10%を占めていました。しかし、第二次世界大戦以降の日本では農村と漁村の近代化が進み、農業における人力の重要性は次第に減少しました。具体的には、機械化が進み、これにより一度に多くの仕事をこなせるようになりました。これにより、以前は10人で必要だった労働力が1人にまで減少したのです。

そして、余剰となった人材は主に工業分野に転じ、自動車などの製品を生産し、それを海外に輸出しました。これによって得られた収益で、日本は海外から食糧を購入することが可能になりました。このような戦略により、日本は高度経済成長を達成しました。

しかし、この過程で食料生産に直接関与する人々の比率が大幅に減少し、食料の自給率も低下しました。そして、今日に至ってもこの傾向が続いており、食料の自給率を向上させ、持続可能な食料生産システムを構築することが課題となっています。

私たちが生産者と消費者という二つの立場で食べ物を見てみると、その間のつながりがどんどんと希薄になってきていることが見えてきます。かつては、自分たちで食物を作るか、地元の生産者から直接食材を手に入れることで、食べ物がどのように作られ、自分たちの食卓にどのように届くかを知ることができました。

しかし今や私たちの多くは、生産者と消費者の間に広がる大きな溝を目の当たりにしています。この溝は、食べ物がどこから来て、どのように生産されたのかを知る機会を奪ってしまいます。食物をただの商品として見るようになり、その背後にある生産過程や人々の労働、地球への影響を見落としてしまいます。

そして、その結果として、私たちが食べ物に求める価値は、見た目や味だけではなく、その生産過程に対する理解と尊重、そして生産者とのつながりを失ってしまいます。それは、食物に対するより深い理解を求める私たちの努力と、生産者と消費者が共有すべき価値と責任の喪失を意味します。これこそが、私たちが直面するべき問題であり、解決への道筋を探すべき課題なのです。

かつては、都会で生活を送る多くの人々が農村出身であり、そのため親戚や友人といった身近な存在が農家や漁師といった生産者であることは普通のことでした。このような関係性は、食物がどのようにして私たちの食卓に届くのか、またそれにはどのような労力や技術が必要なのかということを、日常的に理解する機会を提供していました。

しかし、近年の都市化や産業構造の変化に伴って、都会の人々が農村出身であることは少なくなり、その結果として私たちの周囲には農家や漁師といった食物の生産者がほとんど存在しなくなってしまいました。つまり、私たちが直接的に食物の生産過程に関与する機会が大きく減ってしまったのです。

私たちは食物をただの商品として購入し、その生産過程について深く考えることなく食事を摂る生活を送っています。これによって、食物がどのように生産され、それが私たちの生活や健康、そして地球環境にどのように影響を与えるのかという認識が薄れてしまっているのです。

これは食物の生産者と消費者の間のつながりの消失という現象が、私たちの食文化や社会にどのような影響を与えているのかを示しています。それは、私たちが食物について理解し、それを大切にするために必要な視点と体験の喪失を意味していると言えるでしょう。

私たちが食物について考えるとき、その生産過程について具体的なイメージを持つことは少ないかもしれません。しかし、食物は単にスーパーマーケットの棚に並ぶ商品ではなく、ある一定の人々、すなわち農家や漁師たちの労働と専門技術によって生産されています。それらの生産者たちは、私たちの食生活を支える重要な役割を果たしています。

しかし、現在、食物の生産は「儲からない」という理由で辞められることが多くなっています。これは、生産者と消費者の間に直接的な関わりがなく、生産者の労働が見えにくいこと、また、食物の価格が適正に反映されていないことが原因となっています。

私たちは食物を購入し消費する一方で、その生産について考えることが少なく、生産者に対する理解や関心が希薄になっています。その結果、食物生産は多くの人々にとって他人事となり、私たち全体の問題であるにもかかわらず、それに対する関心が薄れてしまっているのです。

この現状を変えるためには、1.5%の生産者が98.5%の消費者とつながることが重要となります。つまり、生産者と消費者が直接的に関わりを持つことで、消費者が生産者の労働を理解し、食物の価値を再認識することが求められています。その結果、消費者の行動が生産者を支える形となり、生産者が元気な業界で働き続けることが可能となるのです。

そこで私は消費者と生産者が一緒になって価値を作り出す新しいマーケティングの形を提案しています。こうした「共創マーケティング」の取り組みは、単に製品を販売するだけでなく、ここでの「共創」は、共同で創造するという意味で、生産者だけでなく消費者もその過程に深く関与します。

一方通行の情報伝達や商品提供ではなく、消費者の意見や反応を反映した商品やサービスを生み出すことで、消費者と生産者の間に存在する壁を取り払うことを目指しています。

さらに、この取り組みは会社単体だけで行うものではありません。関連するステークホルダー(利害関係者)やグループ会社と協力し、全体としての価値創造を目指します。つまり、企業の枠組みを超えて、生産者と消費者の関係を再構築することで、より良い商品やサービス、そして持続可能な社会を目指すということです。

これは、現代の社会で見られる生産者と消費者の間にある距離を埋めるための一つの解決策であり、新たなビジネスの形を提示しています。

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農業はビジネスです。アグリハックは、農家が自らメーカーとなり、マーケットに向けた革新的な戦略を展開することを提唱します。私たちは常にお客様の視点に立ち、品質と価格のバランスを追求しながら、最も付加価値の高い作物を生み出します。自然とテクノロジーの融合を通じて、持続可能な農業経営を追求し、地域のニーズに応える生産体制を築きます。アグリハックは、農業の枠を超えた経営戦略のノウハウをお届けし、農業ビジネスの未来を切り拓きます。農業を革新し、地域との絆を深める、アグリハックの世界へようこそ。

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