ブルーベリーの耐凍性から考えた低温要求量と開花時期
前回は「ブルーベリーの低温要求量と収穫時期」と題して、ブルーベリーが落葉果樹であるという点から、収穫時期や低温要求量について解説させていただきながら、栽培品種の選定の重要性について共有しました。
耐凍性と低温要求量、そして開花時期は、ブルーベリー栽培において極めて重要な要素です。これらは、ブルーベリーが健康に成長し、豊富な収穫を得るために必要な条件です。以下に、これらの要素について詳しく解説していきます。
低温要求量と耐凍性
低温要求量: これはブルーベリーが休眠から覚醒し、新しい成長サイクルを開始するために必要な低温の積算量です。品種によって異なり、適切な低温要求量が満たされないと、発芽不良や花芽形成の問題が発生する可能性があります。
耐凍性: これはブルーベリーの品種が、低温や霜に耐える能力を意味します。耐凍性が高い品種は、寒冷な地域や早春に気温が低い地域でも生育が可能です。耐凍性が低い品種は、霜害を受けやすいため、これらの地域での栽培には注意が必要です。
開花時期の重要性
開花時期: ブルーベリーの開花時期は、低温要求量が満たされた後に訪れます。開花時期は品種や栽培地域の気候によって異なり、適切なタイミングでの開花が収穫量に大きく影響します。
霜害のリスク: 開花が早すぎると、春の遅霜による損害のリスクが増加します。特に低温要求量が少ない品種は、温暖な地域や温室での栽培に適しています。
ブルーベリーにおいては低温要求量の大きい品種ほど開花時期が遅い傾向があって、そのためにノーザン・ハイブッシュ・ブルーベリーは開花時期が遅く、おかげで寒冷地に栽培されていても花や幼果が凍霜害を受けることも少ないです。
例外ながら、ノーザン・ハイブッシュ・ブルーベリーでも耐寒性に優れる「パトリオット」は発芽が早く、凍霜害を受けやすいことが問題となっており、低温要求量の少ないサザン・ハイブッシュ・ブルーベリーを関東以西の温暖な地域で栽培すると、発芽と開花期が早まって寒波による凍害や霜害を受ける危険性が高まります。
ブルーベリーの低温要求量と開花時期の関係は、品種選定や栽培地選びにおいて非常に重要な要素です。低温要求量が大きい品種は一般的に開花時期が遅く、凍霜害のリスクを減らすことができますが、品種によっては例外も存在します。
ノーザン・ハイブッシュ・ブルーベリーの特徴
遅い開花時期: 低温要求量が大きいノーザン・ハイブッシュ・ブルーベリーは、遅い開花時期を持ちます。これにより、寒冷地でも花や幼果が凍霜害を受けるリスクが低くなります。
例外「パトリオット」: この品種はノーザン・ハイブッシュ・ブルーベリーの中でも耐寒性に優れている一方で、発芽が早いため凍霜害を受けやすい問題があります。このような品種は、特に注意深い管理が必要です。
サザン・ハイブッシュ・ブルーベリーのリスク
早い発芽と開花: 低温要求量が少ないサザン・ハイブッシュ・ブルーベリーは、関東以西のような温暖な地域で栽培されると、発芽と開花が早まります。これにより、寒波や春先の霜による凍害や霜害のリスクが高まることがあります。
栽培戦略の重要性
これらの情報は、ブルーベリーの栽培において、地域の気候条件と品種の特性を考慮した適切な栽培戦略を立てる上で重要です。例えば、寒冷地ではノーザン・ハイブッシュ・ブルーベリーの中でも遅い開花時期を持つ品種を選ぶこと、温暖な地域では凍霜害のリスクを考慮した品種選定と栽培管理が求められます。
ブルーベリー栽培において耐凍性は、適地選定や品種選択において重要な要素です。ブルーベリーの耐凍性を考慮することで、寒冷地域での栽培成功の可能性が高まります。以下に、耐凍性を考慮した栽培戦略のポイントをまとめます。
ブルーベリーの耐凍性と適地
ノーザン・ハイブッシュ・ブルーベリーとハーフ・ハイブッシュ: これらの野生種は、一年生枝でマイナス20~40℃、花芽でマイナス25~30℃までの寒さに耐えることができます。これにより、これらの品種は寒冷な地域での栽培に適しています。
ラビットアイ・ブルーベリー: 一年生枝がマイナス25℃、花芽がマイナス20℃で枯死するリスクがあります。この品種は、比較的温暖な地域での栽培が適しています。
休眠から覚醒する際のリスク
早春の霜害: 休眠から覚醒したブルーベリーは、マイナス5~10℃の低温に遭遇すると被害を受けやすくなります。特に、休眠打破後の耐凍性が弱まるため、早春の霜害に注意が必要です。
高標高地域での栽培
凍結乾燥害: 積雪が少なく、冬季の最低気温が頻繁にマイナス15~20℃に達する高標高地域では、特にノーザン・ハイブッシュの一部品種で凍結乾燥害が発生するリスクがあります。
耐凍性の優れる品種の選定: 北海道や長野県のような高標高地域では、「ノースランド」や「ノースブルー」などの耐凍性に優れる品種を選択することで凍害を克服できます。
ローブッシュの利点
家庭果樹としてのローブッシュ: 耐凍性が極めて優れているローブッシュは、家庭果樹として育てる際に凍害の心配がほとんどなく、寒冷地でも安心して栽培できます。
ブルーベリーの花の耐凍性も考慮する
ブルーベリーの花の耐凍性を考慮することは、栽培成功において非常に重要です。特に、発芽期から開花期にかけての耐凍性は、品種によって異なり、凍霜害のリスクを理解することが重要です。以下に、ラビットアイ・ブルーベリーとサザン・ハイブッシュ・ブルーベリーの耐凍性についてのポイントをまとめます。
ラビットアイ・ブルーベリーの耐凍性
発芽期の花芽: 発芽期のラビットアイ・ブルーベリーの花芽はマイナス6℃程度まで耐えることができます。これにより、初期の寒波に対するある程度の耐性を持っています。
花や幼果の耐凍性: しかし、開花した花や形成された幼果はマイナス2℃でも被害を受けやすく、この段階ではより注意深い管理が必要です。
サザン・ハイブッシュ・ブルーベリーの耐凍性
開花期の遅さ: サザン・ハイブッシュの多くの品種は、ラビットアイよりも開花期が遅いため、凍霜害のリスクが比較的低いです。
アメリカ南部での問題: しかし、アメリカの南部地域では、低温要求量が少ないために開花が早まり、早春の寒波による凍霜害のリスクが高まります。
日本での凍霜害のリスク
開花時期の長さ: ブルーベリーの開花時期は比較的長いため、全滅することは稀ですが、開花の早晩によっては日本でも凍霜害のリスクが生じる可能性があります。
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