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中国の会社法改正『外資系企業の市場進出と成功に向けた新たな道標』

私は普段、海外へ進出を希望する企業や個人のサポートをさせていただいており、個々の国の事情など非常に多岐に渡る情報を扱っているので自分でも忘れてしまう情報もあるので、本マガジンでは中国における会社法改正の成り立ちや外商投資について最新情報を更新していきたいと考えています。 

中国の会社法はその成長とともに進化を続けてきました。これは、中国が経済的に開放され、多くの外国企業が参入するようになったからです。2021年の改正草案によって、これらの企業に対するルールも一部変わりました。

外国投資企業の資本制度改革

外国投資企業の資本制度改革について、具体的な例を用いて説明します。今まで中国の法律では、外国企業が中国国内で事業を行う際、一定の投資額を確保すること、特定の業種での事業活動を制限するなど、多くの規制が設けられていました。そのため、ビジネス展開に際しては慎重な計画と詳細な法規制の理解が求められていました。

具体的には、自動車製造業など一部の業種では外資企業が多数出資する合弁事業が必要とされ、完全子会社設立が許可されないという規制がありました。これは、技術移転を促進し、中国企業の成長を後押しするための施策でした。

しかし、改正草案により、これらの規制が大幅に緩和される予定です。自動車製造業における合弁事業の要件などが撤廃され、外国企業が中国で完全子会社を設立し、自由にビジネス展開を進められるようになります。これは、外国企業の中国市場への参入を容易にし、中国経済の更なる開放と国際化を推進するものとなります。

この制度改革は、外国企業にとって大きなビジネスチャンスとなり、市場競争力の強化に繋がると期待されています。しかし、それと同時に新たな市場環境への適応や競争環境の厳しさも増すことでしょう。だからこそ、最新の情報をキャッチし、戦略的に対応することが求められます。

技術移転

技術移転という領域においては、改正草案がさらに深い意味を持つことになります。これまでの中国でのビジネス環境において、外資系企業は中国企業との合弁事業や提携を進める際、しばしば自社の技術を共有する、いわゆる「技術移転」を求められるケースが多々ありました。

例えば、自動車産業における事例を見てみましょう。これまで、一部の業界では外資系企業が中国のパートナーと合弁事業を設立する際に、先進的な技術の移転が求められることが通例でした。その結果、中国の企業は新たな技術を取得し、その成長を促進することができました。

しかし、これには問題があると指摘されてきました。技術移転を行うことで、自社の競争力を維持する上で重要な知的財産を失うことになる可能性があり、外資系企業のビジネス活動に大きな影響を与えるからです。

改正草案により、このような強制的な技術移転は禁止されることとなりました。それは企業の自由意志に基づく合意で行われるべきとの考えが示されています。これにより、外資系企業は自社の技術や知的財産を守りつつ、中国市場でのビジネス展開を進めることが可能になります。これは、技術と知的財産の保護についての国際的なルールに沿った動きであり、外資系企業にとっては大きな前進となるでしょう。

コーポレート・ガバナンス

コーポレート・ガバナンスについての新規定は、企業の管理体制と透明性を向上させる一方で、中国市場での外国企業の活動を助けると予想されます。

具体的な事例として、新規定によれば、企業の取締役は、会社の利益と株主の利益を最大化するために、自己の利益を優先することなく、自分の職務を誠実に遂行する責任があります。これにより、取締役が個人的な利益のために会社の資源を乱用する可能性が大幅に減少します。

この新しい規定は、一部の外資系企業が中国で事業を展開する際に直面する問題を解決する可能性があります。たとえば、外資系企業が中国のパートナー企業と合弁事業を設立した際、パートナー企業の役員が自己利益を追求して企業の資源を不適切に利用するという問題が生じることがありました。

しかし、新規定により、これらの問題が大幅に緩和されると予想されます。なぜなら、取締役の職務遂行に関する新たな規定が導入され、それがコーポレート・ガバナンスの改善に寄与するからです。

さらに、これらの改正は企業の透明性と公正性を強化します。これにより、外資系企業は中国の市場での事業展開をより安心して行えるようになるでしょう。このような新たなコーポレート・ガバナンスの規定は、企業の健全な成長と競争力の強化に資するとともに、中国市場でのビジネス環境を改善するための一歩となります。

これらの改正は、外国企業が中国でビジネスを行う際の障壁を下げ、中国市場への進出を促進する可能性があります。また、改正により、中国の市場経済がより自由で開放的になり、グローバルな競争力を強化することが期待できます。それぞれの企業がこの新たな法律環境にどのように対応し、どのような戦略を立てるかが、今後の成功に大きく影響を与えるでしょう。

ここからは会社法の整理から始めていきたいと思います。

会社法改正

会社法の改正は、企業の設立と運営に大きな影響を与えることになります。2013年に行われた中国の会社法の改正は、企業にとって新たな自由度と機会を提供しました。

具体的な事例として、法定最低資本金の廃止は、新規事業を始めたい企業にとって大きな利点となります。以前は、企業設立には大量の初期資本が必要でした。これが廃止されることで、初期投資を抑えつつ新たな事業を立ち上げることが可能となりました。これは、特にスタートアップや中小企業にとって有利です。

また、資本の実際の払い込みに関する規制の廃止も、企業の資金調達の柔軟性を高めることになります。以前は企業設立時に一定の金額を払い込む必要がありましたが、この規制の廃止により、企業はより柔軟な資本構造を持つことが可能となりました。

さらに、金銭出資の法定比率規制の廃止は、企業の出資形態を多様化することを可能にしました。以前は現金での出資が必須でしたが、これにより企業は技術や知識といった非物質的資産を出資として認めることができるようになりました。

これらの改正は、企業の設立と運営に対する規制を大幅に緩和し、中国市場への参入を容易にすることで、多様なビジネスの発展を促進しています。これらは、外資系企業にとっても大きなチャンスとなり、中国市場への進出や拡大を目指す企業にとって重要な情報となるでしょう。

外商投資企業関連

① 外資三法の実施条例・細則の改正  中国の法制度上、会社法は一般法、外商投資企業に関する規定は特別法であり、特別法が一般法に優先します(会社法 217 条)。

(優先度) 特別法 > 一般法

 したがって、上記の会社法の改正を外商投資企業(合弁、合作、独資など)に適用するためには、原則として、関連する特別法規定を改正することが必要となりました。

 このため、国務院は、2014 年 2 月 19 日に、「一部行政法規の廃止および改正に関する決定」(国務院令第 648 号)を公布し、以下の3つを改正しました(2014 年 3 月 1 日施行)。

1.中外合弁企業法実施条例
2.中外合作経営企業法実施細則
3.外資独資企業法実施細則

この改正は、会社法改正に従い、外資三法(外商投資企業の基本法である「中外合弁経営企業法」「中外合作経営企業法」「外資独資企業法」)の実施条例・細則に定める外商投資企業の最低登録資本金を廃止しました 。

② 外資審査管理業務の改善に関する通知の公布  国務院の外資三法の実施条例・細則の改正を受けて、商務部は、2014 年 6 月 17 日に、「外資審査管理業務の改善に関する通知」(商資函〔2014〕314 号)を公布しています。

この通知において、商務部は、外商投資による会社の最低登録資本の制限および貨幣出資比率を廃止すると明言したが会社の登録資本および投資総額の比率は、なおも「中外合弁企業の登録資本と投資総額の比率に関する暫定規定」(工商企字〔1987〕第 38 号)およびその他の現行の有効な規定に合致しなければならない、とされました。

③ 最低登録資本金を廃止 (外商投資株式会社) また、商務部は、2015 年 10 月 28 日に、「一部規則および規範性文書の改正に関する決定」(商務部令 2015 年第 2 号)を公布し、「外商投資株式会社設立の若干問題に関する暫定規定」(外経貿部令 1995 年第 1 号)および「外国投資家が投資により投資性会社を設立・運営することに関する規定」(商務部令 2004 年第 22 号)を改正しました。

 この改正において、外商投資株式会社(3,000 万人民元)の最低登録資本金を廃止したことにより、一連の外商投資企業関連の法令の公布・改正の後、法令上、外商投資企業についても、国内資本の会社(内資企業)と同様に、原則としながらも、最低登録資本金の制限がなくなりました。  

原則としたのは注意が必要で、外商投資企業の最低登録資本金について、法令上全く制限がないとはいえないです。

少なくとも、「中外合弁企業の登録資本と投資総額の比率に関する暫定規定」第 2 条は、中外合弁企業の登録資本は、生産・経営の規模、範囲に対応したものでなければならないと規定しています。

例えば、外資系企業の一例として、テクノロジースタートアップがあげられます。彼らが製品開発やマーケティング、事業展開にかかるコストを見越したうえで、1元の登録資本金では明らかに不十分であるという現実に直面します。このような場合、中国の工商登記局から適切な登録資本金額の要請が出され、事業展開が一時的に停滞する可能性があります。

具体的な事例として、モバイルアプリの開発とマーケティングに専念する外資系スタートアップがあったとします。彼らが中国市場に参入するためには、アプリの開発やマーケティング、さらには中国内での運営コストを考慮に入れた適切な資本金が必要となるでしょう。

資本金が不足していると、事業の規模や範囲を満たすための十分な資源を確保できないだけでなく、中国の行政機関からの信用も得られない可能性があります。これは中国でのビジネス展開における大きな障害となります。

従って、中国進出を考える企業や個人は、事業計画とそれに見合った資本金をしっかりと準備することが重要となります。また、現地の法律や規制、ビジネス環境について深く理解し、事業計画を進めていくことが必要です。これにより、スムーズで着実な進出を実現できるでしょう。

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