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テレビ業界を志望する あなたに必要な業界の成り立ちと現状の把握

割引あり

テレビは私たちの生活に欠かせない存在ですが、その成り立ちや現状を把握しているでしょうか。この記事では、テレビの歴史や仕組み、そして現在のテレビ業界の様子について詳しく解説します。
 
テレビが生まれた経緯や初期の普及状況、そして今ではどのような形でテレビを楽しんでいるのか、その全体像を明確にしていきます。また、テレビの視聴率や業界の動向など、注目すべきポイントも取り上げます。テレビに関心のある方やテレビ業界に興味がある方にとって是非読んでいただきたい内容となっています。


テレビ業界の成り立ち

テレビ業界の初期において、他のメディアからの人材がテレビの成長と発展に欠かせない存在でした。1953年にテレビの本放送がスタートした当初、テレビはまだ新興のメディアであり、その人材を確保するためには他のメディアからの才能を積極的に引き入れる必要がありました

この時代、放送作家は主にラジオ出身者であり、キャストには映画出身者が多く起用されました。プロデューサーやディレクターも同様に、ラジオや映画での経験が重要視され、新たにテレビ局に入社した社員の中にも、他ジャンルでの経歴を持つ者が多かったのです

テレビ業界の舞台裏では、カメラマンや照明マンといった職種でも、ラジオや映画の経験が豊富なベテランが活躍していました。彼らは機械操作に精通し、ディレクターよりも年上で、その豊富な知識とスキルがテレビ番組の制作に不可欠でした。テレビ業界は他のメディアとの連携を通じて多彩な才能を取り入れ、その結果、多様なプログラムが生み出され、テレビの普及に大きく貢献しました

このように、テレビ業界の初期における他ジャンルからの人材の流入は、その後のテレビの発展において重要な要素であり、異なるメディアで培った経験と専門知識がテレビ番組制作に生かされることになったのです

テレビ業界やそのプロフェッショナルたちの評価は、昭和30年代に入って急速に上昇しました。この転機は1959年に起き、当時の皇太子のご成婚をはじめとする出来事が、テレビの普及を爆発的に加速させたのです。テレビの契約数は一千万台を超え、その影響力は急速に拡大しました

このテレビブームと同時に、テレビは映画やラジオをしのぐ、文化やエンターテインメントの中心として確立されました。家庭にテレビが普及するにつれて、テレビ番組は人々の日常生活に欠かせない存在となり、大衆文化の一部として根付きました。これに伴い、テレビ業界のプロフェッショナルたちも注目を浴び、学生たちにとって「あこがれの職業」として脚光を浴びました

テレビの威力と影響力は、情報伝達や娯楽の分野において前代未聞のものとなり、テレビ業界はその成長にともなって多くの才能を吸収し、発展しました。テレビの黄金時代が幕を開け、その背後で多くのプロフェッショナルたちがテレビの魅力を最大限に引き出し、日本のメディア業界を塗り替える役割を果たしました。

昭和40年前後において、テレビは圧倒的な優位性を獲得し、新しいジャンルも続々と発展していったのです。

テレビ番組制作の進化 『分業化と効率化』

この時期に特に顕著だった変化の一つは、分業化の傾向でした。この傾向は、様々な要因が絡み合い、テレビ業界に大きな変革をもたらすことにつながったのです。

最初に挙げられる要因の一つは、テレビ創成期に名を馳せた有名プロデューサーやディレクターが高齢化し、一人で番組を制作できる人材が減少したことです。テレビ創成期に活躍したプロデューサーやディレクターたちは、その時代特有の才能や経験を持ち、多くの番組を成功させました。しかし、年齢とともに体力の衰えや新しい技術への適応が難しくなり、一人で全てを手掛けることが難しくなってきました。これにより、一人で番組制作を行えるプロフェッショナルの数が減少し、分業化の必要性が高まりました

もう一つの大きな要因は、テレビ局自体がより大型化し、効率的な経営を求められるようになったことです。昭和40年代に入ると、テレビ業界は急速な成長を遂げ、多くの番組を制作・放送するためには大規模な組織となりました。一つの番組を完結させるには多くのスタッフや専門知識が必要であり、テレビ局はさまざまなプロフェッショナルを必要としたのです

しかし、これらのスタッフを全て自社で雇用すると高い人件費がかかるため、制作会社との協力や外部のプロフェッショナルを活用することが経済的に有利となりました。これが分業化の一因となり、テレビ番組制作の体制が変化していく要因の一つとなったのです。

分業化の進展は、テレビ業界において効率的な番組制作と専門知識の活用を促進し、多彩な番組が生み出される土壌を築いていきました。 この時期の変化は、テレビ業界の成熟と発展に欠かせない重要なステップとなったのです。

さらに大きな要因として、テレビ局自体が大規模化し、効率的な経営が求められるようになったことが挙げられます。 この変化は、テレビ業界が一段と複雑化し、多岐にわたるプロフェッショナルとの協力が必要とされるようになった背景にあります。また、この要因は「リモートコンベヤー化」とも関連が深いと言えるでしょう。

企業は基本的に、迅速かつ効率的に、かつ低コストで高品質な製品を生み出すことを目指します。 テレビ業界もその例外ではありません。かつては黒澤明のような完璧主義者が多くの時間と予算をかけて高品質な番組を制作するスタイルが主流でしたが、時代の変化とともにそのスタイルには限界が生じました。

特に、視聴者からの需要が多様化し、多くのジャンルやスタイルの番組が求められるようになったことから、番組制作のスピードと効率性が重要視されるようになりました

リモートコンベヤー化は、番組制作プロセスを工場のコンベヤーベルトのように、段階的に進める手法です。このアプローチにおいて、各ステージでの作業が専門的で、特定のスキルや知識が求められるため、スペシャリストが効果的に活用されます。一人の制作者がすべてを手掛けるのではなく、各ステージごとに専門家が連携し、番組制作を効率的に進める仕組みとなっています。

このアプローチにより、効率的な番組制作が可能となり、コスト削減や品質向上が実現されました。 さらに、多様なジャンルに対応でき、視聴者の多様なニーズに応えることが容易になりました。こうした変革がテレビ業界の成長と発展に貢献し、現代の多彩なテレビ番組の制作に繋がっています。

大事なのは、番組制作において穴を開けないことです。 番組制作において、優れた能力を持つことは重要ですが、それだけでは十分ではありません。特に、作業が遅い人は、制作プロセスにおいて問題を引き起こす可能性があり、効率的な番組制作を妨げる要因となります。番組制作では、時間厳守と協力が不可欠であり、適切なタイミングでの作業が求められます。

バラエティ番組の世界では、分業化が急速に進展しました。 これは、特にバラエティ番組において多くの要素が組み合わさり、多くのプロフェッショナルが協力する必要があるためです。

例えば、同じディレクター(略してD)でも、スタジオ収録の総合演出と、ロケ現場でのVTR取材など、彼らの役割が細分化されました。 これにより、番組制作における役割分担が明確化され、各担当者が専門的なスキルを活かすことができるようになったのです。

1つの番組には何人ものDが関与し、脚本家(以下、作家)もますます増加しました。 これにより、番組制作はさまざまな専門家からの貢献に依存することとなり、より多彩でクオリティの高い番組が制作されるようになりました。番組全体または各セグメントごとに、Dと作家が別々に担当される時代が訪れ、番組制作における専門性と効率性が向上したのです。

この変化は、バラエティ番組の多様性と品質向上に寄与し、視聴者にとって楽しい番組体験を提供する基盤となりました。 各専門家が連携し、彼らの専門知識とスキルを活かすことで、バラエティ番組はさまざまな面白い要素で溢れ、視聴者を魅了してきたのです。

テレビメディアも、平成時代に入り、大きな変革の時期に差し掛かりました。 その中でも典型的な変化の一つは、番組制作費の抑制です。バブル期には、日本経済が好調で、テレビ局にCMを依頼するスポンサーが多かった時代でした。 バブル期のテレビ業界は、高額な制作費をかけた壮大な番組が数多く制作され、視聴者を魅了していました。

しかし、後に訪れる経済不況により、スポンサーの数が減少し、テレビ局も製作費を削減せざるを得ない状況に追い込まれました。 この経済的な厳しさは、テレビ業界に大きな影響を与えました。番組制作に必要な資金が限られる中で、どのようにして多くの魅力的なコンテンツを生み出すかが課題となりました。

この結果、番組制作において、ますます予算を抑えたいテレビ局は、制作会社により多くの仕事を委託するようになったのです。 テレビ局は、高額な人件費をかける自社の社員よりも、制作会社のスタッフをより経済的に利用する傾向が強まりました。制作会社は、柔軟性のある労働力を提供し、予算に応じた番組制作をサポートする役割を担うようになったのです。

この変化により、テレビ局は番組制作の効率化を図りつつ、コストを最小限に抑えることが可能になりました。 同時に、制作会社も競争力を高め、多様な番組を提供できるようになりました。

このように平成時代のテレビ業界は、経済状況の変化に適応し、多くの優れた番組を視聴者に届けるためにさまざまな戦略を展開しました背景があるのです。

テレビ業界の雇用構造変化とその要因

テレビ業界の変化はさらに進み、番組制作における雇用構造も極端なものになっていきました。 これは、特にAD(アシスタントディレクター)など、番組制作の重要な役割を果たす人々に影響を及ぼしました。従来、制作会社が番組制作全般を担当するのが一般的でしたが、現在では下請け会社から各テレビ局に派遣されることが一般的になってきました。

このような変化はテレビ業界に限ったことではありませんが、現在、テレビ局のオフィスに勤務している多くの人々は、テレビ局の正規社員ではなく、制作を請け負う下請け会社の従業員です。 この雇用構造の変化には、いくつかの背後にある要因が影響しています。

第一に、効率性とコスト削減の追求です。 テレビ局は、競争が激化し、制作費を抑えつつ多くの番組を制作しなければならない状況にあります。そのため、制作会社から下請け会社への業務委託が増え、人件費を削減するための戦略として採用されました。派遣されるスタッフは、プロの技術を持ちながらも、テレビ局の正規社員よりも安価に雇用できるという利点があります。

第二に、需要と供給の変化が影響しています。 メディア環境が多様化し、テレビ以外のメディアプラットフォームも台頭してきました。これにより、テレビ局は多くのコンテンツを迅速に制作し、視聴者に提供しなければならないプレッシャーを感じています。下請け会社からのスタッフ派遣は、迅速な対応と柔軟性を提供し、テレビ局にとって貴重な資源となっています。

最後に、テレビ業界の競争激化も要因の一つです。 新たな制作会社が登場し、既存の制作会社と競り合うことで、テレビ局は多くのオプションを持つようになりました。競争が激しい中で、テレビ局は最も適した制作パートナーを選び、効果的な番組制作を実現するために下請け会社と連携しています。

このような雇用構造の変化は、テレビ業界において効率性と柔軟性を高める一方で、雇用の不安定さも増加させています。 下請け会社から派遣されるスタッフは、一時的なプロジェクトに参加することが多く、常に次の仕事を探さなければならない現実に直面しています。テレビ業界は変化し続けており、プロのスキルを持つ人々にとっては、常に新たなチャレンジと適応が求められる分野といえるでしょう。

インターネットの普及により、メディアの競争環境は大きく変化し、テレビの優越性が将来も続くかどうかは不透明な状況となっています。 この変化に対応しながら、テレビ業界はさまざまな課題に直面しており、その解決策を模索しています。

まず、テレビ業界は経営の安定を図るために効率化を追求しています。 番組制作におけるコスト削減は、多くのテレビ局にとって重要な課題となっています。派遣される下請けスタッフの利用や、外部制作会社への業務委託が、効率的な選択として浮上しています。また、自社制作スタジオの運用コストの削減や、テクノロジーの活用による効率改善も行われています。

一方で、一部のテレビ局は「優良番組」制作に重点を置く方針を取っています。 インターネット時代においても、高品質なコンテンツは視聴者に支持され続けています。そのため、一流のクリエイターやプロデューサーを採用し、質の高い番組制作に注力することで、視聴者を引き付ける戦略を展開しています。この選択肢は、競争の激しいメディア市場において、ブランド価値を維持し、広告主や視聴者からの支持を得るための重要な手段となっています。

さらに、テレビ業界は多チャンネル化やOTT(Over-The-Top)サービスの台頭といった新たな展開にも対応しなければなりません。 視聴者がコンテンツを選択しやすくなったことから、テレビ局は多様なジャンルやプラットフォームに対応し、新たな視聴者を獲得する努力を怠ることはできません。これに伴い、制作会社やスタッフに対する需要も変化し、柔軟性と適応力が求められています。

テレビ業界はクリエイティブなアプローチを模索しています。 インターネットが提供する情報と競合する中で、テレビ局は独自性を強化し、視聴者の興味を引きつける番組制作に取り組んでいます。番組のコンセプトや形式の革新、インタラクティブなコンテンツの提供、SNSやライブストリーミングとの連携など、新たなアイデアと技術を駆使して、テレビの魅力を向上させる試みが行われています。

テレビ業界は変化の時代を迎えており、その未来は不透明ですが、創造力と戦略的なアプローチによって、新たな展望を切り拓く準備を進めています。 メディア環境の変化に適応し、視聴者の期待に応えるために、テレビ業界は努力を惜しまないでしょう。

ここから整理のために次章において、これまでの論点をまとめ、さらに理解を深めていきたいと思います。

テレビ制作の変遷~自社制作から外部制作への転換

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